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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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38 門の講習2

「では門の説明をしましょう。」


 ついに来た。聞き逃さない様に集中しよう。


「はじめにですが、何も考えず無心になれというのは、まず無理です。厳しい修行が必要となるでしょう。」


 仏教では煩悩の数が108あるという。除夜の鐘を突く回数の由来だ。そんなにあれば、そりゃ何かにとらわれてもしゃーないってもんよ。


「考えても、それを外に出さなければ良いのです。」


 そうは言ってもそれが難しい。特に無意識下、睡眠中の行動を管理せよと言われてもねえ。自己暗示でもかけろというのだろうか。


「魔法を使わないようにするには、何故使えるのかを理解しなくてはいけません。それは、先ほど言ったように意思の力です。」


「そして魔法を使おうとする時、むにゃむにゃ~、はーっ! と気合を入れるのですが、何処どこかに集中する中心点があるはずです。例えば手で印を結び、その指先であったり、道具であれば杖や棒の先端であったりします。若しくは、何もない空中の一点かもしれません。人により違いがあるでしょうが、どのような過程で意思を魔力に伝えているのかを再確認してみましょう。これが第一段階です。」


 魔法の使い方、意思を魔力へ届かせる方法は十人十色、千差万別だ。自分のやりやすい方法を編み出して使う。だが、ある程度の手引きが存在し、それを使うものもいると聞いている。例えば呪文を唱えるような流派もある。呪文を唱える理由は、声出し確認と同じ理由だ。危険物を扱う場合、注意点をしっかりと声に出して確認し、見落としを防ぐというものがある。これはとても有効な手段だ。魔法は無詠唱でも発動するが、声を出して確認したほうが威力や正確さが上がる時もある。


 実は西瓜すいかを育てている時に、僕も声を出しながらやっていた。


「もっと栄養をあげるから、ちゃんと成長するんだぞー。魔力で養分を吸い上げる力を強化してっと… おっと此処ここは養分の流れが悪い、剪定せんていしないと駄目かな。」


 独り言であり、あまり人に聞かれたくは無いが、チェックポイントを逃さないようにする為に大事な作業だ。この確認作業をカッコよくしたモノが、魔法の詠唱と呼ばれるものだ。仏教の読経も同じようなものだと、僕はそう思っている。


 お経とは教えの書かれた書物。要するに読経って、教科書を読み上げて内容確認してるようなもんだよね。違うのかな?


 さて、お経はともかく魔法の話だ。僕自身が魔法を使う方法を確認すると、先ずは頭の中で、魔力がどの様な作用を及ぼすかイメージし、その意思を強く固める。そして、その意思を開放するのだが、そのイメージは二つの種類がある。


 ひとつ、魔力を対象物全体に注ぐ場合は、意識を眉間に集中させ、そのまま魔法を発動させる方法。


 ふたつめ、より細かく作業したいと思うケースで、その場合は、指先で魔力操作するイメージで発動させる。これは指さし確認みたいなものだ。


 チェック項目を確認しながら作業する場合と、それを省いても問題ない作業との差という感覚だ。


「それが確認できたら、いよいよ次の段階に入ります。」

「魔力へ意思を発する元の場所、そこに意識の門を作り、閉じる事をします。この作業を門と呼んでおります。」


 門というのは、自分の内なる意識と外の世界の間に、意識的に境を作って閉ざす事を指す。坊さんが言うには、例として門というのを挙げているが、水流を止めるせきのようなイメージでも良いとの事で、自分に合っていれば何でも良いという。


 境を作るというのは、心を閉ざすようであまり良い印象は受けないが、そもそも誰にでも心を開けというのは暴論だ。誰にでも心をさらけ出す必要など無い。知らない人には付いていくと、危険が待っている事もある。


 意識、つまりは心の問題だという。自分なりに感じた要点をまとめれば、魔力を使う工程にチェック項目を設け、それを満たさない限りは魔力を使わないように、安全確認を強化しましょうという事だ。


 例を言えば、外出時において、財布持った、携帯もった、戸締り良ーし、と確認してから外出するのを徹底しましょうという事。根本はこれと同じだろう。


 ここらで情報をまとめてみると、


<門を修得する工程表>

1. 自分の意思を、どうやって魔力に届けているか理解する。

2. 意思が伝わる回路を、門でさえぎる。

3. 門を開く鍵となるチェック項目を設ける。

4. 項目を満たさない限り門を開かないようにする。


 境の壁を作るのが、壁では無く門というのは、自分の意思で開閉しやすくする為。

慣れてくれば、門を閉めている間に気合を高め、門を開くと同時に最大出力という使い方も出来るらしい。


 自分にとり、この工程で問題になりそうなものがあるのか、考えてみる。これまでは、どうやって魔法が使えるようになるのかを散々考えてきた。今回はその逆を行えば良いだけだ。

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