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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
二章 魔術契約
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37 門の講習1

 門の講習は平日の午後に行われる。


 昼食後に春絵さんが連れて行き、帰りは格さんが迎えに来てくれると決まった。既に一人で山に入ったりしとるのに、付添なんぞ今更いらんがなと思うが、保護者の許可が必要だからだという。


 申し訳ないがお願いするしかない。春絵さんと一緒に寺に行くと、同じ講習を受ける為だろうか、大勢の子供たちが集まっていた。


「学校授業の一環として来てる子達ね。ハルちゃんより一学年上だよ。普通は入学して初年度に受ける講習だからね。」


 なるほど。引率の先生らしき人が一人いるようだ。


「じゃあ私は仕事に戻るから、後で格さんが迎えに来るからね。頑張ってね~。」

「はーい。」


 受付を済ませた春絵さんが帰ってゆくと、他の子供達からの視線を感じる。皆、おそらく学校の先生に引率されている子達ばかりで、個人参加は僕だけのようだ。お、何か近づいてきよったぞ。


「おい、お前何組? 自分の組の講習休んだのか?」


 マウントを取りに来たのか?


「いや、未だ入学前です。」

「こいつ年下だってさ。」

「住所どのへんよ?」


 住所を知られるのは少し抵抗感がある。知ったところで何も出来ないだろうが、変にからまれたりするとやっかいだ。個人情報、プライバシーという考えが生れたのは近代になってから、第2次世界大戦前くらいからだが子供の世界には関係ない。


「お前ドコ中よ?」

「あぁ? 個人情報保護法だろうがテメェ! 損害賠償請求すんぞコノヤロウ!」


 こんな子供はいないだろう。人に情報を知られると不利益もあるが、利益を生み出す事もある。それで飯を食っているのが広告代理店だ。家は病院なので、知られる事で宣伝に繋がるかもしれん。今回は教えても良いかな。


「薬師院って病院知ってる?」

「あー! チビ先生だ!」

「何それ?」


 どうやら僕の事を知っている子がいた。声の主を見て微かな記憶を思いだした。怪我をして手当した事があったような気がする。


「病院で先生やってるんだぞ。」

「マジでか。すげえな。」


 変に威圧される事は無くなったようだ。


「こらっ よその子にからむんじゃないっ。」

「じゃあな。お前も講習がんばれよ。」


 先生から注意されると素直に戻っていった。からまれたかと思い少し緊張したが、気の良い連中だった。さて、講習に集中しよう。お坊さんが話を始めるようだ。


「えー、それでは門の講習を始めます。今日だけの練習では身に付きませんので、基礎をしっかり学び、毎日少しずつでも練習しましょう。」


 一日では無理か。しかし未だ学校が始まってないので、自由な時間が十分ある。入学までに修得したいところだ。日数はそんなに残っていない。頑張ろう。


「この世とは目に見える世界と、見えない世界が存在しています。目には見えないですが、お互いに影響を与える事が出来ます。」


 お互いに? 疑問があったので手を挙げた。質問は受けてくれるのだろうか。


「そこ、何か質問かな?」

「はい。見えない力が現実に作用する事は分かるのですが、目に見える世界から、見えない世界に影響を与える事が出来るのですか? 出来るとしてその効果は?」

「おぉ~、チビ先生は言う事が違うな~。」


 目立ちたくは無いが、められて悪い気はしませんな。ほっほっほ。


「その代表的なものが、風水と呼ばれるものです。主に都市設計に用いられ、生活環境に役立ってます。」


 前世でも風水なるものは存在していた。地形による大気や水の流れにより、治水や軍事面での実用性は在るのかもしれないと思っていたが、こちらの世界では魔力の流れが加わった学問らしい。元の世界でも、気という考えがあったかもしれないが、僕自身は、超自然的なものには懐疑的であった。


 転生前、オカルト的なものについては、話として好きではあったが否定的な立場だった、しかし一度受け入れてしまえば、新鮮さを感じて楽しめる。


 否定する考えが、魔力を理解するのを阻害していた過去があったが、仕方ない事だったと思う。まさに異世界なのだから。異世界に入っては異世界に従えだ。


「その見えない世界に存在しているものを、一般的に魔力と呼びます。神通力とか法力とも呼ばれますが、同じものを指していると考えてください。」

「火事場のクソ力は?」

「うーん、それは別物でしょうねぇ。」


 別の子が質問した。火事場のクソ力はアドレナリンとかの問題じゃないのかなと思う。危機に面した時に、新たな能力が発現した可能性も無くは無いと思うが。


「そこで問題ですが、魔法とは魔力を操作して、現実に物理現象を引き起こすものです。どうやって魔力を操作するのでしょうか?」

「むにゃむにゃ~ はーっ! ってやる。」

「ムニャムニャハーとは?」

「気合です。」

「それです。大事なのは気持ち、意思の力です。意思を魔力に伝える事により操作をするのが基礎となります。」


 ここまでは分かる。魔力を信じていなかったりすると、意思を伝える事が難しくなる。本人が信じていない事をやろうとすると気持ちが弱くなる。物理だけの問題なら、単純に作用するかどうかの問題で、人の意思によって結果が左右される事は無いが、魔力はその意思こそが重要な要素だ。


「では逆に、魔力を使いたくない場合はどうすれば良いでしょうか?」


 使おうと思わんければ良いんじゃないのか。おねしょの事が例え話として挙げられるが、放尿とは生理現象であり、我慢をする事は本人の意思やモラル、羞恥心の問題であり、「止める」事に意思が関係している。止めようと思わない限り、出てしまうものだ。


 逆に魔力については、「出す」事に意思が関わってくる。出そうと思わないと、出ないものである。魔力お漏らしの話を聞いた時は正直ビビったが、考えてみるとよっぽど大丈夫じゃないのかなと思えた。


「ほう、なかなか鋭い質問ですね。それはその通りです。特に魔力に目覚めて間もないと、しっかり意識しないと魔法が使えません。しかし、慣れてくると簡単に使えるようになります。その時こそ危険なのです。慣れたと思う時、過信が生れ危険なのです。」

「過信ですか。」

「そう、自惚うぬぼれの心こそ危険なのです。」


 自惚うぬぼれときましたか。


「それと君の理屈ですが、少し穴があります。」

「穴?」

「寝言は珍しく無いものですが、言葉は意思を伝える為に発します。出す意思とは考えられませんか? もっとも、声出し確認等の独り言というのも有り得ますが。」

「あっ!」

「言葉を出すくらい、自然に魔法が使えるようになった時、最も危険だと言えるでしょう。」


 成程なるほどね。将来の為に今のうち、って事ですか。しかすると不要な不安をあおり、講習という名の金儲けをしているのかと、一瞬でも疑って申し訳ない。素直に反省しよう。


 確かに最近自惚れていたかもしれない。自信を持つのは良い事だと思うが、謙虚さを忘れたらいかん。頑張るのも何処どこかで区切りが必要だと思うが、とりあえず、試験までは気を引き締めていこうと思う。

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