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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
一章 入学準備
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29 群れを率いる者

 リーダーとは、群れ全体を一つの生き物とみなした時、その行動を決定する頭脳の役割を受け持つ。そして体の各部分は、脳から発せられた指令を遂行する。


 頭脳は行動を決定し、それを行う為に指示を出す役割をになっている。


 これを人間の組織に当てはめてみると、リーダーたろうとする者がすべき事は、自分の意思を皆に伝える事。言い換えれば自己主張、自己アピールだ。


 例え優秀な個体であっても、他者へ影響を与えたいという意思を示さなければ、リーダーたり得ない。性格により向き不向きがあると思う。一つ例を挙げるなら、ボクシング、ヘビー級元王者マイク・タイソンだ。


 内気な少年だった彼は、いじめられていたらしい。今考えると、何ちゅう恐ろしい事をしでかしたんやとしか思えないが。


 まだ身体が成長していなくて弱かった? いじめに対抗する為にボクシングを始めて強くなったのか?


 そうではなく、マイク・タイソンはすでに強かった。いじめが許容範囲を超えた時、いじめっ子達を叩きのめしたのだ。ということは、彼は屈強な肉体を持ちながらも、それ相応の扱いを受けていなかった事になる。


 良い悪いは別として、いじめられていたマイク・タイソンに足らなかったものは、俺は強いんだぜという、自己アピールが不足していたという事だろう。加えてその喧嘩以前は、タイソン自身が己の強さを認識していなかったという理由もある。


 群れを率いる為に必要な事も、このエピソードに通ずるものがあるだろう。


 一般的に自己主張の強いもの、自分の欲をさらけ出すものは個性が強い者が多く、それ故に他人との軋轢あつれきもうまれやすい。己の意思を通すというのは他人を従わせるという事だ。組織を率いるリーダー達が周りから叩かれ易いのは、成功者への嫉妬もあるが、個性がその一因となる場合もあるかもしれない。


 群れは一つの意思によりまとまる事により、数的効果が発揮される。団結して敵を迎え撃とうとする時、内部分裂をしていては各個撃破されるだけだ。


 これを烏合の衆という。


 では、全てが画一的な組織が強いと言えるのだろうか。


 逆に、みんな違ってみんな良いという言葉がある。これも真実と思う。


 多様性というのも非常に大事だ。確かに皆が同じ顔をした金太郎飴は、大量生産向きであり効率的だ。品質管理もしやすいだろう。


 しかし、それでは活力が失われ、それ以上の発展を望むのが難しい。現状維持を望むのなら、アメーバのような単細胞生物に留まるようなものだ。雛形のコピー、テンプレートは非常に使いやすくスピーディーでもあるが、雛形以上のものを望む場合は難しい。


 画一的なものに適した場合と、多様性が必要となるもの。どちらが良いのかは、時と場合による。その集団の規模や目標によっても変わってくるだろう。


 喫緊の課題、若しくは長期的視野により、現在取るべき戦略を定める。


 これを判断して決断を下せるのが器ってヤツで、リーダーの度量が試される。


 そして、少なくとも今の自分にこの器は無い。リーダーシップを磨くには座学も役に立つかもしれないが、実際に他人と交わりながら、出来てくるものだと思う。大人達は言うに及ばず、ケン兄とハナ姉にも頭が上がらない現状、リーダーとしての器が育っているとは、とても言えない。


 人をコントロールする術なんて言うと、下心あって他人と付き合っているのかと思えてしまい、あまり気分がよろしくないが、これを言い換えて、相手に気分良くなってもらう、おもてなしの心と言えば、まだ抵抗感は少ない。


 うーん、これってゴマすりとも……、いや、言い方だけで何とでもなる。


 大事なのは心、心意気の問題だ。その言動の裏側に、どんな心があるかだけだ。他人はただ利用するのみという心を、自分の中に育てぬよう気を付けたい。


 時には駆け引きも必要になるかもしれないが、何も求めず、ただ居るだけで良いという関係の友人が出来れば、それは得難い存在である。大事にしないとあかん。


 そこまで考えた後、一つの決意を固めた。


 (よし、こうなったら全て言ってやろう。)


 学校入学を機に、前世の記憶の事を打ち明けようと心に決めた。


 大事なのは、僕に負い目など無いという状態にする事だ。出来る事はやる。これ以上は、もうどうしようもないよねと、人事を尽くして天命を待つ、という心境になる事を、その目的としたい。


 家族とはいえ、あくまで別人格、全てが完全に分かり合える事など無い。分からないが、それを踏まえた上で、相手を認めるというのが、最も深い関係ではないかと思う。


 最近は、前世の記憶があると知られても、さほど問題にならないかもしれないと思いつつある。


 なにせ魔力というファンタジーな概念がある世界で、神仏の力も確認済である。前世の記憶が、どこまで衝撃的事実となるのかが分からない。


 ただ、大事になる可能性もある事を心に留めておこう。


 突然、子供が変な事を言い出した。


「僕、異世界の記憶があるんだ。」


 通常であれば、可哀そうな子なのねと思われるか、こんな空想豊かな時代もあるよね、俺の時は戦隊ヒーローか、宇宙刑事って設定だったなあと、同情されるだけかもしれない。


 だが、この世界は不可思議なものが存在する世界だ。信じてもらえずに心配されるか、信じた上で心配されるか、それとも聞き流されるか、反応はどれだ?


 自分としては、心にある内なるものを吐き出す事が目的なので、信じてもらえずともよい。


 僕にとって、ふーんと流され、そのまま放置なのが、面倒くさく無くて一番良いと思う。どう話を切り出せばいいか、頭の中でシミュレーションしておこう。

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