表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
一章 入学準備
27/306

27 豊かな実りを得る為に

 もはや日課となった、地味な鍛錬を繰り返す日々が続いている。


 今は将来に向けて種まきをする時期だ。何が芽を出すか分からないが、出来る範囲でやっていこう。頑張りすぎて疲れてしまわないように、のんびりいこう。


 うーん、種まきねぇ。何が良いだろうかと考えていたら、桃栗三年柿八年という言葉が頭に浮かんだ。何か事を起こしても実りを迎えるまでには、それなりの期間が必要となる。


 桃を育ててみようか? 柿八年はちょっと長くて手が出しづらい。桃の三年ならやる気になれるかなと思う。栗も良いが、ここは桃を選択したい。


 前世では、桃は邪や魔をはらう力が有あるとされ、神話や昔話にもよく登場する。魔力栽培と相性が良いかもしれない。やってみよう。


 種ならある。山で腐葉土を探している時に、野生の桃の木を見つけたのだ。作業の休憩中に食べてみたが、とても美味しかった。


 気が向いた時に、何個か家へのお土産に持ち帰っていたが、残りが少なくなってきていた。まだ残っているヤツは、もっと大きくしてから収穫しようとしていた、虎の子の一品だ。動物に取られるか気が気でなかったが、運良く残っていた。


 今年最後の桃だと告げると、切り分けられた大きさをめぐって、ケン兄とハナ姉で喧嘩になりかけたが、春絵さんの仲裁で事なきを得た。食べ物の欲は恐ろしい。


 喧嘩にならないように、栽培に力を入れんといかん。


 農業で困った時には豊吉さんだ。栽培方法を教えてもらおう。家に行ったら野良仕事をしていると聞いたので、畑まで出向く事にした。


「こんちはー。」

「おお、なんじゃ?」


 豊吉さんはサツマイモの収穫作業をしていた。見事な大きさで見るからに美味しそうだ。うむ、来年の畑はこれだな。果樹の手入れ方法を教えてもらいつつ、収穫を手伝わされた。御礼としてイモをもらったが、心を読まれていたかもしれない。手伝いをさせられたのは、イモをくれる方便のように感じた。芋ほりなんて、ほぼ終わっていて、手伝いなど、殆ど残っていなかったのだから。非常に有難い。


 肝心かんじんの桃については、助言をもらった後で地植えをした。発芽には時間がかかるが、植えた場所に杭を立て目印として、種の段階から魔力を注ぐ事にした。


 魔力の効果がどのように発現するかを、こちらの意思で指定できるかを実験してみるつもりだ。もし成功したら仙桃とでも呼んでみようか。


 ところで桃の発芽には、ある程度の寒さが必要で、冬を越して休眠打破した種が芽吹くという。寒さを経験しないと、芽を出しても大丈夫な春が来たと、判断できないのだろう。


 僕も春に向けて力を蓄える時だ。頑張っていこう。


 と、優等生的な意見を言ってみたが、真面目ばかりでは精神がり減る。課題、やらねばならんと思うとやる気が失せる。自分が楽しみながらというのが理想だ。


 そんな訳でイモを食うのだ。うーん、なんだか言い訳がましいのが最近多いな。疲れてきてるのかもしれん。が、今は取り敢えずイモだ。焼き芋にしてホクホクを食べたい気分である。家に帰ると、学校を終えた二人が先に帰っていた。


「イモもらってきたよ。」

「でかしたっ!」


 そして焼き芋にする為に、落ち葉や木切れを手分けして集めたが、火種を忘れていた。芋に浮かれ、先の事を考えていなかった。


 似たような話だが、海外留学中で日本食に飢えていたころ、貴重なインスタントヤキソバを手に入れた。友人と二人で舞い上がり、お湯を注いだ迄は良かったが、箸が無い。そのうえ、フォークやスプーンといった代替品も無し。困った挙句に、ボールペンを箸に見立ててむさぼりり食った覚えがある。無機質なプラスチックの舌触りに、我が身の愚かさが感じられた。いや、何というか、友人と二人だったのが、相乗効果で暴走してしまった感があった。言い訳にもならんが……。


 生まれ変わっても同じような事をしでかすとは…。なんとかは死んでも治らないという言葉があったが、本当にそうならどうすりゃ良いのだろうか。


「火種… どうしよう。」

「俺が付ける。ハナは風魔法で空気を送ってくれ。」

「わかった~。」


 ケン兄が火を付けると、ハナ姉が酸素を送りこみ、火を大きく燃え上がらせる。魔法とは便利なものだと思ったが、こんな手軽だったら、放火魔の取締りとかどうするのかと思ってしまうが、そういえば現代日本でも、ライターが安価で入手できたなと考え直した。どんな便利な道具でも、問題は誰がどう使うかだ。魔法も道具のひとつだと考えれば、そこまで心配する必要が無いのかもしれない。


 そんな事を考えているうちに、芋が焼きあがった。うん、美味い。


「魔法って便利だねえ。」

「それなりに疲れるけどね。」


 魔力を扱う時は、その量に比例して疲労がある。筋トレと同じように、少量から始まり、慣れてゆくにしたがい、段々と取り扱える量が増えてくる。また、一度に扱う量が増えるのか、長時間扱う事が出来るのかについても個人差がある。例えるなら、瞬発力と持久力みたいなものである。


 この世界の、一般的な魔力習得状況については、学校卒業時点で、四大元素習得は必須科目らしい。そのうえで、木属性などの組み合わせにより発生するものが、一つか二つというのが標準だ。


 その基準で判断すると、今の僕はかなり早熟な部類に入る。ひとまず喜んで良いだろうが、気を引き締めていこう。恐らく今の状態は、前世の知識によるブーストがかかっているだけだ。「十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人」という言葉があるように、ただ単に成長のピークが速いだけで、最終到達点は平凡な位置に落ち着くケースもある。


 平凡で何が悪いのかという、哲学的な疑問もあるが、今はその問いを考えている時ではない。考えるのはやるだけやってからだ。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ