24 成功報酬と新たな甘味
西瓜の出来栄えは、改善点はあるがそれなりに上手くいったと思う。魔法栽培物の二品についての印象だが、細胞分裂品は品質が魔力により上乗せされた印象だ。細胞活性化品については、食感がマンゴーに似た感じなので、ドライフルーツにしても良いかなと思う。楽しみが増えた。成功と言って良いだろう。
そう思っていたら、何やら春絵さんの様子がおかしい。
「あらら? ほうほう…… ふんふん。なるほど~。」
西瓜を見比べていたと思うと、ちょっとゴメンね~と、僕の腕をとって脈を計るような動作をした後、なにやら納得しているご様子。いったい何が起こったんだ。
次にケン兄とハナ姉にも同じように脈をとる。さらに次々と脈を計ってゆく。
「おいおい、何事や?」
「何かあったのか?」
格さんと佐助さんが問い質す。
「いや、これ凄いよ。人や物の栄養状態が分かるようになったの。」
「なんやて?」
どういう事だ?
「これまではさ~、人の栄養状態を判断するのに、問診や診察した範囲しか分からなかったんだけど……。」
「ふむ。」
「なんでか、手で触ると頭に入ってくるのよね~。」
「あ、佐助さんはちょっと脂身が多いわね。医者の不摂生は、患者さんへの説得力が無くなるよ。ケンちゃんとハルちゃんを見習いなさい。暫く食事控えめね。」
「あ… 脂身って…… キツイ言い方するなぁ。普通に傷つくよ。」
「俺は?」
「運動してるせいか問題なし。タロウもね。」
新たな力に目覚めたのか? 西瓜と関係があるのだろうか。
「西瓜を食べてたら、何となく頭に情報が入ってきて、もしかしてと思って試してみたら、できちゃったのよね。」
「なんだそりゃ。すげえな。」
「もしかして、あれじゃないかな? ほれ、あれ。」
「なに? アレじゃわからないけど。」
「ほら、魔術契約の成功報酬ってヤツだよ。」
詳しい話によると、魔術契約の内容によるが、一定以上の成果を上げた場合に、成功報酬として更なる能力を得る事があるらしい。魔力栽培の西瓜が、その切っ掛けとなった可能性があるとの話だった。
皆に感謝はしているつもりだが、魔力開眼に直接関係する春絵さんに、特別感謝している気持ちがあり、そんなところに、春絵さんだけが新たな力を授かった理由があるのかもしれない。
しかし契約魔法というものは、凄いもんだなあと感じた。もとの能力も凄いが、こんなアフターサービスみたいなもんもあるとは。成功報酬の契約が可能ならば、僕が思っていたより気軽に出来るかもしれない。
成果があればその報酬が得られ、駄目ならそれまでの事だ。駄目であった場合のペナルティーが無ければメリットしか無い。こんな方法があったのかと驚いた。
ちなみに、成功報酬はこれまでにもあったとの事だ。始めはケン兄が火属性魔法に目覚めた時。佐助さんの気功法で、新陳代謝を促進・強化する技術が向上した。次に、ハナ姉が風属性を習得した際、格さんの気配察知能力が強化されたらしい。それぞれが習得の為の手助けをしたとの事だ。
とても融通が利いた話だ。契約魔法の存在を知った時にも思ったが、この世界の神様は、かなり太っ腹に思える。そんなにホイホイと力を与えて良いのかねえ。
さて、西瓜を評価してもらった結果というと、年齢により評価が分かれた。僕を含む子供に人気だったのは、あっさりした甘さの細胞分裂品、大人達は濃い甘さの細胞活性化品が口に合ったようだ。犬のタロウは良く分からん。どちらでも構わんよ、とでも言いたげに尻尾を振っている。
細胞活性化品を除き、好きなだけお土産として持って帰ってもらった。活性化品はドライフルーツに挑戦するの予定なので、今回は遠慮してもらった。今の生活で甘味は貴重品だ。失敗しないように、気を引き締めて作ろう。
天気の良い日を見計らい、包丁で手頃な大きさに切ったものを天日干しにする。網、網は何処だ? 網を被せて鳥獣被害を防ぐのだ。
見当たらなかったので、タロウと交代で見張りをする事にした。西瓜を収穫後の畑を掘り起こしながら目を光らせる。次は何を作ろうか。同じ作物を、同じ場所で育てることを連作といい、生育不良となる障害が起こる可能性がある。来年も作りたいのなら別の作物を間に入れるか、新たに開墾した場所を確保したほうが良いだろう。
考え事をしながら畑仕事をしていたら、鳥が西瓜を何個か持ち逃げしくさった。許せん。焼き鳥にして食ってやろうか。
食欲は欲求の中でも上位に入ると言われる。人間の三大欲求は食欲、睡眠欲と、最後に性欲とされるが、個人的見解では食欲が最も強いのではないかと思う。
美食は要らないが美女を求めるといった、質の話になると結果が変わってくると思われるが、そこまで条件を限定すると、どの様な結果にも、意図的に変えられるので、あくまでも基本的な話というのが前提となる。
この三つが究極に飢えていた場合、まず食べる。そして寝て、最後に女だろう。食と睡眠は生命維持に不可欠である。そして性欲が無ければ、種として途絶えてしまう。性欲だけが、求めた結果に得られる物のステージが違う。どれも大切な事だとは思いますがね。
子供だからだろうか、今は未だ、性欲を感じる事は無いように思う。春絵さんやハナ姉の事は好きだが、それは家族としての好きであり、良く分からない。
小難しいのは兎も角、やはり今は食欲が第一だという事で、欲に突き動かされ、ドライフルーツ作成作業に戻る。
畑起こしをしながらの、ながら作業ではなく、ドライフルーツ作成に専念する。そして、魔力で熟成を促進できるんじゃないかと思い、実行に移してみた。
ドライフルーツというのは、水分を飛ばせば完成だろう。水分を蒸発させ空中に放出する。水属性魔法で出来るだろうか。いや、液体が気化するには熱だ。ここは熱振動ではないだろうか。分子運動を加速させて分子の結合を弱める。若しかすると、これが火属性魔法の基礎なのかもしれない。火というか、熱エネルギーと表現したほうが正確な気がする。
よし、やったるか。新たな気付きと食欲を糧に、ドライフルーツに魔力を注ぎ、その結果、待ち望んだ甘味が出来上がった。
食べてみたら、凝縮された甘みがとても美味しい。それと、もともと魔力栽培物なのに加えて、更に魔力が注がれたせいなのか、食べると力が漲ってくる。
あ、これは栄養剤というか、ドーピング剤だ。




