表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
一章 入学準備
23/306

23 西瓜の品評会

 2本目は順調に成長しているようだ。つるが伸びてきたので、果実の数を調節する為に整枝をする。果実が多いと栄養が分散してしまい、小さくなったり、甘みが足りなくなるのを防ぐ為だ。受粉は上手くいったようで、果実の小さい玉が出来てきた。鳥獣被害が心配になってきたので、苗を分けてもらった農家さんに、対策を教えてもらおう。


「こんにちは~。」

「おぉ、佐助先生んトコの坊主か。苗の調子はどうなっとる?」

「一本は枯らしちゃったけど、他は順調に育ってます~。」

「ほぅか。先生達に美味しいもん食べさせたってな。」


 この人は近所の農家さんで、以前、蜂に刺されて大騒ぎをし、佐助さんの治療を受けた事があるのを覚えている。それ以来、ときどき野菜の差し入れをしてくれている。


豊吉とよきちさん、動物とか西瓜スイカを食べにきたりします?」

「ようけくるぞ~。網を被せるとかしたほうがええな。ちょっとまっとれよ。」


 そう言うと、小屋から何やら手に取り戻ってきた。


「これはテグスやが、カラス程度やと、これ張っとけば十分や。これ使い。」

「ありがとーございます。」


 木の枝を畑の周りに立て、テグスで囲んだ。鳥はこれでよしと。獣は犬のタロウに任せよう。普段のタロウは人懐っこく、知らない人が来ても吠えないので、番犬としては全く不適合な存在だが、これでも猟犬なので、獣が来たら追い払ってくれるだろう。頼んますよと言うと、尻尾を振りながらペロペロとなめてくる。


 分かってるのかな? まあ良いや。西瓜スイカが出来たら食わしてやろうと思うが、犬は西瓜すいかを食べるんだろうか。


 後は草取り、水やりなどをしながら、魔力を与えつつ様子見だ。魔力の使い方はだんだん慣れてきている感覚がある。ひたすら反復作業を繰り返し、その扱い方を体に叩きこませる。


 そしてこの頃から、与える魔力が与える効果を、自分の意思で操作が出来るか、試す実験に取り掛かる。


 実験の内容は魔力により細胞分裂をうながす事と、分裂は自然のまま、細胞が活性化するようにコントロールできるかだ。


 植物栽培の次の段階として、人体に応用しようと思っているが、細胞は分裂できる回数が無限ではないと聞いたことがある。これをヘイフリック限界という。分裂回数に限界が訪れ細胞が死滅してゆく為、生命あるものは、死す定めから逃れる事ができない。


 一般的な運動、筋トレをしても細胞分裂だろうが、その程度だったら問題ない。逆に運動をしない事による体力低下、不健康な生活のほうが悪影響だ。


 しかし、魔力が関わってくる場合は全くの未知だ。魔力で肉体改造を行ったら、老けるスピードが速くなる、つまり老衰が速まったりするのだろうか。


 太く短く生きてみるか? いや、希望は太く長くでしょ。ある程度の実験をしないと、人体に応用するには怖すぎる。植物細胞にヘイフリック限界は無いと言われているが、魔力がどのような変化を与えるのか、参考になるだろう。


 ある程度の日数が経過し、生育状況に差が生じ始めた。成長が良いものはすでに食べても良い程だが、結果を比較する為に、通常栽培物の成長を待ったうえで収穫した。


 さあ、西瓜スイカパーティーだ。


 会場にお越しの皆さんは、佐助さん、格兵衛さんに春絵さん、苗を分けてくれた豊吉さんの4人の大人と、子供は孤児院3人に加え、おままごと仲間である近所のおタマちゃんの4人で、総勢8人だ。


 会場と言ってもただの庭先で、春絵さんが包丁で切り分けてくれた西瓜スイカが縁側に並べてある。


「えー、今日はお集りありがとーございます。遠慮なく食べて感想をください。」

「食べ過ぎて、お腹を壊さないようにね~。」

「始めは魔力栽培じゃない、普通の西瓜スイカですー。」


 いきなり満腹になっても困るので、少なめに切り皿に盛る。


「ふん、こんなもんやろな。悪くない。」

「今年最後の西瓜スイカになるのかもしれんな。甘さも十分や。」


 豊吉さんが悪くないと言うのなら、それなりの出来栄えだろうか。格さんも満足そうにかぶりつく。


「えー、次は魔力栽培物、その壱でーす。」


 ここからが本命だ。魔力栽培物のひとつで、細胞分裂を意識したものを始めに出す事にした。3種類のなかで一番大きく育っている。大きく育ちすぎると味がいまいちという印象があるが、はたしてこれはどうだろう。


「さっぱりした甘さで美味しーいっ! これ好きかもー。」

「そりゃ良かった。」

「魔力栽培ってすごいねー。いつの間にか追い越されちゃったかな。」


 そう言うのはタマ姉ちゃんだ。汚名返上という感じで気分が良い。やったぜ。


「水気が多い。甘さが控えめなとこがあるが、魔力おかげか懐が深いな。ひと仕事後の水分補給にちょうどええ感じやのう。」


 ふーむ。成長するのに栄養が使われたって事なのかなと思った。豊吉さんが水分補給に良いと評したように、甘さ控えめで水気が多い為に、がつがつ食べやすい。犬のタロウが、もっと欲しそうな顔をしてこちらを見てくるが、さっきと同じような反応なので、どっちが良かったのか分からん。気に入ったのは確かなようだ。


「最後にー、魔力栽培その弐でーす。」


 質を重視した魔力栽培物だ。細胞分裂重視に比べ大きさは負けるが、標準並みの大きさはある。果実の色は濃い赤で、いかにも熟して糖度が高そうだ。


「ううむ、濃厚な味だな。これは美味い。」


 佐助さんがうなる。おそらく出した順番も良かったと思う。薄味から始まり段々と甘みが強くなる。これが逆だったら物足りなく感じたかもしれない。確か石田三成の逸話で似たような話があったな。あれはお茶の出し方だったか。


 僕も口にしてみたが、これは僕の知っている西瓜スイカではなかった。味は西瓜スイカ以外の何物でもないが、同じウリ科の南瓜カボチャのような濃厚さだ。先ほどのアッサリしたものとコレとでは、どちらが良いかは好き嫌いの分かれるところだろう。


 うん? 何やら春絵さんの挙動がおかしい。どうしたのかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ