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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
五章 北関市総合大会
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197 皇位継承問題6

3. 長子優先派


 家督相続を性別で差別するのはもう古い。現代の価値観に照らし合わせるなら、男女を問わず直系の第一子が皇位を継承すべきなのだ。


 欧州の王室を見よ。長子継承が認められているではないか。


 皇室も国際基準にアップデートし、共通の価値観を有している事を示すのだ。


 こんな感じの主張をしとるらしい。




 さて、これで三つの主張が出揃った訳やな。


1. 男系維持派:これまでのルールを変更しない。

2. 女系容認派:現実的に考えるなら、女系を認めざるを得ない。

3. 長子優先派:男女の区別なく、直系の長子を優先する。


 女系を認めるか認めへんのか。また認めるにせよ、仕方なしに認めるんか、それとも一気に改革を進めるつもりなのかという事か。2と3の結果は似るが、発想は異なる。






 ここから先は僕の個人的意見を述べさせてもらう。


 僕自身は皇室の専門家では無いし、重大な何かを見落としているかもしれない。素人の言葉を受け入れられなくて当然だろうとも思う。


 客観的にものを言う努力はするが、何処までそれが出来るかは疑わしい。


 今更言うまでもないが、これから述べるのは、不十分な情報を、僕という未熟なフィルターを通して出す答えだ。




「なんかさ、むちゃくちゃ保険かけとらへん?」




 そりゃそうやろ。


 政治問題なんて、ただでさえ気を遣うんや。ましてや天皇制に関する事なんて、何が地雷になるか分からへん。


 天皇制という言葉自体が不敬とする考えもあるくらいやからな。


 天皇を否定する人らが良く使う言葉なので、望ましいものではないんだとよ。


 ふーん。




 さて、冷静に頭を整理していくか。


 上の選択肢を一つに絞れと言われれば、僕の中では長子優先が真っ先に消える。何故なら、変更内容が余りにデカすぎるからだ。


 内容を掘り下げて見てみよう。


 女系容認派の変更点は、女系の継承を認めるという一点に尽きるが、長子優先派の変更は次の二点となる。



1. 第一子が継承する。

2. 女系の継承を認める。


 何方もこれ迄に無かった規定である。




 二つってのは、ちょっとやり過ぎちゃいますかね。


「兄よりすぐれた弟なぞ存在しねぇ!」

「長男だから我慢できたけど、次男だったら我慢できなかった。」


 後者の発言からは、オトコのやせ我慢的な心意気を感じるが、前者に至っては、弁解の余地など微塵もねえわ。




 1日でも先に生まれたほうがエライのだ!




 実力の無い人ほど理不尽な先輩風を吹かす印象がある。それ以外に威張れるもん

が無いかもしれんな。悲しいねえ。


 年長者への礼儀は大事だと思うが、必要以上に求めると、人間の器が知れるぜ。


 そしてルールの大幅変更に伴い、以下の問題が発生する。






① これまで天皇たる資格を持たなかった人物が、天皇になれてしまう事。


 女系容認派にも言える事だが、これで問題が起きないと考えるのは、何も考えとらん証拠やぞ。学校の入学試験を例にしてみよう。




「理事長! 我が校の入学試験ですが、受験生の成績に著しい低下が見られます。例年通りの基準で判断しますと、新入生が大幅に減ってしまい、赤字を免れる事が出来ません。このままでは運営に支障をきたします。」


「致し方ない。基準を見直す事にしよう。」




 彼らが入学できたのは、点数に下駄をはかせてもらったおかげ。本来の実力では無いのである。


 周りから色眼鏡で見られるのは避けられない。


「かつての名門校が落ちたもんや。」

「あの年代とは一緒にしてもらいたくないなあ。」






② 天皇の正統性が疑われかねない。


「皇位の長子継承が問題やって? 愛子内親王殿下じゃあかんの?」


 愛子様は男系の皇族である為、女性天皇となられても良いとは思う。問題となるのは愛子様ご自身じゃあない。


 長子が優先的に継承権を持つとルール変更した場合、愛子様が天皇に即位される事になる。ここまでは良いのよ。


 過去には女性天皇が存在した前例があり、愛子様が天皇になられる事は、古より続く皇室のルールを逸脱したものでは無いんや。


 しかし、長子が皇位継承すると定めるのなら、愛子陛下の次は、愛子様のお子が天皇になると言う事。


 愛子様のお子は女系皇族となる為、史上初の女系天皇が生まれる事を意味する。



 問題はここだ。



 皇位継承ルールを変更したのは、皇室の血が途絶えるのを防ぐ為。だからこそ、本来は天皇の資格が無い愛子様のお子が天皇になれるのだ。


 だが、女系天皇が生まれた時、他に正統な天皇たる資格を有すものがいたらどうなる?


 それは悠仁親王殿下の存在、さらに彼のお子が男性であった場合だ。これで問題が起きないと考えるのは浅慮に過ぎる。


「そんなん言うけど、しゃーないやん。これも時代の流れやで。」






 じゃあ、こちらも言わせてもらおうか。


 そもそもの話、天皇制は身分制度の名残で、出自による差別問題を孕んでいると最初に述べた。


 この問題がありつつ天皇制を是とするのは、日本を形作った先人と、その歴史を重んずるからだ。


 しかし、新たな基準で生まれた新天皇は、旧天皇の劣化版だ。見た目は同じでも中身は別物な劣化版天皇が、出自差別なる強敵に打ち勝つことが出来るのか。


 ちょっとキビシイんじゃないですかね。


 新たな基準を設ける事は過去との決別を意味する。新天皇が新基準により即位する日を境に明確な断絶が発生する。


 前期天皇制、後期天皇制とでも呼ぶべきか。


 皇位継承の基準緩和を落ちた名門校に例えたが、学校で一番大事なのは教育だ。いくら制服や校舎の見かけが立派でも、中身が伴わなければ意味が無い。


 そう思わへん?

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