193 皇位継承問題2
「過去に女系天皇が許されなかったとしても、時代は変わっとるんや。何事も時代に合わせて変化せんと、老害呼ばわりされるだけやぞ。」
皇位継承を男系に限る理由に、何らかの根拠があるんか?
女系継承を認めず男系を維持すべしとする人達のなかには、父から受け継がれるY染色体こそ天皇たる資質だと主張する者がいる。
Y染色体は正常な男性に存在する性染色体であり、父親から伝わる染色体の有無で判断すべしと主張しているらしい。
ふーん。
でもさ、それは男系の定義であって、皇位が男系に限られる理由にはならんぞ。
僕が思う一番の理由は、国民の意思だと思うのだ
天皇が日本で尊ばれ、その血統を維持できた最大の理由は、日本国民が支持したからやろ。
個人的な考えに過ぎないが、現代に至っても男系で皇位が継承されているのは、過去の歴史へ敬意を持っているから。それ以外の理由は要らんと思うのよ。
「しかし、理由を問わんのやったら宗教と同じやぞ。」
「宗教やったらあかんの?」
天皇の権威が特別なのは、本を正せば日本神話の天孫降臨である。
アマテラスの孫(天孫)であるニニギが地上に降り立ち皇室の祖となる神話だ。天皇が地上を治める根拠は、その背後に神の存在があるからだ。
日本に名家は数あれど、神話に端を発する皇室の格は次元が違う。
エジプトのファラオなど、国王の権威を不動のものとする為に、宗教の力を使うのは珍しくない。いわゆる神権政治だ。
日本の皇室ってのはさ、古代から継承されてきた歴史ある家柄なんよ。それこそ神話になるくらい由緒ある家系や。故に神道が存在する限り、皇室と宗教を完全に切り離して考える事は出来ない。
男系に固執する輩に対して、その思想が宗教じみているとの声があるようだが、そりゃそうやろ。だって宗教そのものやもん。
神道って宗教のひとつでしょ。違う?
宗教なればこそ、簡単にルールを変える事が出来んのよ。
「これまでの教えは間違っていました。これからは新たな教えに従い、教団を盛り立てていきましょう!」
こんなん大炎上や。
宗教を宗教と認めず、染色体がどーたらこーたら言い出して、後付けの屁理屈をこねるからややこしくなるんやぞ。
僕は自分の思想が無宗教に近いと思ってはいるが、宗教への敬意は持っている。そんな僕が天皇制を支持する理由は、日本の文化と伝統を尊重するからだ。
皇位継承は相続問題だけでなく、宗教問題でもあるって認識が薄いから、議論をしても、互いの意見が噛み合わんのちゃう?
「ですが、それを宗教と認めれば、政教分離の原則に反してしまいます。」
ひとまず男系女系の是非は脇に置いておくが、なぜ宗教は、政治に関わるべきではないのだろう。
政教分離の本質というのは、国家が特定の宗教や宗派に肩入れし、信仰の自由が無くなるのを防ぐ事が目的だ。
それはまた、巨大宗教が国家を動かし、少数派宗教を迫害する事への法的防止策でもある。
分かり易く言えば、いろんな意見はあって良いが、考え方が違うからといって、仲間外れや迫害なんぞしちゃあかんって事やろ。
神道を体現する天皇は象徴的な行為を除き、政治に影響を与えないよう法で定められている。現状に限っては、政教分離の本質は守られとるんじゃないのかな。
宗教色があるものは、全て排除せにゃならんのか?
そこまでやると、弊害のほうがデカい気がするんやけどな。例えばカレンダーが使えんようになってまうで。
一週間を7日とする暦はキリスト教の影響や。政教分離に反しとらんのか?※
それに海外においては、特定の宗教を国教と定めている国もある。その国と国交を結ぶのは、特定の宗教に肩入れする事にならへんの?
日常生活のレベルで宗教の影響ってもんはあるんや。現実に即した政治をしようと思えば、宗教色を完全に取り除くなど不可能だ。
取り除けないなら、適切に管理しようって話やな。
日本はその面において、よーやっとると思うよ。完璧とは言わんがね。
ただ、どうしても宗教的な一面がある以上、天皇制に拒否感を持つ人達もいる。信仰の自由は憲法で保障されており、他人の信仰を否定しない限り、どの様な意見を持とうが問題ないとは思う。
これまでは、国民の大多数が天皇を必要な存在と考えてきた結果、古代より存在し続けてこれたんやな。そうでなければ、とっくの昔に途絶えとると思うわ。
「個人主義が強い現代で、精神的支柱なんて必要か?」
「俺は俺、私は私。滅私奉公なんて流行らんぞ。いつの時代やっちゅうねん。」
封建制の時代と現代とでは、考え方が違うのは当然だ。
日本のみならず、世界には王様や貴族が未だ存在している。人は生まれながらに平等だとの価値観がある現代において、彼らは国事に関わるべきなのだろうか。
※1週間が7日の暦をキリスト教オリジナルと言えるのかは、疑問の余地がある。