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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
一章 入学準備
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18 筋トレと食事 弱者は女々しく鍛える

 さて、体力鍛錬で残るは筋力だ。


 体に負荷をかけてやる必要があるが、正直、あまり好きでは無い。効果があるのは分かっているし、体力テストに不可欠だとも思うが苦手意識がある。


 何故かと言うと終わりが見えないからだ。力が付いて負荷を軽く感じられると、さらに付加を上げての鍛錬となる。軽く感じられるよう、楽になるよう鍛えているのに、実際に軽く感じられるようになると、重いのに交換させられるとは何事だ。苦しさを味わうのが目的なのか? マゾなのか?


 筋トレをするのは良い事だと分かっているが、気持ちが乗ってこない。人間以外に筋トレをする動物なんて聞いたことが無い。自然に反する行為ではなかろうか。それに魔法ってものがあるなら、それで何とかしてほしい。


 …分かっている。これは愚痴に過ぎないという事を。基礎訓練というものは大事だが、退屈で苦しい事が多い。それに効果が出るまでにある程度の時間が掛かる。この愚痴はそれを分かったうえ、訓練する心構えが出来ているのか、自分の覚悟を確認しているのだ。大変だがお前はそれでもやるのかと。それに魔法は使えない。


 もう、面倒くさい。ごちゃごちゃ考えるのは止めよう。


 とりあえずやってみる。考えるのはそれからだ。事前に準備するのは大事だが、考え過ぎると何も行動出来ない。身長の伸びと筋肉の関係について、自分の中では決着済みなので、この事で悩む必要が無いのも大きい。案ずるより産むがやすしとの言葉もある。


 さあ、筋トレ開始だ! 残念ながら強者として生まれなかった者は、女々しく体を鍛えるのだ。


 やるからには効率よくいこう。どうせ苦しい思いをするなら、少しでも無駄にしたくない。春絵さんに協力を頼もう。


「春絵さーん、お願いがあるんですが。」 

「なあに~?」

「来年の学校に向けて、体を鍛えたいと思ってるんです。」

「最近、頑張ってるもんね~。」

「そんで筋トレで、畑を作ろうかと思ってるんだけど、ここに作っても良い?」


 庭先の一角を指さし許可を願う。筋トレを利用して庭を開拓しよう。筋トレの効果は目に見えず、実際に感じられるまでに時間が掛かるが、これだったら作業工程が一目瞭然だ。やる気が出るだろう。


「大丈夫だけど、何を作るの?」

「決めてない。筋トレが目的だから、未だ何も決めてないの。」

「夏に間に合えば、西瓜スイカが良いな~。」

「たぶん…、いや、絶対に間に合わんから、来年かな?」

「期待しちゃうよ。」

「う……、出来るだけ頑張ります。」


 期待すると言われるとプレッシャーを感じてしまう。


「あとねー、畑起こしは三日ごとにやろうと思うんだけど、その日を肉の日とか、

筋肉が付きやすい食事にして欲しいんです。」

「へ~、良く知ってるんだね~。」

「前に春絵さんが、患者さんに話してたのを覚えてて。」

「しっかりさんだね~。ちょうど今日の夕飯をお肉にしようとしてたから、今日から三日ごとにしとくよ。」

「ありがとー。」


 専属栄養士とでも言える春絵さんの存在は大きい。タンパク質が筋トレに良い事は知っていたが、その他の詳しい事は分からないので、春絵さんに丸投げする。


 ここで、毎日の日課を見直してみようと思う。


起床 →朝食→ジョギング・投石練習(ケン兄)→洗濯→

   昼食→お昼寝→洗濯取込→勉強(ハナ姉)→夕食→ 就寝


 筋トレを入れるなら夕食の前だ。トレーニング後すぐに栄養を摂取できる。ハナ姉の勉強時間に畑起こしを割り込ませる(3日に1日)。


 とりあえず、これで知力と体力鍛錬のスケジュールが完成した。時の運に繋がる人の和までは手が回っていないが、そのうちに何か考えよう。


 そして日課をこなしつつ、修正する所があるか確認していく。計画が全て上手くいく事など珍しい。試行錯誤の繰り返しだ。


 30日程過ぎたところで問題点があるか見直してみた。まず、文字の学習については順調だ。この世界で筆記用具は、紙と墨、そして筆が使われているが、今の僕は粘土板で練習している。粘土板に木の枝で書き込み、消す時は水をかけて平らにならす。記録を残す必要が無く、ただの練習なので、これで十分だ。


 次に体力だが、こちらも徐々に向上してると思う。前よりはケン兄に離されずに付いていけるようになったし、投石の飛距離も伸びてきている。しかし、同年代と比べた事がないので、実際の実力をはかる事が出来ない。その為に少々の不安があるが、それをモチベーションのかてにして頑張ろう。


 最後に魔力感知だ。


 経験した事が無いものなので、これに一番てこずっている。運動後に早くなった血液の流れを感じ、自分の心臓の鼓動を確かめ、魔力の流れを感じようとするが、どこまでが血流で、どこからが魔力なのかが分からない。そもそも感じ取れているのかすら不明だ。


 根気よくやるしかないだろう。勉強でもスポーツでも、長く下積みを続けていると、どこかの時点で、これまで出来なかった事が出来るようになる時がある。一度でも突破すると、その後、何故これまで出来なかったのか、疑問に思えるほど簡単にこなせるようになったりする。


 特に魔力は、これまでに経験した事が無い未知の領域だ。時間はかかるものだと覚悟しておこう。訓練内容については、とりあえず現状維持。余裕が出てきたら、何か追加しても良いかもしれない。


 始めに飛ばし過ぎても長続きはしない。無理なく続けられる範囲で頑張ろう。

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