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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
四章 モラトリアム ― 実験開始前 ―
163/305

163 時間操作

 未来の便利アイテムで欲しい?


 この質問は異世界に召喚された際、どんなスキル、能力を貰いたいかとの質問に似ている。


 仕事関係に限定させてもらったのは、何でもありだと幅が広すぎるからである。だが、一口に仕事と言っても、その内容により欲しい能力は当然に違ってくる。


 ここで述べるのは、あくまで僕個人の意見に過ぎないと思っていただきたい。


 では、僕が本当に欲しい未来のチートアイテム、若しくは、チート能力を探していこうと思う。



候補① 【時間操作系】


道具:タイムマシンやタイムふろしき等。

効果:過去に遡って失敗を帳消し。または未来の情報を入手して投資に活用。


 効果は絶大、まさにチート。


 だが、僕はタイムマシンを欲しいと思わない。


 何故かって?


 金儲けに限らず、絶滅した恐竜や、歴史が動いた瞬間を目撃したり、未来の科学を体験してみたいとは思う。


 しかし、タイムトラベルによって引き起こされる現象を、僕の頭では理解する事が出来ないからだ。時間を遡るってなんやねん。真面目に考えると、とんでもなく恐ろしい所業だと気付くはずだ。


 未来へ渡る事については理解できる。


 タイムマシンでなくとも冷凍睡眠コールドスリープが出来るようになれば、タイムマシンと同じ結果を得られるだろう。これなら疑似的なタイムトラベルが可能だ。


 時間停止についても、その状態に近づく事は出来る。


 文字通りの意味で、時間を止める事など出来はしないが、体感時間を長くする事は出来るかもしれない。


 例えば、スポーツでいうところのゾーン。


 極限まで集中力を高め、脳の処理能力を向上させれば、あたかも時間が停止したと思えるような体験をするという。


 脳機能を高める事により、限られた時間を有効に使える。真の意味で時間が停止する訳ではないが、それに近い体感をするのは可能だ。


 僕の考えたニューロン増加計画は、その延長線上にあると言える。


 話を纏めると、未来へのタイムトラベルと時間停止については、タイムマシンを使わずとも、別の方法で、それに似た効果を得る事が出来る。


 だが、過去へ戻るという行為だけは、これに代わる手段が無い。


 本音を言えば、僕自身が過去へのタイムトラベルは不可能と思っているのだが、それでは話が終わってしまうので、過去へ戻る事が出来ると仮定してみよう。


 問題は過去へ戻った結果、何が起きるのかだ。例を挙げながら検証していく。




【何らかの失敗をしでかす】


 ある日、車を運転していた貴方はハンドル操作を誤り、貴重な歴史的建造物へとダイブしてしまった。


 貴方は九死に一生を得たが、大破した車から出火して建造物は全焼。その一報は全国のお茶の間へ流れ、ネットはアナタを非難する言葉で埋め尽くされている。


 そんな貴方にタイムマシーン。


 さあ、時を越え、自分自身を救いに旅立つのだ!




【過去へ戻り、失敗を事前に食い止める】


 タイヤをパンクさせる等の手段を用い、何とか事故を未然に防げた。




 これでハッピーエンド?


 とんでもない。


 ここからが地獄の始まりだぜ。


 タイムマシンで過去を改竄した結果、未来から来た自分はどうなると思う?




◇◇◇ 過去が変われば未来も変わるよ説 ◇◇◇


 未来から来た自分は、事故を起こした事実の先にある存在だ。事故が防がれたと言う事は、事故を起こした自分の存在が否定される事に等しい。


 これは事故の可能性がゼロとなった時点で、事故を起こした先にある未来の消滅を意味する。


「それこそタイムトラベルした目的やろ。何がいかんの?」


 よく考えてほしい。


 現在の貴方は、過去の全ての出来事の結果として存在している。その中の些細な事柄であったとしても、どんな影響があるか分からない。


 ニュートンがリンゴから万有引力に気付いた逸話は有名だが、リンゴに気を取られなかったら、彼は引力の存在に気付けたのだろうか。リンゴではなく他の果物に変わった可能性、または、一生気付けなかった可能性も否定できないだろう。


 あくまで可能性でしかないが、取るに足らないと思われた出来事が積み重なり、世界を揺るがす程の重大事件に発展するかもしれない。


 僕は思うのである。


 貴方を形作っているモノ、それが僅か一欠けらでも失われたなら、それはもはや貴方ではない。限りなく貴方に近いナニモノカである。


 事故を起こしたからこそ、貴方は時を越えて過去へやってきた。現在の貴方は、事故があったからこその存在だと言える。


 ところが歴史に介入した結果、事故が起きる可能性が消え去った。


 では、事故が起きた結果の存在である貴方は、いったいどうなってしまうのか。


 存在が否定され、世界から消滅する定めなのか。


 それとも、自分の存在が新たな設定で上書きされるのか。


 答えを出せる人は誰もいない。

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