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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
序章 自己の確立
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15 目標設定 That's life.

 落ち着いたところで、今後の目標と、やるべき事を決めていこう。


 立てる目標は三つ、短期・中期・長期目標だ。本来であれば、最初に決めるべきは長期目標で、それを達成する為の途中経過として他を定めるのが筋だろう。


 しかし、今は逆に短期目標から設定すると決めた。長期目標とは、言い換えれば最終目標だ。僕にとって最終とは、何処どこの場所を意味しているのか。


 この人生が終わりを迎えても、また転生を繰り返すのだろうか。


 今は考えても答えは出ないだろう。分からない事は後回し。時間の無駄である。出来る事からコツコツと。よって短期目標から頑張る事にする。



【 短期目標 】

目的:学校デビュー

期限:来春入学式 約1年後


 入学してグループが形成されると、グループ内の順位付マウンティングけが始まるだろう。面倒くさいのでボスに成ろうとは思わないが、虐められたくも無い。


 一度順位が決まってしまうと、それをくつがえすには大変だろうと思う。前世では、高校デビューという言葉があるように、所属するグループをリセット出来る機会があったが、ここの学校制度はどうなっているのか分からない。


 来春の入学時迄に、実力を付けておこう。なお、春夏秋冬と1年の長さは、地球とほぼ同じと思ってよい。月まで存在している。生命誕生の条件が、地球と同じ環境ということなのか。良く分からんが、前世と同じ感覚なのは有難い。


鍛錬科目:知力・体力・時の運

知力:文字を覚える。

体力:肉体鍛錬。

運 :?


 運を鍛える事など不可能だと思うが、次の言葉に突破口を見出す。運を別の言葉に言い換えれば、天の時と言えるだろう。


 古代の中国、孟子の教えで、次の言葉がある。


 天時不如地利。(天の時は地の利に()かず。)

 地利不如人和。(地の利は人の和に()かず。)


 天の時は地の利に及ばず、地の利は人の和に及ばない。このような意味である。素直な感想としては、それはきれい事じゃないのかね、と思わないでもない。


 生まれた家柄などは、それこそ運だろう。転生前の世界で話題となった、トマ・ピケティという経済学者がいた。彼の主張を簡単に言うと、働いて金を得るよりも、資本を運用したほうが稼ぎやすいというものだ。


 つまりは、会社で働き、出世しながら給料が上がっていくよりも、手持ちの資産を投資などで運用したほうが効率よく稼げるという事だ。少なくとも資本主義社会のもとでは。こうなると、金、運用できる資本を相続できる金持ちに有利となり、社会の格差がさらに拡大すると主張しているのだ。それを解消する為に、金持ちには重く、貧乏人には軽減措置をという累進課税を用いる事を提案している。


 どのような家に生まれるかは運である。それが前世の行いだよ、などと言うものがいたら、まさに暗黒だろう。やってられない。孤児に生まれた僕は、どのような業を背負ってきたのか。人に生まれるだけ幸運な気もするが、良く分からない。


 さて、今はピケティは脇に置いておくとして、天地人とは何なのか、自分なりの解釈をしてみる。


天の時 - 周りの環境や状況が、自分に対して有利に働く時。


地の利 - 地に足のついた安定状態。天の時を迎えた際、

      時を逃さず対応できる地力、条件を備える。


人の和 - 周囲の人間から協力を得られる。



 『 天 < 地 となる理由 』

 天の時が到来しても、気が付かなかったり、力不足によりその機会を活かす事が出来ないかもしれないが、実力があれば、少しばかり条件が悪かろうとも乗り越えられる。


 『 地 < 人 となる理由 』

 一人の力には限界がある。他の生物と比べ、力の劣った現生人類が、何故に繁栄を極められたのか。その理由の一つは、共同体・社会ネットワークだと言われる。優れた一人より、平凡な二人のほうが強い。


 この様なものだろうか。しかし、これは孟子の言が正しいという大前提のもとで考えた結論である。実は正反対だったと言われれば、その結果に沿った理由を見つけられるかもしれない。だが、今はこの説にすがる以外に考えが浮かばない。


 出来る事からコツコツと、そう自分に言い聞かせる。人の和を広げて損は無し、悪い事では無い。ただ、損得のみで動く人間にならない様に気を付けよう。


 こんな訳で、人の和を広げる事により、結果的に、運の強化となるよう目指す。現状を変えるには行動あるのみだ。


 具体的に何をするかを、後でじっくりと考える。さあ、次だ。



【 中期目標 】

目的:扶養されなくても生きてゆける事

時期:学校卒業時 約11年後


 卒業すると、すぐに家を出て行けと、叩き出される事はないと思うが、独り立ちできることを目指す。要は、それなりの金を稼げるようになりたい。


 余談だが、この社会では紙幣と硬貨が流通している。どうやら、金本位制ではなく魔石本位制らしい。紙幣や硬貨を役所に持っていくと、同じ価値の魔石と交換してくれるとのことだ。佐助さん達から、理解の速さに驚かれた。前世の記憶について、どこまで打ち明けて良いものか悩ましい。



【 長期目標 】

目的:輪廻とは何か理解する

時期:生命の終わり


 そもそも輪廻とは何なのか。そこに法則はあるのか等、一切が分からない。人として生まれ、知性がある今が、理解するに至るチャンスだろう。この人生の終わりが何十年先になるのか、明日になるのかは誰も分からない。出来る限り先延ばしにしたい。


 こんな感じかなと思う。あくまで目標あり、達成する努力はするが、必ず成し遂げねばならないものでもない。絶対だと思うとプレッシャーに潰されそうだ。長期目標なんて不可能だろう。挑戦することに意味があるというやつだ。


 人生とはままならないものだ。願ったことが上手くいく事のほうが少ないだろう。英語の表現で、 That's life. という言葉がある。仕方が無いよ、という意味で、何かが上手くいかなかった時、慰めとして使われる。


 仕方ない、それが人生というもんだ、というのは悲しいものがあるが、皆、何とか折り合いを付けてやっていくものなのだろう。


 出来ないかもしれんが、やるだけやる。どこまで辿り着けるのかは分からない。


 駄目だったら? その時に考えよう。なるようになるだけだ。


 That's life.

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