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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
三章 アルジャーノン計画
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135 目標と実績の評価

 何をしようが自由だが、その結果は全て自分に返ってくる。


 因果応報。至極当たり前の事ではあるのだが、改めて突きつけられれば、非常に大きいプレッシャーを感じる。誰かにすがりたくなる気持ちも良く分かる。


 正確な統計は知らないが、風水のようなオカルトにまる人は、会社の社長など一定の地位にいる人が多い気がする。社長になれば、もはや尻ぬぐいをしてくれる上司はいない。何処かに心の支えを欲しているのだろうか。


 金を持っているから、ターゲットになりやすいという単純な理由。更には、人脈を広げるツールのひとつなだけかもしれない。



「次の企画、やるかやらんか占いで決めるんやと。ウチの会社大丈夫か?」

「本気か。この前さあ、飲み会で社長を適当に持ち上げとったら、今度、占星術の勉強会に来てくれ言われたぞ。勘弁してほしいわ。」

「営業の内やと思って行って来たら? そこそこの偉いさん達が集まるんやろ?」

「占いには興味無いけど、人脈作りの為に言ってくるか……。」

「本気になって壺とか買うなよ。」

「経費で落とせんし、手当も出ぇへんしな。」



 風水に興味を持つのは地位の高い人に限らないが、仕事の判断を占いに頼る時があると聞くと、驚きが非常に大きい為、役職の高い人は風水をたしなむ人が多いという印象を受けやすい。


 ひとりの経営者が風水を好むという事実は、全体の一部に過ぎないが、その一部のみが切り取られ、経営者全体の印象に影響を与えている可能性もある。


 心理学では、この様な現象をハロー効果と呼び、直観だけで物事を判断すると、全体像を見誤りかねない。


 木を見て森を見ず。気を付けなあかん。


 考え込むと切りが無いが、既に腹はくくってある。後は最終確認を残すのみ。


 実験計画は何とか年明け前にまとめ、佐助さんに出してある。今は結果待ちで、正月休みをゆっくり過ごしている。


 去年の今頃は、新たに始まる学校生活を心配していたように思う。確かに様々な事はあったが、それなりにやってこれた。


 では、今のうちに来年度の行動計画を練り上げるとしますか。


 考え過ぎては行動が鈍るが、かと言って、行き当たりばったりでは話にならん。基本となる柱を定め、後は臨機応変に対処していくとする。その為に、新たな行動目標が必要だ。


 先ずは、これまでに立てた目標と実績を評価していこう。



 ――――――――――――――――――


【 短期目標 】

目的:学校デビュー

期限:入学式


【 短期目標 その2 】

目的:新たな便所技術の見本作製

期限:初年度の夏休み明け


 ――――――――――――――――――


【 中期目標 】

目的:扶養されなくても生きてゆける事

時期:学校卒業時


 ――――――――――――――――――


【 長期目標 】

目的:輪廻とは何か理解する

時期:生命の終わり


 ――――――――――――――――――


 短期目標の2つは既に終わった。大成功といっても良いが、全体を見渡した時の評価となると事情が変ってくる。


 損して得取れ。または、人生万事塞翁が馬との言葉があるように、ミクロの個別案件と、全体を俯瞰したマクロの評価が違うケースはあり得る話だ。


 学校デビューの目標が上手くいき、仲の良い友達が出来たが、目立つ事で注目された為か、一部の者達から敵視されたのはマイナスポイントだ。もっと視野を広く持たねばならない。


 そして、次の便器見本作製については、文句の付け様がない。上手くいき過ぎて怖いくらいだぜ。


 水栓便所の特許料が入ってくる事で、中期目標である経済的独立の達成が身近に感じられるようになった。


 特許料が入るのは学生時代だけの契約なので、卒業以降は、何かしらの職を見つけないと駄目だが、仮に自分で事業を興すにせよ、元手が必要となる。


 卒業後に家業の病院を手伝いたいと言っても、反対されない気はするが、選択肢は多く持っておきたい。その為に金は絶対に必要となるだろう。古代遺跡の発掘を望んだシュリーマンも資金集めから始めた。


 コロンブスのようにアイデアを売り込み、スポンサー契約を結ぶ方法もあるが、スポンサーの意向に逆らえず、やりたくもない事をやらされる恐れがある。


 上司から、逆らうものは皆殺しにせよと言われても、それを拒否できるのか?


 逆らったらクビどころか、物理的に首が飛ぶかもしれん。コロンブスは自ら虐殺行為に手を染めたと聞くが、僕には無理だ。勘弁して欲しいぜ。中世って怖いわ。


 子供の世界なら腕力で解決できるかもしれんが、大人社会でそれは不可能だ。


 では、どうすれば自分の意思を貫ける力が持てる?


「腕力で解決できんだと? それは単純にお前が弱いからだ。鍛え抜かれた肉体があれば、己の意思を押し通すなど容易たやすい事よ。」


 地上最強の生物かな?


 中世の世界は、現代よりも暴力が必要なのは事実だ。治安は比べ物にならない。自己防衛の意識は大事だと思う。僕が通っている無二斎師範の道場は、剣道以外に槍や弓など総合的に教えてくれるとの事。習っておいて損は無いだろう。


 うん。来年度も通うとしよう。


 初年度の無料期間は終わり月謝が必要となるが、水栓便器の特許料で十分に賄える金額だ。佐助さんに言っても出してくれそうな気はするが、ここは自分で出したい。


 何故かと言うと、ケン兄とハナ姉は未だ習い事をしていない。お前だけズルいと思われたくないからである。医院を手伝っとるから、その対価だぞと言えばスジは通るが、頭で理解できても感情は別だ。


 それに、彼らも薪拾いとか、家の手伝いはやっとるからね。役割が違うだけで、皆やる事はやっとるのよ。


 二人の性格を思えば、何も気にしないような気もするが、万が一にも人間関係がこじれるのは避けたい。

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