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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
三章 アルジャーノン計画
134/305

134 我が道を行く

 低リスク・高リターン。


 これが効率の良い生き方だろうが、それを成す為には、何らかの実力が必要だ。


 ネット小説で一定の人気を持つスローライフ物語は、低リスク・高リターンのケースに当てはまるように思える。


 周りで起きる難問をささっと解決し、皆から高い評価を受ける。承認欲求が易々と満たされ、理想的な生活を謳歌しているようだ。


 しかし、そこに至るには、それ相応の力が求められる。彼らの願望が叶うのも、確かな実力が備わっているからだ。その力を得る過程をすっ飛ばし、実りの果実を収穫する場面を描いているだけの話だろう。


 詰まり、高い報酬を得る為には、どこかで努力しなければならない。苦労自慢をする人もいれば、努力を語らない人もいるっちゅう事ですな。


「いやいや、俺ん時は神様がタダで力くれよったぞ。」


 へー。


 そういうヤツはな、鑑定でステータスを確認しながら、スキルを磨いてハーレムでも作っとけや。


 ふん、羨ましい限りだぜ。


 ポンペイの落書きを見るがよい。 …… 【 リア充は死ね。 】


 ま、羨ましいのは間違いないが、じゃあ自分がそれをやりたいかと問われれば、やりたいとは思わん。その道の先に自分の望むものは無い。


 上司の太鼓持ちが出来るかといった問題と同じで、効果的なやり方だと分かってはいても、その方法で、自分が持つ高い階層の欲求が満たされるのかは別問題だ。


 例えば、山の頂へ立ちたいと望んだ時、安全で確実な手段はヘリコプターだが、過程こそ大事と考え、冬季ソロの地獄に挑む者もいる。


 頂からしか見えない景色はある。だが、価値をどこに見出すかは人それぞれだ。山頂すら目指さず、サバイバルという選択もありだろう。


「なんで命懸けて山ァ登らなあかんねん。冬はコタツにミカンで決まっとるやろ。ぬっくぬくやぞ。この幸せは何物にも代え難いわ。」


 何がその人に合った生き方なのか、答えを出せるのは本人のみ。迷いながら前へ進むしかない。


 スキル鑑定ハーレム無双をディスっている訳では無いとは強調しておく。嫌いじゃないが、自分のスタイルとは違うだけ。


 スポーツで言うなら、野球を見るのは好きだが、自分がやりたいとは思わない。逆に、サッカーで体を動かすのは好きだが、観戦したいとは思わないようなもの。


 まあ、何ちゅうかね。タイプが違うからといって、お前なんか認めんってヤツは、ケツの穴が小さいと自白しとるようなもんや。評価すべきは評価せなあかん。


 人それぞれで良いんじゃないのかな。


 そう、まさに世界が違うのである。


 悲しいかな、チートスキルを持たぬ力無き者が何をほざこうとも、負け惜しみにすらならんがね。己の生まれ落ちた世界で、生き延びるより他は無い。


 さて、肝心の輪廻についてだが、そのルールがどうなっとるのか、正直さっぱり分からんのですよ。


 死後の裁判を受けた記憶があれば、次に生まれ変わった時に、何を注意して生活すれば良いか分かるはずなのに。


 例え生き方を間違えていたとしても、客観的かつ公平な評価が受けられてこそ、軌道修正が出来るというもの。答え合わせが必要だ。


「君ィ、今回のテストは落第点やったから、人間からの落第は避けられんなぁ。」

「何処を間違えていたのでしょうか。」

「それは言えん。」

「正解を知る為には、どうしたら良いのでしょうか?」

「甘ったれるな。それが分かっとらんから、人間を辞めなあかんのやぞ。」


 合格させる気ないやろ。


 世の中には数多の宗教が溢れている。


 信仰する宗教を間違えたら、地獄に堕ちてしまうのだろうか。


 前世での感覚では、どの宗教を信仰するのかなんて、周りの環境によるところが非常に大きい。日本に生まれたからこそ、宗教に敬意を払いつつも、信仰とは無縁でいられたが、宗教の影響が強い土地や時代に生まれた場合、一歩間違うと致命傷になりかねん。


「最近、大地が丸いなんて言い出した愚か者がおるそうだな。」

「教会の教えに背くとは悪魔に魅入られたか。異端審問をせにゃならん。」


 家族を含め、社会全体が一つの宗教をベースに成り立っていると、その考え方や価値観から離れる事は困難だ。親が新興宗教に入信していた場合、子供はその宗教から影響を受けざるを得ない。


 学校やアルバイト先等で、信者以外の友人がいれば、宗教とは違う考え方を身に付ける事が出来ようが、周りのコミュニティー全てが同じ価値観だったら、そこに疑問を持つのは難しい。


「先祖から伝わった神々を敬い、人には優しくと心掛け生きてきました。」

「お前が生前に信じておったのは邪神じゃぞ。異教徒め、地獄へ堕ちるがよい。」


 こんなん運のみでしょ。


 宗教に限らず、世の中は不確かな事ばかりで、何が正解なのか分からん。最後は自分の意思で決断するしかない。


「その通り。世の中は分からん事ばかりやで。ほんでな、そんな君に朗報やがな。来月にどっか偉い先生がセミナーを開くんやが、これがまた素晴らしいと聞くわ。資本主義社会を生き抜く方法ってのを教えてくれるんやって。」

「偉い先生って何の先生?」

「風水かなんからしいよ。」


 自己責任でどうぞ。

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