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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
三章 アルジャーノン計画
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132 なぜ力を求めるのか

 そもそも、情報処理能力が違うと、コミュニケーションが取れなくなるってのが正解なのか? じっくり考えてから行動しよう。


 失敗してから嘆いても後の祭りだ。一時の熱狂で踊り狂うのも悪くないが、祭りが終わり冷静になってみれば、取り返しのつかぬ事態となるやもしれぬ。


 物事が終わってから考えるエピメテウスではなく、前もって考えるプロメテウスの精神を見習うべき時だろう。


 彼らはギリシャ神話の登場人物であり、エピメテウスは、かの有名なパンドラの箱を開けた張本人だ。後悔しても取り返しがつかない場合だってある。


 ギリシャ語で、プロは前、エピは後という意味がある。また、メテウスは考えるという意味だそうだ。言うならば、先見の明と下種の後知恵。


 蛇足ではあるが、プロローグとエピローグの単語も、ギリシャ語より生まれた。ローグは話という意味であり、物語の本編に入る前の序章、そして、最後の結びを指す言葉となった。


 パンドラの逸話では、最後に希望が残った。


「明日への希望があれば何とかなる。今日よりも明日なんじゃ。」


 やらかした本人に開き直られてもね。責任取れへんやろが。お前のせいで世の中無茶苦茶やぞ。


 被害を受けるのが自分だけなら良いが、他人に迷惑が掛かると精神的にキツい。


 このエピソードは、イブが禁断の果実に手を出したケースと似ている気がする。人間は生まれながらの罪、原罪を背負っているという話だ。


 自らの意思で禁忌に触れたせいで、あらゆる悪徳が蔓延はびこるようになった。性悪説がその根底に流れているのだろうか。


 人の本質が悪ならば、その心を戒める為に契約と罰則が不可欠だ。


 約束事が社会全体に及べば、その決まりは法律となる。


 古代中国の法家も性悪説から誕生した。


 どの世界も集団の和を乱す悪人は必ずいる。明日の理想を求めるのも大事だが、夢見るだけでは、今日という現実を生き延びられない。


 無茶苦茶するヤツを放置すれば、集団生活は成り立たない。争いを望まず、奴隷の如き生涯を送りたいのであれば、好きにすればよかろう。


 人は不特定多数の人間と、社会という名の運命共同体を形成するようになった。まさにその時こそ、人間がエデンの園を追放された瞬間なのかもしれない。かつて原始より前に存在したかもしれぬ、地上の楽園は永遠に失われたのだ。


 身内だけの楽園で通用した甘えは、外の現実社会では許されない。


 世知辛せちがらいぜ。


 人間は共同体を形成するからこそ、他者の力を我が物とできるが、その集団とは個性の集まりであり、完全に一体となる訳ではない。だからこそ摩擦も生まれる。自分の欲を抑えねばならぬ場面も出てくるだろう。


「いやいや、抑えてばっかですわ。」

「それが人生ってもんや。」


 That's Life.


 さて、関係のない話ばかりしてないで、本題に入ろうか。


 実験について話をらしてきたのには理由がある。それは単純に怖いからだ。


 正直に認めよう。途轍とてつもなく恐ろしい。


 今は自分の脳に微弱な魔力を流し、その構造を把握しようとしているが、集中して長時間座っていた時に、足が痺れて動けなくなった時があった。


 やっちまったか?


 魔力操作を誤り、脳組織を壊してしまったかとの思いが頭をよぎる。思わず神仏にすがりたくなったのが正直な気持ちだった。


 幸いにして、屈伸などをして直ぐに痺れはとれたが、もしかすると一生このままかもしれんと考えてしまい、大事なところが縮み上がった。


 特定の神様を信仰してもいないのに、いざとなると神頼みだなんて、調子が良いもんやなあと我ながら思うが、これは自分が弱い証拠だ。これほど心が弱いのに、この先ちゃんとやっていけるのだろうかと不安になる。


 うん、半端な覚悟で実験したらいかんな。


 足が痺れた時に思ったが、実験の失敗により、知能や精神が壊れるだけでなく、身体に影響が出る可能性もある。


 中世において、障害者の扱いは現代と比べ物にならないだろう。しかも、それが先天的なものや、避けられない事故などの結果ならともかく、自らの実験結果であるならば、完全なる自業自得だ。


 それに加え、世の為人の為という大義名分すら無く、自分が高い能力を得たい為という、私利私欲が最大の理由である。


 そもそもだ、なんで力が欲しいんやと自分に問いかける。それは詰まるところ、何の為に生きるのかという話につながる。


 高い能力を求めてはいるが、その力で何がしたいんやって事だ。能力はあくまで手段に過ぎない。


 人生の目的とは何か。


 前世でやり残した事があるからこそ、世界を越えてまで輪廻を繰り返しているのだろうか。来世にまで記憶が残る執念なんて、呪いと呼んでも良いかもしれん。


プロローグとエピローグの説明がしっくりこなかった為、表現を変えました。

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