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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
序章 自己の確立
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13 家族会議6 契約により得た能力

「契約を行えなかったら、どうなるの?」

「契約をたがえるつもりはないが、当然にして与えられた力を失う。たがえた訳、経緯いきさつによっては、魔力…、今はこの不思議な力の事を、魔力と呼ぶ事で統一されてきているんだが、これを扱う力が失われると言われている。」


 何だか曖昧あいまいな答えだ。


「言われているって事は、そうならない事もあるかもしれないって事なの?」

「非常にまれな場合に、何も起こらない事があると聞くが、普通はそれなりの罰則があると考えておいた方がいいな。」

「罰則がどうなるかは、その時の状況や、信仰心によって、影響があると言われているの。約束した事が出来ない理由について、どこまで自分に責任があるかって事が、大きな問題となるみたいね。」


 所謂いわゆる、情状酌量の余地あり、といったケースが通用するらしい。


「正当な理由があれば、約束した内容を破っても大丈夫ってコト?」

「そうだね。どこまでが許されるのか、神様により違いがあるみたいだけどね。」

「そこら辺は、信仰心の強さだとか、神様との相性の良さがあると言われとる。」


 曖昧あいまいさはいまだ残るが、強固な縛りではないらしい。感想の域を出ないが、今後に孤児の誰かが家出をしたり、最悪のケースで、辻斬りや事故に巻き込まれた場合、自己の管理外であり、責任を問われる事はなさそうだ。


 また、契約を果たし終えた場合には、授かった力は継続し、自分の物になるとの事だ。なお、家出や辻斬りに話が及んだ際、ケン兄やハナ姉から抗議の声が上がったが、この内容を飛ばす訳にはいかなかった。勘弁してもらいたい。後で彼らに頼み事をするつもりなので、何か埋め合わせでもしておこうか。


 ここまでで、随分と新しい知識を得る事が出来たが、話の取っ掛かりとなった、僕の出自の話がまだ出てきていない。ケン兄やハナ姉みたいに、僕もご近所さんのたぐいだったのだろうか。


「いや、ハルは近所の子供ではなかったんだ。」

「都の方から、行商にきていた商人の一家が、この町に逗留とうりゅうしていたの。」

「この地方の特産は魔石でな。魔石を扱う商人との事やったな。あとは、学者さんやという話でもあったな。」


 そして、この町に縁も所縁ゆかりもなかった僕が、何故、ここで面倒をみてもらえているのか、という話に繋がってゆく。両親は魔石を扱う商いの為、この地を訪れていたとのことだ。魔石とは魔力の結晶体であり、様々な用途に用いられる。僕たちの暮らす、この町の名前は北関市と言い、特産品の一つが魔石である。


「僕たちが幸運だったのは、ハル、お前のご両親に出会えた事なんだ。」


 神仏に関する事柄については、神職の専売となっているが、商人は人との契約に通じている。僕の両親は、神との契約する場合においての、内容についても理解があったらしい。そのお陰で儀式が執り行えたとの事だ。


 その儀式には一定量の魔石を必要とする。この魔石を持ち合わせていた事、これについても大きな幸運だった。両親が商売で仕入れた魔石を無償提供したらしい。


 神仏との契約に関する話を聞いたばかりだったので、何かの裏があったのではと勘ぐってしまうが、やった事は素晴らしい事だ。当然に会った事もないが、少し誇らしい気持ちにさせてくれる。


 そして肝心な契約内容の取り決めについて、文面作成を詳細まで指南してくれたとの事だ。契約破棄や履行不能時の取り決め等、一つ間違うとえらい事になるらしい。先ほどまでは罰則が少ないような印象を受けていたが、この内容次第でかなりの差がでるという。やはり気軽に行うものではなさそうだ。


 この様に僕の両親の手解てほどきのお陰で、初回の契約を交わし知識を得たとの事だ。この時は知識のみで、具体的な疾病の処置方法を取得していない。しかしながら、疾病の感染予防の面で大いに役立ったと聞く。


 しかし、完全な予防は不可能であり、次に僕の両親が病魔に侵されたのである。体力が日々衰えてゆくなかで、自らの死を悟り、息子を佐助さん達に託したのだ。新たな扶養契約の準備を整えながら。生前は扶養の譲渡が出来ないようで、契約は死後に行われる予定であった。


 そしてしばらく後、残念ながら契約の儀式が行われ、佐助さん達は第二の能力を得る事となった。それは次のようなものだった。


【 契約内容 二回目 】

 共通目的:子供の扶養 +追加

 共通期間:元服(15歳)まで


【対象者】【個別目的】     【能力】

 格兵衛  食料調達+安全管理  狩猟採集知識+生体反応察知

 佐助   健康管理+疾病措置  医学知識  +感染治療

 春絵   疾病予防+食育管理  衛生学知識 +栄養学知識


 このようになった模様である。まあ、言いたい事は山ほどある。この対象が自分だという事に関係している事もあるが、まずは能力についてだ。


 春絵さんは、また知識系統で契約をしたとの事だ。他の二人は知識から、具体的な能力を扱える契約へと変化した。佐助さんは感染病の治療とのことだが、どうせなら薬学知識のほうが良かったのではと、思わないでもない。対面治療は、効果を直接確認できるメリットがあるが、直接に相対した患者しか救うことができない。特効薬があれば、はるかに多くの患者が救えるだろう。


 しかし、何もないところからの薬の製造には、時間がかかるだろうし、その資金も必要となるだろう。必要なのは知識だけではない。それに、目前に死にゆく人間がいたら、それを救いたいと思う気持ちが出てくると思われ、難しい判断だろう。将来的に、名も知らない膨大な人数の生命を救えるが、現実に助けを求める、顔の見える人々は見捨てねばならぬ状況におちいった時、その判断を下すのは難しい。


 そして、もう一つ頭に浮かんだ考えがあった。


 これは明らかに等価なものじゃない。


 自分達が成人すると、この能力に見合う価値があるのか?


 とてもそんな自信は無い。

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