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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
三章 アルジャーノン計画
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129 リスク管理

 過労死裁判について補足しておく。


 企業が違法残業の事実を認めた場合、これまでは略式起訴にて簡易裁判が行われるのが通常であった。


 じゃあ何か?


 人の命は100万円以下だとでも言うのか?


 当然だが、これで話が終わるほど甘くは無い。


 この略式で裁かれる内容とは、労働基準法という行政法を破った行政罰である。そして、従業員の死が労災だと認められる流れだ。


 労災認定は始まりに過ぎない。


 労災は会社に責任がある事を意味し、他の裁判に重要な意味を持つ。


 過労死が起こった場合、裁かれるのは行政法のみではない。内容が悪質であり、犯罪性があれば刑事罰で起訴される可能性すらある。


 たとえ刑事罰は免れても、民法での決着が未だ終わっていない。


 人が一生で稼げる生涯賃金というものがある。


 個人により違いはあるが、およそ一億円が目安と言われる。


 死亡した事により、今後に稼げるはずだった賃金を得る機会を失ってしまった。まり、将来の収入である一億円を失ったという事に等しい。


 これは損害賠償案件だ。


 先ず生涯賃金を算出し、それを過失割合で会社の責任とされる部分が請求される事となる。


 労災認定があった場合、会社の過失割合がゼロとなるのはあり得ない。労災認定されるという事は、会社に責任がある事を意味するからだ。労災と認定されれば、会社は責任を逃れる事が出来ない。


 会社が労災を認めるのに慎重となるのはこの為である。大企業でもない限りは、会社の存続が危ぶまれる金額となるだろう。


 また、これに慰謝料は含まれない。会社の出費はさらに増える事になる。

  

 真剣にリスク管理をするのであれば、ブラック企業とされる会社は、早急な労務の見直しをお勧めしたい。


 気を付けるべきは、人間は善良な者ばかりではないという事実。それは会社だけでなく、労働者サイドにも同じ事が言える。


 ブラック企業があるならば、モンスター社員がいるのも忘れてはならない。適正な労務管理と記録の保存は、自己防衛の絶対条件だ。


―――――――――――――――――――――


 さて、脳の話に戻ろう。強化方法をどうするか。強化する部分を誤り、バランスが崩れるのが最も恐ろしい。


 例えば理性で抑えきれない程に、野性的な本能が強化されたらどうなる?


 腹が空けば、手当たり次第に食い散らかし、気の向くまま排泄する。女とみれば襲わずにいられないモンスターへとなり果てるやもしれぬ。


 最悪だ。生きながら地獄へ堕とされるようなものだろう。わずかでも知性が残っているならば、精神が耐えきれない。


 かつて、人間は脳の機能を使い切ってはいない説ってのがあり、使われていない領域を開発すれば、恐るべき能力を手に入れられるはずだと考えられた。



「脳の全てを使う、それが我が暗殺拳の極意なりぃ~っ!」

「バ… バケモノめ!」


 実は、既に全部使っとるらしいですよ、アレ。将来において、さらに別の学説が出る可能性もありますがね。脳の構造はとても繊細だ。専門的な知識もなく、手を加えて良いものだろうか?


 失敗した時のリスクが高すぎる。僕の考えた脳強化案は、脳機能そのものではなく、脳に情報を伝える情報伝達物質、ニューロンを増やすという方法だ。


 身体で例えるなら、心肺機能や筋肉を強化するのではなく、各細胞にエネルギーを運ぶ血液をドーピングしてやろうという試みだ。


 一昔前、脳の情報伝達物質ニューロンは何歳になっても増えるとの考えが一般的だったが、どうやら13歳程度で増加は終わるのではないかという説が発表された。


 僕が13歳にこだわる理由がこれだ。ニューロンを増やすのが僕の計画である。


 これで、より多くの情報量を扱う事が出来るだろう。


 当然ながら不安いっぱいだ。その不安の理由、リスクを考えてみよう。



1. ニューロンを増やす方法


 ニューロンは、記憶を司る海馬で作られるという。魔法操作で増やす事が出来るのか。また、手違いで海馬の組織が破壊される危険は無いのか。


 実験が必要だ。



2. 増えた情報量を扱いきれるか。


 ニューロンが増えれば情報量も増えるだろうが、その量を処理できるのかという問題。前世の記憶で苦しんだのは記憶に新しい。


 もう一度地獄を見る覚悟はあるか?

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