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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
序章 自己の確立
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12 家族会議5 契約内容

 自分の世界に入り込んでしまっていた。これはもう悪癖と言うべきだろう。目前に会話の相手がいるのに、それを忘れ、自分の考えに没頭するのはよくない。過去の経緯いきさつから、何かあると自分の殻に籠るのが、癖になっているようだ。これからは意識して直していこう。


「あ… うん、え~ すいません。考え込んでしまって。」

「今回の迷子も、そういうトコやぞ。思慮深いのはええ事やが、周りが見えんようになってはあかん。」


 何か気の利いた一言でも言えれば良いんだが、返す言葉がない。こういう時は黙っているのが一番だ。沈黙は金なり。素直に反省しよう。


「それで、話の内容は分かるかな? どうかな?」

「想像は出来るけど、初めて聞く事だから、分からない事が多いと思います。」

「誰でも最初は分からないよ。説明の途中でも、疑問があったら聞いてくれ。」


 ここで年少組が口を出す。


「俺も知ってる事だったら教えるよ。」

「私にも聞いてね。」

「にーちゃん、ねーちゃん、ありがと。」


 学校で、僕の知らない事をを学んでいるらしいし、頼りになるだろう。


「ハルくん、お願いしますと言いなさい。」

「えぇ~?」

「ハルちゃん、レイギは大事だよ~。」


 くそう、調子に乗り出しやがった。


「…ねがいます。」

「うむ、よろしい。」


 けっ、何がうむじゃ。答えられんと思われる、難しい事でも質問してやろうか。いや、いかん。この世界では僕の方が新米だ。ここで敵を作ると後悔する。


「で、この不思議な力だけど、どこまで出来るの? 空を飛んだり出来る?」

「そう思うのは、だいたい皆が考える事だね。」

「ハルちゃんも同じ道を辿たどったかぁ~、同じ~。」

「で、今が飛べとらんって事は、無理だって事?」

「ハル、夢は覚めるものなんだよ。」


 カッコつけて言われてもね。どこまでが限界なのか、探求してみたい気がする。しかし、挑戦するかどうかは、詳細を確認してからだ。


「無理かどうかはわからないよ。」


 ここで佐助さんが間に入る。


「法は基本として、現世での作用を強化するものだから、空を飛ぶのは難しいが、術を使う場合には、不可能では無いのかもね。ただ、空を飛のぶに相応ふさわしい行いを求められるから、現実としては難しいねえ。」


 もし、仮に飛べるようになったとして、その対価として求められるのが、相当な代償になりそうだ。空を飛ぶのは魅力的ではあるが、そこまでして飛びたいかと問われれば、別にいいやという気がする。便利かもしれないが、前世にて、いくらでも経験があるのだから。それに、地に足を付ける事で見える世界もある。結局は与えられたものでやっていくしかない。しかし、あえて背伸びをする向上心も、場合によっては大事だと思う。


「話を戻すと、空を飛ぶのもそうだけど、病気を治すってのも凄い事なんじゃ?」

「そうだね。簡単にはいかなかったよ。」


 そりゃそうだろう。僕が想像しているような、感染病に対するペニシリンのような効果なら、歴史に名が残るレベルだ。簡単にいく訳がない。


「今の力を手に入れるのに、2回の契約を必要としたんだ。第一段階は病気の原因が何なのか、医学の知識を手に入れようとしたんだ。知識がないと対処法が分からないからね。」


 一度目の契約は、ケンにいとハナねえを扶養する契約だ。始めは知識を得ようとしたとの事で、その内容は次の通りらしい。


【 契約内容 初回 】

 共通目的:子供の扶養

 共通期間:元服(15歳)まで


【対象者】 【個別目的】 【能力】

 格兵衛   食料調達   狩猟採集知識

 佐助    健康管理   医学知識

 春絵    疾病予防   衛生学知識


 具体的な契約書の文面で、確認したものでは無いので、詳細は不明だがこんなところだろう。一人前とみなされる元服は15歳とのことだ。現代日本では、義務教育の中学校が、15歳の年度末なので、それと同じと考えていいだろう。


 能力については、医学関係の二人について、知識レベルがどこまでか分からないが、医者からすれば羨望せんぼうの的だろう。格兵衛さんの力も生活に必要な能力だ。物理的な面で、どうメシを食っていくか確保できるのは、いざという時に不可欠だ。飢饉・災害などの非常時では、何物にも代えがたい。それに今の生活している、ほぼ自給自足と言って良い文化レベルのもとでは、非常に有難い能力だと思う。


 そして契約内容だが、この情報だけでは不十分だ。細部をあげると切りがないので重大な点で言えば、


1.期間が終了後、与えられた力はどうなるのか。

2.扶養の定義

3.契約が果たされなかった場合(解約はあり得るか)


 すぐ頭に浮かんだのは、この3点だ。


①目的を達成する為の力なら、目的を成し遂げたら、能力は無くなるのか。

②飯を食わせているだけで良いのか。労働力として使っても良いのか。

③扶養が無理となった場合、罰則はあるのか。


 重大な契約は、やはり文書に残すべきだ。特に長期になると、勘違いや思い込みも出てくる。そしてこの3点の中で怖いのは③だろう。①については、元々無かった能力だ。元に戻っただけと思えば割り切れる。②は厳しい制約は無いのかもしれない。実際に、僕の洗濯作業は労働と言って良いような気がする。しかし、だからといって不満に感じてはいない。


 やはり③が問題となるか。この世界で、子供が無事に元服を迎えられる確率は、どの程度なのだろう。

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