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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
三章 アルジャーノン計画
110/305

110 状態変化1

 遠足で一番の収穫は、水分子が状態変化すると気付けた事だ。


 固体である氷と液体の水。更には気体の水蒸気と容易に変化するのが水分子だ。これは魔法修得において重要な鍵になる気がする。


「こら~っ! お前たち何をやっとるんだら!」

「あ、やべぇ。」


 魚を焼こうと火を起こしていると先生に見つかった。火はちょっとまずかったか。


「馬鹿もんどもが。こんな所で焚火などしたらあかんだら。」

「すいません。僕が言い出しっぺです。」

「しっかりしてそうで、まだまだ子供だな。早く火を消すんだ。」

「あ… あの~。」

「何か言いたい事でもあるのか?」

「いえ、もう少しで魚が焼けるので、焼けてから消しても良いですか?」

「なにぃ~。」

「このままでは、魚が勿体もったいないかと。」

「ほーう。」


 魚に罪はない。


「……分かった。今回は許したるから早く食べるだら。ただし、帰ったら宿題が待っとると覚悟しとくようにな。」

「うわぁ。」

「うわぁとは反省が足らんようだな。」

「いえっ 有難き幸せであります。」

「ふっ まあいいか。焚火の後始末はしっかりやるんだぞ。」

「はい。」


 くそっ 遠足で疲れてる時に宿題とは。勘弁して欲しいぜ。


 学校に戻った後、その日の授業は終了し解散となったが、僕だけ先生に呼び出されて宿題が出された。今日の反省文を書いてこいとの事だ。


 反省ね。いつぞやもこんな事があったなと、迷子になった時の事を思い出した。その時は口頭での申し開きだったが、今回は文章での提出だ。僕も文章を作れるようになったかと思うと、少し感慨深い。


 うむ、ええね。着実に成長しとるやないの。


 怒られていながら嬉しがってはいかんのだろう。はよ終わらせて遊びに行こう。反省文は当たり障りのない事を書いて提出しておいた。


 さて、今日は川遊びだ。ゴンとワカに魔法漁法を教える約束になっている。


「これのコツは、魔力が自分の手足の延長だと感じる事やね。魔力を通じて自分の意思が届いてるって思える事が大事なんよ。」

「簡単そうに言うが、なかなか難しいな。ゴン、お前は出来るか?」

「いや、これはちょっと難しいね。」

「そりゃねえ。僕もコツコツ訓練したからね。もし君らがやって直ぐに出来たら、こっちの自信が無くなるわ。」

「じゃあ自信を無くさせてやろうぜ。見とれよ。」


 おうおう。威勢がいいねえ。じゃあその間に僕は自分の課題に取り組むか。


 先日に気付かされた状態変化だ。川に手を浸して魔力を流す。次に挑戦するのは水の状態変化だ。始めは氷へ変化させようと思う。地属性は習得済みな為、気体へよりは変化させやすいはずだ。


 液体から固体への状態変化。水から氷へ。


 水から熱を奪えば氷となるが、なぜ熱があるのかと言えば、原子・分子などの熱運動があるからだ。この熱運動を魔力でコントロールする。


 水分子の結合に手を加えガチッと固める。より詳しく言えば、乱雑に散らかったモノを整理整頓し、空間にゆとりをもって積み重ねるイメージだ。


 水が氷になると分子の結合も変化する。氷となった水分子の結合は水の結合よりも分子間に隙間がある。


 水が氷になると体積を増す理由がこの分子間の隙間である。冬になり水道管の水が凍り付くと管が破裂する恐れがあるのも同じ理由からだ。水が凍結した事により体積が増し、その圧に耐え切れなくなった水道管が破裂するのである。


 自然の力って凄いよね。


 質量が同じで体積が増えるという事は、同じ体積の中の水分子の数が少なくなるという事である。それ故に、同じ体積で比較すると氷は水よりも軽くなり、氷は水に浮く事になる。


 何事にも法則がある。是が世のことわり


 この理を無視できるのが魔力という存在だ。否、魔力にも定められた法則があるというのなら、魔力も理の範疇はんちゅうと言えるかもしれない。


 そんな事を考えながら魔力操作していくと、イメージ通りに氷が出来始め川面に氷が張り始めた。出来たばかりの氷が川の流れに乗り手元を離れてゆく。RPGで描写されるような派手な演出は無い。


 今の季節は秋口だが、もっと早くこれが出来るようになってたらなあと、心から思う。きっと来年の夏は快適に過ごせるようになるはずだ。


 今改めて考えると、春絵さんが氷入りの水を持ってきた時に気付くべきだった。冷凍庫が無いこの世界、魔法を使って氷を作ったと考えるのが自然だろう。


 あんときは嬉しさで何も考えとらんかったからなあ。暑さでアタマが働いとらんかったのも理由になるだろうか。これからは氷が作り放題だぜ。


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