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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
序章 自己の確立
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11 家族会議4 不当な契約について

 仮に、不当な契約を結んでしまった場合には、どうすれば良いのだろうか。


 不当なものを、取り締まる機関が存在すれば良いが、それが存在しない場合は、非常に困難な事になる。その一例が、国家間の約束事である条約だ。片方の国に対して、不均衡な利益を定めたものが不平等条約と呼ばれる。


 片方の国の法整備等が未熟であったり、文化への理解が無い場合においては必要と思われるケースもあろうかと思う。例えば治外法権で、条約を結ぶ国の法制度のレベルに、途轍とてつもない差がある場合である。


 片方は近代国家であるが、もう一方は中世以前であるケースだ。考えて欲しい。貴族階級のものは、領地において、何を行っても罪に問われず、実際に奴隷狩りを行っている国家が存在したとする。この国と交易を行う場合、この慣習に従うことが出来るのだろうか?


 ちなみに幕末期において、日本が不平等条約を結んだという話があるが、細かく言うとそれは治外法権ではない。日本は領事裁判権というものを結ばされたのだ。


 治外法権とはその名の通り、治世の外であり、国内でありながら、日本の法律が全く及ばない事を意味する。建前は日本の領土だが、実態は外国の支配下である。


 領事裁判権とは、外国人が罪を犯した場合に、日本の法律で裁くことが出来ず、外国人の領事(外交官)が、自国の法律により裁判を執り行う事を意味する。日本が出来ないのは外国人が関わる裁判のみで、それ以外は日本の法律が適用される。自国の主権を失う度合いについては、


 治外法権 > 領事裁判権


 このようになるが、どちらも不平等な事に変わりない。非常に不利益をこうむる為、条約の改正が今後の使命となる。改正に必要な条件だが、ひとつは国内の法整備を近代化する事だ。他国から、この国での法律は公平だと認めさせなければ、裁判権を取り戻す事が出来ない。


 斬り捨て御免ってのはどうなんですかね。(かなり厳格な基準だったらしいが)


 次に、何といっても国力だ。国力を高め、対等の国だと認めさせる必要がある。特に国家間の取り決め、国際法が未熟な時代は、力こそが雄弁な言葉となる。国々は富国強兵、帝国主義に走り悲劇を産んだ。この問題は、未だ解決されていない。国際連合は世界政府としての役割をになってはいないのである。


 国家が不利益な条約を結んでしまった時は、その国が頑張るしかないが、裁判が起こせる場合には、それがくつがえせるケースがある。


 その一例が、個人レベルの話では、消費者金融の過払い請求だ。


 消費者金融の金利にはグレーな部分が存在していたが、最高裁で争われた結果、その金利は無効であるとの判決が出た。この影響は凄まじいものがあり、その後、過払い請求は法律家たちの草刈り場となった。


 通常は、新たな判決が出たり新法が出来ても、過去について影響を及ぼさない。


 昨日までは合法だったが、明日からは違法であるとされるケースで、仮に禁酒法が制定されたと仮定してみよう。


 酒のせいで間違いを起こす。酒を買う金があるなら福祉にてる為、財産没収という悪法が出来たとする。この法律が過去にさかのぼって適用されるなら、法律が施行されてから酒を断っても遅い。過去に、アルコールをたしなんだ事があればアウトだ。これがまかり通ってしまうと、誰でも狙い撃ちで犯罪者にされてしまう。


 これを禁じた法の一般原則を、法の不遡及ふそきゅうという。


 過払い請求の判決について、限定的ではあるが過去にも影響を及ぼした。最高裁にて、すでに返済の終えた案件を含め、過剰に回収した金額を返済せよとの、決定が出たのである。


 返済の終えた案件を含めとは、過去にさかのぼったということなのか? そうであれば、弱者救済にはなるかもしれないが、法治国家とは認められないだろう。過去の案件を含めるのは、次のような理論が根拠となる。


1. 高レート金利は違法だが、これまでは、判断が出ていなかっただけである。

2. 今回の判決で違法性が明らかとなった。

3. 新たに法律が作成されたのではない。


 このような理屈により、すでに返済が完了した案件も、過払い請求の対象となり、過払い金バブルというべき事態が起こった。しかし、バブルとは必ず弾けるもので、いずれは終了する。もはや、高レート金利は違法だと定まったからである。違法なものを除き、新たに発生する事は無く、過去の案件を消化するのみだからだ。当然にして時効も存在する。


 知り合いの弁護士に聞いたが、次に標的となるのは、残業代の未払いだという。現在の状況が、どうなっているか分からないが、ブラック企業とされている所は、早めに見直しををお勧めしたい。ちなみに、この時効は2年である。


 法による規制は必要な場合もあるが、既得権益が過剰に守られて、自由な競争を阻害する弊害もうまれやすい。


 何事も々だ。ま、それが難しいんですがね。


「えっと… 分かったのかな?」


 考え込んでいたら、春絵さんから声がかかった。

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