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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
三章 アルジャーノン計画
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106 世界を越えるダークマター

感想で助言いただいた口調の統一感ですが、どうしたものか検討中です。

 人の人格や精神は何で構成されているのだろう。


 それは現実に存在している物質である。人間を含めた生物の思考が生れるのは、脳内で化学反応が起きた結果なのだ。


 人の精神世界は決してオカルト的な現象ではなく、化学反応の結果に過ぎない。


 精神病患者に投薬治療が有効なのは何故だ? 麻薬などのドラッグが精神に重大な影響を与える理由は? これらの薬物はオカルト領域に干渉できる超自然的物質とでも言うのか?


 当然ながらそんな事は無い。ドラッグは幻覚や幻聴を引き起こす作用がある為、スピリチュアル文化と親和性が高いが、ドラッグは脳内で起きる化学反応に影響を与えているだけであり、オカルト的要素は皆無である。


 化学反応が起きた結果、精神が影響を受けるということは、精神や心というものも純然たる物質以外の何物でもないはずだ。


 ……と、そんなふうに考えていた時期が僕にもあった。


 しかし、現実に異世界転生なるものを経験し、正解が分からなくなった。どんな理由があり、世界を越え記憶が引き継がれたのか。ひとつの仮説を立ててみた。


 前の世界にも魔力は存在していたのではないだろうか。


 存在すると思われるが、観測する事が出来ないダークマターのような存在。それが魔力と呼ばれる物質だと仮定してみる。この魔力に付随した生命の記憶が次元を越え、異世界に届いたのではあるまいかと。


 暗黒物質ダークマターとは天文学用語で想像上の物質である。


 直接的に観測される事は無いが、宇宙空間で実際に起こっている現象を論理的に説明しようとすると、何らかの未知なる物質があると仮定しなければ証明する事ができない為、観測された事は無いが、理論上は存在すると考えられている物質だ。


 例えで説明すれば、燃焼という現象は酸素と結合する事によって起きる。


 よって、燃えるのは酸素が存在している事を意味する。現代科学で酸素は存在が証明できているが、酸素の存在を立証できない時代であれば、酸素は未だ想像上の物質であり、暗黒物質ダークマターと呼んで差し支えない。暗黒物質ダークマターという言葉にオカルト的なロマンがあるのは否定しないが、これは科学的見地に基づいた仮説なのである。


 魔力という言葉を持ち出すと、胡散臭いオカルト話に聞こえるだろうが、あくまで暗黒物質ダークマターという用語についての解釈だと断っておく。


 思考の在り方を扱う哲学も同じだ。例えばデカルトの理論を分析すると、帰納法で己の存在証明をしていると分かる。結果から原因を導き出す。燃焼が起こるのは酸素が有るから。思考があるのは知性が存在しているからだ。論理に矛盾はない。


 さて、ここで仮説の更なる積み重ねが許されるなら、そのダークマターと呼ばれるものこそ魔力なのではなかろうか。そして仮にだが、この世界で魔力と呼ばれるものがオカルトの類ではなく何らかの物質、粒子などであるならば、遠い未来において科学的に証明できる範疇はんちゅうのものかもしれない。


 この世界の住人になり魔力を認識できた理由。それは不明だが、もしかすると、魔力を扱う為の器官が体に備わっている可能性がある。一見して前世の人間と大差無いが、どこまで同じかなんて分かったもんじゃない。むしろ違って当然だと考えるのが自然だ。前世で魔力を使える人間など一人もいなかったのだから。少なくとも僕の周りには。


 その器官が在るとしたら頭の中か……。


 軽い気持ちで頭をいじっては、取り返しが付かなくなるのは間違いない。この仮説を思い付いて以後、脳に魔力を操る器官があるか探ってきた。


 今の僕は佐助さんの指導と日頃の努力のお陰か、魔力を体に流してレントゲンのように診察する技術を身に付けている。先日の喧嘩で脳震盪を起こしたタケを診た技術がこれだ。


 自分の脳を実験台にその構造を調べてはいるが、未だ良く分っていない。先ずは基本的な構造が同じなのかどうか、基礎から知識を積み上げていこうと思う。


 実を言えば、手を加えるべき器官にある程度の目安は付いている。その器官のみに限定して調べれば、思ったより早く結果が得られるかもしれない。


 それと大事な事なのだが、僕が考える脳のバージョンアップには13歳迄というタイムリミットが設けられている可能性が有る。時間制限を考えると焦ってしまうが、冷静さを欠けば自滅するだけだろう。


 万が一にも失敗は許されない。

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