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輪廻の果てへ  作者: 葉和戸 加太
序章 自己の確立
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10 家族会議3 契約とは何か

 そもそも契約とは何なのか。そこから考えてみよう。


 契約を簡単に言い換えると約束である。とても大事な約束なので、内容を明確にするために文書化したり、約束を破った場合に罰則を設けたりする事がある。


 規模が大きいと、社会におよぼす影響により、法律でいろいろと定められている為、複雑に思えるだろうが、契約は原則として自由である。


 自由とは、お互いが自由意思にもとづいて締結するという事である。


 仮に、ここに林檎を持っている男がいるとする。この林檎を100円で売ろうが100万円で売ろうが、購入者が納得さえしていれば問題ない。これが自由意志での売買契約だ。合意は当事者間の問題であり、部外者は黙っとれという話である。


 だが、これが詐欺である場合はどうだろうか。例えば、林檎が腐っていた等のケースである。


 この場合には、販売者がその事実を知り得たのかが問題となる。知りながらその事実を伝えなかった場合、詐欺にあたるかもしれない。しかし、購入者が家畜の餌として購入していた場合は、多少の劣化を問題にしないことも考えられる。


 1個を100円で購入した場合、運が悪かったで終わるかもしれないが、1万個を100万円の取引では、どえらい問題である。


 普段の生活の中では特別に意識をする事はないが、僕たちは様々な契約(約束)をしながら生活をしている。契約の規模が大きくなった時、お互いの認識を確認する為に、契約書を作成したりするのだ。


 この約束が、問題なく果たされるならばそれで良い。


 失敗や反故にされたケースは?


 購入した林檎1万個が運ばれてきたはずが、箱の中身が空であった場合は詐欺である。何らかの制裁が無いと社会生活が成り立たないが、取り締まる事が出来るのは力を持っている者である。


 放置しておくと、社会に悪影響が生じる事柄については、力ある者がその処理を受け持つ。


 原始社会であれば私刑リンチしくは統治者による制裁。法治国家であれば法による裁きだ。誤解を恐れずに言うならば、力こそ全てなのである。その背景には、純粋な暴力(武力)による裏付けがある。どのような集団も、一定の規模以上であれば武力を必要とする。対外的な軍事力だけでなく、治安維持の警察も武力とみなす事が出来るだろう。力は社会の安定に必要なもので、力無き理想主義は悲劇的な結末を迎える事が多い。


 社会がさらに成熟した先に、力が不要となる社会が可能となるかもしれないが、少なくとも転生前の世界では、未だその段階に至ってはいない。少なくとも、僕の認識していた限りでは。


 同じ人間同士でさえ、問題は山積みだ。いわんや、人と神仏をや。


 力関係では話にならない程に相手が格上だ。契約自由の原則は成り立つのか?


 ところで、一見して自由契約だが、実際は不平等な契約がある。それに加えて、自由を許してはならない契約も存在する。それらのものに、政府は法による規制をかけ、社会の安定をはかる。


 建前上は自由だが、実態は自由が許されていないものを規制する、ひとつの例は独占禁止法だ。例えば、林檎の生産を独占し、他の業者がいない場合には、金額は売り手の自由になりやすく、健全な市場とは言い難い。所謂いわゆる、神の見えざる手が働かないのだ。買うのは自由だと言いつつ、選択肢が限られているケースだ。


 これが生活必需品である水の水源であったり、主食となる米であったりすると、より重大な事になると想像が出来るだろう。


 さらに付け加えるなら、労働法だろうか。働いて賃金を貰うという労働契約も、ある程度の規制をかけねば、悲惨な事になるのは歴史が証明している。この場合に力を持っているのは、一般的には事業主(雇用者)である。


 その力とは何かって? そりゃ金・資本でんがな。


 嫌なら何時いつでも辞めてええ。替わりなら、なんぼでもおる。自由でっせ。


 労働者が、得難い技術・能力を持っていた場合に、立場が逆転する事はあるが、通常は雇い主に力がある。それに抵抗する為、労働者には団結して交渉する権利(団体交渉権)や、ストライキ等の権利が認められ、組合という組織で対抗するのだ。政治活動も認められる為、ややこしい所もあるらしい。本来の目的に邁進まいしんして欲しい。


 話がれ始めたのでまとめに入ろう。


 言いたいことは、契約はしっかりした物でないとめ事が起きる。しっかりした物ですら、め事が起こる事はあるのだ。


 神仏との契約において、め事を仲裁してくれるものを、期待することは出来ないだろう。なぜなら、それより上位の存在がいないからだ。

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