いつか
暗然とした場所。
微かな霊香があるのみ。
「これは夢に違いない。」
ここから出るべく、
私はただ歩いた。
独特な怪しげな雰囲気は幾度なく私を立ち止まらせた。
香りが少しづつ自分の意識を蝕むのが解る。
死
一つの単語が浮かび上がる。
気が付けば私は走っていた。
少しづつ光が見えた。
私はさらに速くなった。
光もさらに強くなった。
一瞬だけ目の前が白くなった。
気が付けば海の上。
見上げれば見たこともない鳥が飛んでいる。
大きく翼を広げ、こちらを睨んでいる。
動けない。
怖くなり下を見る。
気配は消えた。
代わりに残響が聞こえる。
遠くから、果てしない所から。
暖かい残響の揺らぎ。
下の海の海藻がリズムに合わせて揺らいでいる。
私の影が二つに割れ、水面に映る。
何処かで見たことのある輪郭。
私は安らぎと懐かしさを感じていた。
金縛りの時間は気が遠くなるほど長かった。
太陽を
蜃気楼を
雲を
鳥を
私は見つけた。
さえずりを
波の音を
残響を
私は聞いた。
その時間はここはどこか考えさせるのに十分だった。
そのうち私はこの世界に来てから寝ていないことに気づき、
目をつぶった。
その後の私を私は知らない。
恥ずかしいです。