6. 夢と現実
遅れて申し訳ないです。
設定の練り直しで時間を使いました……。
気づいたら、彼方がベッドに横たわる私の手をギュッと握って泣いていた。
「かな……た?」
「……っ!? 真帆!! よかった、気づいたのね……?」
「うん。……ごめんね、彼方。心配かけて」
「まほ、真帆ぉ……。よかったよぉ……」
ガバッと抱きついてきた真帆の背中を優しくさする。
「あのね、私夢を見ていたの」
「夢?」
「うん。現実味がないんだけど、なんだか懐かしい、心にぐっとくる不思議な夢」
もう、ほとんど忘れてしまったけれど、ほんの僅か。瞼の裏に焼き付いて離れない、綺麗な景色が思い浮かんでくる。
……そこは静かな森のなか。澄んだ空気に曇りない青空、淀みない清流をつつく小鳥たち。
私はその美しい森のなかを駆け回って……いや、体の重さを感じずまさに飛んでいるかのような不思議な感覚を味わった。
「他にも何かあった気がするけど、わすれちゃった」
「とにかく、何ともなさそうでよかった……。真帆、一時間くらい目を覚まさなかったんだよ?」
「……それでよく救急車を呼ばなかったわね」
「わたし、呼ぶべきだって言ったんだけど、なんか保険の先生は安静にしていれば大丈夫だろうって」
……生徒の命の危機になんと楽観的なのだろうとも思うけど、あの人が言うのであれば大丈夫だったんだろう。現に今は特に何ともないようだし。
きっと彼方も謎の自信に満ち溢れた先生の言うことを信じたに違いない。
「次からはちゃんと先生を説得してね?」
「うん、そうする……。真帆がこのまま一生目を覚まさないのかもしれないって思うと気が気じゃなかった」
「……私も、彼方とお別れしないまま死ななくてよかったよ」
軽い冗談。それなのに、私達の胸にその言葉は無意識ながら重く突き刺さったことに気が付かなかった。