5. 異常
相変わらずというか、真帆はいつになっても真帆だった。
それをわたしは望んでいる訳だけど、やはり真帆には真帆の考えを実現して欲しいわけで。
真帆と一緒に考えなくてはならないことの一つだ。
「かなっちー」
「お、なに?」
「一緒にお昼食べよ?」
「いいよ。……ちょっとまってね」
友人の誘いに乗って、鞄からお弁当を取り出して席を離れる。
学校では真帆の希望もあって基本別行動。わたしは別に一緒でも構わないというか、一緒の方が嬉しいのだけれど、真帆の
『私といつも一緒にいたら彼方の名前に傷がつくから……』
という悲しげな一言でそうすることになった。
……もちろんわたしは全力で嫌だと拒否したものの、珍しく頑なに引かない真帆に
『わかった。……でも、わたしが側にいて、と言ったらかならずそばにいること』
を条件に譲歩した。
さすがにその特権を使いまくっていたら約束の意味がないので、まだ二年近くのうち両手で数えられるくらいしか使っていない。
それも人目につかない朝や放課後のときばかりで、日常的には使わないようにしようとわたしの中で決めていた。
……でも、今日は訳が違っていた。
教室を出ていく際にチラッと真帆の席の方をみると、そこには胸のあたりのブレザーを、大きく皺が浮き出るくらい強く握りしめて軽く前かがみになっている真帆。
その時点でわたしは反射的に真帆に駆け寄っていた。
「まほ、真帆っ!?」
「……っ、く……」
苦しそうな声。
苦痛に歪んだ顔。
「大丈夫? 苦しいの? 返事してっ……!」
「ぁ……ぅっ……」
慌てた手でブレザーのボタンを外そうとするも、手が滑ってなかなか開けられない。
やっと脱がせたと思ったら、ぐらりと脱力して机に突っ伏した。
「まほ、まほぉ!!」
わたしは必死に呼びかけながら軽く肩を揺さぶる。
……返事がない。
「誰かっ! 誰か助けてぇ!!」
わたしは呆然と突っ立っているクラスメイトに呼びかけた。