4. 私という立ち位置
彼方と一緒に登校して、自分の席に座る。
いつも通りの日常も、私というものを見直すようになってから、かけがえのない大切なものだと分かってから、私は一瞬一瞬大切にするようにして来た。
「……真帆、今日も頑張ろうね」
「……うん」
とは言ったものの、やはり彼方以外の人とは関わりたくない。怖い。
彼方はああ言っていたものの、正直今のこのままでいて欲しいと言いたがっているのはひしひしと伝わってくる。独占欲の強い彼方はきっと私が他の人と話すようになるのを好まない。
その期待に応えるわけでもなく、私の自己満足でしかないのだけれど、結果的にお互いが望む形になっているからこのままで良いのかもしれない。
「……邪魔」
「ひっ、ごめんなさい」
私の席の近くでおしゃべりしていたクラスメイトの女の子にどいてもらう。
どう意識しても、胸の奥底で心を縛っている鎖は解けることはなく、変わることはない。
二列ほど離れた位置にある彼方の席をの方をチラリと見やると、こちらに視線を向けている彼方とバッチリ目があった。そして私から逸らす。
「大丈夫だった?」
「如月さんに絡まれるなんて、災難だね〜」
「こ、怖かったよぉ〜」
そんな会話が後方から聞こえてくる。
先程の女の子を励ます声だろうけれど、私に出来るだけ関わってほしくない。むしろ、関わられないようにしなくては。
今はそんなつもりは無くなったのに、無意識に出てきてしまう。
私のクラスでの立ち位置は、言葉を濁すまでもなく腫れ物。
きっと学校で私を知らない人はいないのではないかと思うほど、嫌われても仕方が無い。だって、私の事を知らない人たちに話して同情を買いたいわけじゃない。
私はただ、彼方と一緒に生きていられればそれでいいのだ。
よく私の悪名を利用して見に覚えのない罪を着せてくる輩がいるようだけれど、彼方の尽力と私の家庭事情を知っている一部の先生による対処で問題が解決している。
私はそんな事はどうでもいい。でも彼方が私が悪く言われるのは嫌だから、という理由で護ってくれるので、その言葉に甘えることにしているのだ。
私のせいだ、となったところでいきなり生徒が知らないところで全てが解決するから、噂では私が先生を脅して無かったことにしている。なんてことになっているらしい。
これがまた彼方の心を傷つけることになってしまっているから、どうにかしたいとは思っているけれど、私の中の“私”がそれを許さない。
「こほん。……何か用なの?」
今日も今日とて、同じ事を繰り返していく。