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魔王城250階ユメミロへようこそ  作者: あまあまあま
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5.覚悟と覚悟


 「てめえらはついて来ないのか?」


 ラロッカは語気を強めて言い放った。

 

 ラロッカは先ほど貰い受けた解魔毒シガレットを、胸ポケットから取り出し、

 そして、一本を取り出して口にくわえながら語り始めた。


 「前のを吸ってから、だいたい1週間ほどだな」

 と、言い終わると口内に溜まった煙を吐き出した。

 ハーベストはその光景を見ながらも、何か反応を見せるというわけでもなく、

 相手が言葉を続けるのを待っているようだった。


 「解魔毒シガレット。これが30年前に開発されてから、冒険者は広い世界をさらに自由に探索できるようになった。なぜなら、これを吸ってしまえば、浮遊している魔力を吸い込んでもそれが身体に魔毒として残るのを防いでくれるからだ」


 ハーベストはただ、黙って聞いていた。


 「俺達も魔王城に入る際には、30から40ダースほど持ち込んだ。当たり前の事だろ?魔王城には魔力が充満しているんだからな。」


 「ハーベスト、こいつを自家製と言っていたが満足に作れているのか?」

 「・・・・・・運がいい時でも週に1本が限度ですかね」




 「だったら分かっているよな?お前らはここで死ぬ運命だ」


 ラロッカはハーベスト達が魔王城で商売をしていると聞いた時から、

 ずっと抱いていた言葉を吐き出した。


 「一人より二人、二人より三人。当たり前だが、人数が多いほうが魔王を殺せる確率が高くなるぜ」


 「俺が一人で行こうとしたのは、お前らが信用できる奴らかまだ測り切れていなかったからだ。だが、ほんのちょっとの時間だったがお前らとは気が合うと思った。少なくとも魔王殺しの仲間としてだな。」


 「・・・ええ、私達にはユメミロで手助けをしているのが身の丈に合っていますから」

 「どっちにしたって魔毒の影響で長く生きられないのは知っているだろ。お前もあの子だって・・・」

 「死にませんよ」

 「根拠を言ってみろよ。現実から逃れようとしてんじゃねえ」


 すると、ハーベストは天を見上げるように暗黒の空を見つめた。

 少しの間をおいて再びラロッカと向かい合った。

 そして、


 「私のことではありません、リーナは死なないのです」

 「・・・それってどういう」

 「リーナは人ではないのかもしれません」


 ラロッカはハーベストの言っている意味が分からなかった。

 なぜそんなことを言えるのか、根拠は何なのか、困惑したままだった。


 ハーベストはその心の機微を読み取ったのか、

 ゆっくりと語り始めた。


 私もよくは知りません。

 彼女と出会ったのは今から2年前ぐらいでしょうか、

 私が魔王城討伐メンバーに入って数週間ほど経った頃でした。


 酒場で集まって魔王城攻略に向けて議論を続けていると、

 突然ある一人の男が小さな女の子を連れてきて、

 メンバーに入りたいと言ってきたのです。


 男はレスターと名乗り、この女の子はリーナだと紹介しました。

 自分は剣士で、この子はネクロマンサーの見習いだ。

 絶対に役に立てると言ってきたのです。


 最初はメンバーも断りました。

 彼らの実力を見てみたのですが、

 男のほうはともかく、女の子は基礎魔法ですら使うことが難しかったからです。


 私もその時の彼女の眼を見ましたが、戦い慣れているという感じではなかったのです。

 どちらかというと、状況を知らされずに連れてこられたといったほうが適切だと思いました。


 ただ、どうしてもその男が引き下がらないので、

 その後、討伐メンバーのリーダーと二人で話し合うという事でその場は収まりました。


 一晩経つと、事態は急変しました。

 リーダーが二人ともメンバーに入れると言い出しました。


 もちろん急な決断にメンバー内でも異論を唱える人もいましたが、

 リーダーが一言だけ言ったのです。


 あの子は凄え、魔毒に侵されなかった。


 その言葉が真実かどうかは、メンバー達は知ることもできませんでしたし、、

 リーダーも詳しいことは何も言いませんでした。




 「その後はなんやかんやあってここまで来たって感じですね」

 「急に雑になったな」

 「重点は話したつもりですよ」


 「どういう訳かは私にも分かりません。彼女に聞いても何も答えませんから。

 ただ、彼女は魔毒の影響を受けない、これだけは確かな事です。」


 


 色々聞き出したいことは他にもあった。

 その男は何なのか、実験とは何か、

 力のない女の子がどうやってここまで来られたのか。


 だが、口を開くと思考とは全く違う質問をしていた。


 「お前はそのためにここに残っているのか?彼女、リーナを一人にしないために」


 「そう・・・ですかね」


 「彼女が生きていられるのなら、こんな場所でも死にに行く必要なんてありません。

 一人でも、一人だけでも、彼女がこの場所で生き続けられるのなら私は満足です」


 そう言いながら、ハーベストは再び天井の虚空とも思える闇を見つめていた。

 ラロッカはその表情を見ると、何も言い出せなくなった。


 数分経ったのだろうか、二人とも口を開かずにただそこにいた。


 「何か、重い話をしてしまいましたね」と、ハーベストは恥ずかしそうに頭を掻いた。

 「これから死にに行く人間にとっちゃ、軽い話だ」と、ラロッカも鼻頭を掻きながら言った


 「お前の気持ちは分かった。俺一人で先に行ってくる」

 「本当に申し訳ないです」と、ハーベストは頭を下げた。

 

 「じゃあな・・・っとその前にリーナにも挨拶をさせてくれないか?」

 「ええもちろん」


 ハーベストがリーナを呼びに行くと、表側からリーナが出てきた。

 相変わらず、興味がなさそうな顔をしていた。


 「じゃあ、ラロッカさん、頑張ってね」と、先ほどまでと同じようなトーンで言った。

 「ああ、リーナも頑張れよ」と言ってリーナと握手を交わした。子供らしい温かい手だった。

 「ハーベストお前もな」

 「もちろん、ラロッカさんも」と言ってハーベストとも握手を交わした。

 

 「じゃあなお二人さん」と言って、魔法陣へ通ずるドアに手をかけた。その時、


 「ラロッカ」

 後ろから男の声、ハーベストの声が聞こえた。ドアを開くのは止めたが、振り返ることはしなかった。


 「無責任な事を言う」

 「頼む、魔王を殺してくれ」


 やつの声を背中で聞いた。その声はどこか、自分のやっていることを悔いているようにも聞こえた。

 だから、俺の言葉は一つしかなかった。


 「もちろんだ、ハーベスト」


 その言葉を伝えて、ラロッカはドアを開け、魔法陣に入っていった。

 ただの一度も振り返ることはしなかった。


 「行っちゃったね」

 「そうですね」


 二人はしばらくその場から動くことが出来なかった。

 ただ煌々と光り続けている魔法陣を見続けていた。


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