1話 勇者誕生? 上
なー
「えー、では我々、聖☆転職協会リクナヴィの出張転職受付を開始しまーす。ご希望の方は2列に並んでお待ち下さ〜い。」
村人一同「はーい」
村人達がわさわさと2列に並び始める。
最前列の村人は早速、転職の手続きが始まったようだ。
列に並ぶ村人は、1年に1度の待ちに待った転職の機会を
今か今かと期待に胸を膨らませているようだ。
ここは世界の東、山に囲まれたド田舎にあるミギヤ村。
果実と笹かまの生産が盛んである事以外には、何も特徴のない平凡な村だ。
3年前に突如現れた魔王ーヨシダーの操るモンスターにより、世界は混乱を極めているが
この村への影響はない。田舎だから。
モンスターに関しても、時々道端にスラァイムが現れる事があるが
生命まで奪われる事は無い。
いたって平和である。
そんな田舎のど真ん中、そこそこ広い木造ボロ公民館
で
いよいよ転職の手続きが始まろうという所だ。
村人A「お、マサカズじゃねぇか!お前も転職か?」
マサカズ「そだよー!やっと農民から卒業出来そうだわー」
この冴えない顔の男の名は、ササキ マサカズ。
齢は26歳。つい先日、一般農民職をマスターしたので
これを機にスーパー農民への転職を決意しここにやって来たのだった。。(ナレーション)
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村人B「じゃあこれでお前もスーパー農民へ転職か!おめでとう!マサカズ!」
村人A「童貞より先に一般農民卒業だな!おめでとう!マサカズ!」
マサカズ「……ありがとう!(ツバをぺっ)」
この世界では、ある儀式(手続き)をしなければ転職する事ができない。
転職の聖地である神殿-ダダーマ-より遣わされた、宗教団体-リクナヴィ-の使者による儀式にて転職が行われる。
ダダーマ神殿からメチャクソ遠い村や町は、こういった出張転職サービスを利用するパターンが多い。
ミギヤ村もその1つだ。
俺はこの時を、、転職する日をずっと待っていた、、
笹かまを畑で大量に栽培する毎日。
遊ぶ時間もなく、ただひたすら農業に時間を費やし
精魂込めて笹かまを作っていた。
※笹かまは畑で獲れます
そんな大事な笹かまでも、悲しい程に安く買い叩かれる。
一般農民職の俺は、農業協会【自衛英】の担当者に
「一般農民職なんだぁwじゃあ10kgで1500円で買い取ろうかな(にちゃあ)」
とクソみたいな価格で卸す事を強いられ
当然、貧乏で暇なし。
童貞街道を全力疾走していた。
リクナヴィ職員「では、次の方ー」
マサカズは、はいと小さく返事をして、用意されたイスに腰掛ける。
机の対面には、白を基調としたシスター姿の黒縁メガネの受付嬢。
清楚と真面目を足して2で割ったような、黒髪パッツンの小柄な見た目だが
唇はピンクで女性らしさも感じられる。
彼女は転職に必要な書類を準備しながらマサカズに質問を始めた。
リクナヴィ職員「はい、では名前と年齢を教えて下さーい」
「名前はササキ マサカズです。26歳です。」
リクナヴィ職員「はい、今調べますね。ちょっとお待ち下さい。」
メガネ女子はガサゴソと大量の資料ファイルを漁り、そこから1枚の紙を取り出した。
分厚い資料から手慣れた手つき、そしてその発見スピードはお見事である。
資料に目を通し始めて2秒、彼女は驚いた顔で見せた。
リクナヴィ職員「…あ、あなたはのステータスはすごいです…!!
前回の転職からすこぶるステータスが上がってます!
これは勇者の素質がありますねー!」
先程まで涼しく清楚な顔をしていたシスターが、松岡ジューゾー並みの熱量を持って私に語りかけてきた。
ちなみに松岡ジューゾーは、どの世界にもいる熱いだけが取り柄の有名人である。
「な、なんだってーー!?…
…とでも言うと思ってるんですか?w
それ前回も言われましたし、近所のデブも同じ事言われたって聞きましたよ」
マサカズは苦笑いを浮かべながら返答。
しばしの沈黙。
その後、何事もなかったかなようにシスターは話し始めた。
リクナヴィ職員「はい、ではササキさん。
あなたは何の職業を希望されますかー?」
「あ、今の話のくだりはスルーなんですね。
そんなに勇者は見つからないんですか?」
リクナヴィ職業「…そうですねー。手続きさえすれば誰でも勇者!戦闘ステータスも一気に上がって、おまけに女性にモテモテなのに…
なんで誰もならないんですかねー」
「…あ、いやその…そ、そうですねぇ」
マサカズは苦笑いで適当な相槌をうった。
そりゃ勇者になんてなるわけが無い。
確かに一瞬の手続きで勇者になれば、みんなのヒーロー、モテモテロード真っしぐらだが
現実は厳しい。
勇者誕生→魔王がそれを察知して探索開始→割とすぐ見つかる→瞬殺
ま、こんな流れですぐ死んじゃうのが勇者だ。
去年の夏に、若気の至りで勇者になったDQN太郎さんは例外なく瞬殺された。
悲しむべき勇者の死なのだが、ほくそ笑んだ童貞は多かったと言われている。
リクナヴィ職員「あーあ、そろそろ勇者見つけないとアタシ首になっちゃいますよー。
あー、困った困ったー!アハハー」
こいつ全然緊張感ねーなとマサカズは思ったが、これ以上話をしてもしょーもないと思い
自分の転職の話に戻した。
「ーで、転職の話なんですが…」
シスターはハッと我に帰り、冷静な表情と共に事務的な会話を始める。
リクナヴィ職員「はい、ではササキさん。
この資料によると、つい先日に一般農民の職をマスターされたとの事。
それで転職を希望されると言う事でお間違いありませんか?」
「はい、間違いありません。」
リクナヴィ職員「かしこまりました。では勇者に転職すると言う事でよろしいですね?」
「……」
リクナヴィ職員「ニッコリ」
「よろしくねーわ!このアホンダラーーー!!」
後半に続く。
る