1 裏切り
「・・・・・こんなことがあるか。夢、夢じゃないのか。だって、こんなことがあるはずないじゃないか。まだ魔王は死んでないんだ。これは、幻覚なんだ」
乾いた笑いに涙が俺の頬を伝う。今まで仲間だと思っていたやつらがニコニコ笑いながら俺に向って武器を向けてくる。
「ごめんね。幻覚じゃないんだよ。ソーマ。これでさよならだよ」
パーティーの回復役でひそかに恋心を抱いていた『レイラ』その彼女が俺に毒矢を打ってくる。いつの間にか毒を盛られたのか、全身が麻痺して思うように動けない。弓矢をかろうじてよけれたが体制を崩し転倒してしまった。
「うそだ。だって、一緒に今まで旅してきたじゃないか、命を懸けて魔王を倒したじゃないか、こんな、こんなのなんて夢だ、夢に決まってる」
地面に這いつくばりながら、今まで仲間だと思っていたやつらに話しかけた
「夢なんかじゃねーよ。現実を見ろ。お前はここで死ぬんだ。馬鹿なやつだよお前は、騙されてるとも知らないで必死に魔族と戦ってたんだからよ。死ね」
パーティーで一番仲の良かった剣士の『ケイト』が俺の腹に剣を刺す。何でこんな目に・・・
「理由を聞かせてくれ。なんでこんなことするんだよ」
「ばか、そんなの教えるわけねーだろ。ははは。早く死ねよ」
剣がさらに奥まで差し込まれる。グッゥゥ、全身にものすごい電撃のような感覚が走る。苦しむ俺をみてさらに笑顔が深くなるケイト。
「まあまあ、ケイト。いいではありませんか、ここまで働いてくれたのです。そのくらい教えてあげましょう。そーれ」
このパーティのまとめ役で賢者の『セバス』がケイトの剣を力いっぱい差し込み俺の腹を貫通させた後、話し始める。
「貴方様は強すぎるのです。魔王さえも倒すほどのお力がある。はっきり言えばもう、我々にとって貴方は様は邪魔なのです。国民はあなたを歓迎するでしょう。もしかすれば民衆に担がれ建国をするかもしれません。敵国となった国でさえ国民はあなたを支持するやもしれません。王たちはあなたならば世界を征服できると考えています。だから、私たちに命令なされた、魔王を倒した後は貴方様だと。貴方様は邪魔なのです。もう、使命は終わったのです。ここで永遠の眠りについてください」
国をつくるかもしれない。征服するかもしれない。邪魔になるかもしれない。そんな、『かもしれない』で俺は死ぬのか。ここまで一緒に戦ってきた仲間たちに裏切られて
「この化け物、早く死になさいよ」
俺の顔を踏みつける、今まで好きだった女性。魔王を倒し国に戻ったら告白しようとしていた人が俺を殺そうとしている。人を見る目がないっていうのはまさしく俺みたいなやつのことをいうんだろうな。
「そうだ死ね、この、いつもすました顔が気に入らなかったんだ。気持ちイー。お前みたいなやつが勇者扱いされて俺たちはおまけみたいな扱いだったけど勇者なんてなんなくて正解だったな。ハハハ」
ここで死ぬのか。いやだな・・・・・・・・・・・・・
違う、ここで死ぬのが嫌なんじゃない。こんな、死に方が嫌なんだ。
「いやだよ。冗談なんだろ。なぁ、そういってくれよ・・・・・たのむよ・・・・」
「ばーか。今更、なにいってんだ。」
「きも、まだ生きてんたんだ。もういいから、ケイト早くやっちゃってよ」
「そらよ」
「グフッ。う、うあぁーーーーーーー」
憎い、憎い、憎い。目の前のこいつらが、王たちが、俺の努力を犠牲を知らないでのうのうと生きる人間が、戦争を始めた魔族が、全てだ、全てが憎い。
薄れゆく意識の中、何度も何度もそう思った。俺にもっと力があれば、全てを凌駕できるだけの力がほしい。すべてをぶっ潰せる力がほしい
「力がほしいのか?」
どこから聞こえるのかわからない声、それでも俺は必死に願った
「力がほしい」
誰にも負けないすべてを壊せる力が
「ならばくれてやろう」
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久々に小説書きました。
どこまで続くかわかりませんがよろしくお願いします。