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自己紹介

「ゴーンゴーン」


遠くで鐘の音が聞こえる。聞くなり教室に居た生徒達が席につき始めた。どうしたのかとラゴを見ると


「ホラ、ロッカ」


ラゴは自分の手を引っ張り近くの空いている机に座らすや掴んでいた手を急に離すと、何故かラゴは自分の手を見詰めて微妙な顔をしていた、何か言いたそうだったが結局何も言わなかった。エンデとモモも習う様にラゴの横に座り、しばらくすると一人の男性が教室に入って来た。何者かとラゴに聞くと


「このクラスの先生、私達はこの先生に色々教えて貰うんだよ。確か名前を…何て言ったけか?」


「ごほん!皆さんこんにちは。私はオッペンハイマーと言う者です。今日からこのクラスを受け持つ者です。ラゴ君次からは忘れないで下さいね?」


どうやら自分達の声が聞こえていたようでラゴは慌てて「スイマセンでした」とクラスからは笑い声がした。オッペンハイマーは生徒達を見渡し


「まぁそうですね、お互い顔を知ってる人と知らない人がいますので、今日はこの場を借りまして自己紹介をしてもらいます、いいですね?それではどうぞ?」


すると生徒達からはブーイングが


「何故ですか?先生俺達はあらかたの名前は知ってます!だよな皆!」


すると生徒達が「そうだ」と騒ぎ立て始めた。どうやら自分が知らないだけで生徒達は全員顔見知りのようだ…またここでも、そうなのか…自分だけ異質な存在…。手を握り締めて自分とゆう存在を殺そうと身を縮めていると、ラゴ達が何か言いたそうに自分を見ている。生徒達は収まる様子もなく大声で


「まさか!俺達が知らない、どっかの田舎者が居るのか?なあ!」


明らかに自分の事を言っているのだろう…どうしょう…このままではラゴ達の横に座っていると、迷惑をかけてしまう…そっと人が座って居ない方へづれると!「ガッ」とラゴに腕を掴まれた、ビクッとラゴを見ると真剣な顔で首を振り、後ろに居るエンデとモモも「大丈夫」と笑ってる。でもと思ったが内心とても嬉しかった。もしかするとここで自分の居場所が見つかるかもしれないと…すると「ガタリ」と一人の生徒が立ち


「セレス=ヴェローナ」


ざわついていた教室がピタリと静寂に包まれ、次の瞬間えも知れぬ悲鳴が響き渡った。さっきまでの自分への嫌味は消え、今じゃセレスの事で大騒ぎだ。収拾がつかずオッペンハイマーが仕方無く


「ハイ!皆さん一旦落ち着いて!落ち着きなさい!いいですか?」


オッペンハイマーが立ち一喝すると、どうにか生徒達が落ち着きを見せたが、でも皆の視線はセレスに向いていた。なのに当の本人は我関せずとセレスは黙っている。オッペンハイマーはヤレヤレと


「ほら、次は誰ですか?時間が来てしまいますよ?」


するとセレスを凝視していたシンクが立ち宣言するように


「では!オレだな!オレの名はシンク=バルカンだヨロシク」


シンクの自己紹介が終わると次々と生徒達が自己紹介をした、オッペンハイマーは満足そうに椅子に座り頷いている。順序よく進んでいたが一人の生徒が立ち自己紹介をしていたが恥ずかしいのか、声が小さくよく聞き取れずにいると案の定に


「オイ!何言ってるのか全然聞こえないんだけど?まぁ?お前みたいな存在が何言ってもしょうがないかー!」


スノッブが大声で言うと腰ぎんちゃく達が大笑いで囃し立て、言われた生徒は顔を真っ赤にして早口で


「あの…お、終わりです」


と座ってしまった、教室の生徒達はシーンと黙ってしまった、オッペンハイマーは何か言うでもなく


「次の人…」


と次の生徒は焦った様に早口で名前を言うとさっと座ってしまう、隣のラゴがため息をつき


「また、アイツ等か…これから先が思いやられるよ…まったく」


「ラゴ?」


「うん…ああ。見て分かると思うけど。アイツ等は自分が偉いと勘違いしてるんだよ…このクラスにヴェローナ家とバルカン家がいなければ最悪な事になってたな…」


うんうんとエンデとモモが頷いている。3人が興奮気味に


「さっきヴェローナ様喋ったよな?」


聞くと、ラゴは


「ああ、でも別に口が聞けない訳じゃないから喋らない訳じゃない…でも声を聞いたのは初めてだよ…」


「オレも!…凄い声だな…ゾッとしたぜ!ほら鳥肌が!」


エンデが袖を捲り見せて来たモモも


「凄い!喋れたんだね彼」


とヒソヒソと喋っていると、


「次…そこの君だよ?」


呼ばれた。いつの間にか自分の番になっていた。慌てて椅子から立ちあがり生徒達を見渡した、ラゴ達は心配そうにしている


「あの、私はロッカ=ラティラです。よろしくお願いします。」


ペコリと頭を下げ挨拶をすると、案の定スノッブ達がニヤニヤと


「何か匂うよなー何の臭いだ?」


「スノッブさん!きっとあっちから匂うんだと思います!」


「えー!マジか!田舎者くせーな!オイ!お前ちゃんと風呂入ってるのかー?」


「こいつ!きっと入ってないですよ!だって貧乏人の家って風呂無いって聞きましたよオレ」


教室から失笑が、どうやら他の生徒達も知っている様だ、確かに庶民の家には風呂は無い皆共同浴場だ身分が高い家の者の家じゃ無いと風呂は無い。富の象徴なものだから…現に自分は風呂にも行けずにいた身だ庶民よりも下だ…だからいつも川で軽く体を拭く程度だ…真冬でもそうだった。養子になってようやく温かい湯と言うものを知った。何も言えずに黙っているのをいい事にスノッブ達は調子に乗った。


「ええ!そんな卑しい身分のやつと一緒は嫌だが、オレは貴族だ!多少汚くて臭くても我慢してやるよ!」


「流石です!スノッブさんは貴族の鑑ですね!」


「器が違いますね!オイお前スノッブさんに感謝しろよ!」


意味不明な強要をしてきた、それにラゴが


「いい加減にしろよ!ロッカはきちんと適正検査に合格して入ったんだ!君達にとやかく言われる筋合いは無い!」


言い返すと、スノッブ達は


「貴族のオレに文句を言うのか!」


いきり立った。エンデもモモも一緒に同調し、双方睨み合いを止めたのは、あの声だった。


「やめろ。」


皆がセレスを見ている。スノッブは青い顔で


「あの…申し訳ございません!お見苦しい所を…お見せしてしまい…」


セレスに言い訳を必死にしている、どうやら本当にヴェローナ家は格上らしい。現に腰ぎんちゃく達も下を向き黙っている。セレスはラゴ達にも視線を移すとラゴ達も固まってしまっていた。ラゴもスノッブもそれ以上言わず座った。教室が静寂に包まれたのをオッペンハイマーは面白そうに手を叩き


「まだ自己紹介はおわっていませんよーホラ次の人!」


と残っていた生徒達が次々と自己紹介をした、あの騒ぎの後だ皆手早く自己紹介をした。ようやく全員終わると


「うん!全員終わりましたね!皆それぞれ人となりが分かりましたね?それではこのクラスのリーダーを決めて下さい」


それが今日の本題だったようで、オッペンハイマーはニコニコと教室を見渡している、生徒達は全員一点を…セレスを見ている。


「そうですか…分かりました。ヴェローナ君!リーダーをやってもらえるかな?」


セレスは何故か自分を見た。そしてオッペンハイマーに頷き決まった。今のは何だったのだろうか…分かるのは、これが始まって一時間半ぐらいしか経って無いとゆうことだ…何だこの疲労感は?ラゴ達もグッタリと疲れた顔だ。そんな中マイペースなオッペンハイマーは


「良かったですねー!決まって、それじゃ今日はここまで!もう皆さん帰って貰って結構ですよ!お疲れ様です」


言って教室から出ていってしまった、教室に居た生徒達も帰り支度しゾロゾロと出ていった、ラゴが


「これだけなのか?テッキリ何かあるのかと思ったら…」


「何も無いようだね…」


モモが苦笑しエンデが


「何だったんだよ…」


皆疲れた顔で帰って行った。エンデとモモに


「また、明日」


と挨拶をし自分も帰ろうと、ラゴと教室の出口に、そこにはスノッブ達が睨むように待っていた


「いい気になるなよ!さっさとここから出ていけ!お前みたいなのが居る所では無い!」


「そうだ!田舎者」


…本当に何処にでも、こうゆう人間は居るのだなと感心してしまった。黙っていると気に障ったのか「ドン」と押され先に出て行った。ラゴは慌てた様に


「ロッカ大丈夫か!」


頷き


「ああ、大丈夫慣れてるから」


何とも言えない顔で


「こんな事に慣れるなよ、ほら手!」


差し出された手を掴み


「有り難うラゴ」


「別に…対した事じゃ。あのな…ロッカ私達じゃ心許ないかもしれないけど…もし何か出来る事があるなら…何でも相談してくれよな?」


ラゴの言葉に頷いた。自分を嫌う人間がいる中で少数だけど自分を認めてくれる人が居てくれる、それだけで自分は嬉しかった。


「心配してくれて有り難う。でも大丈夫だ」


こんな所でくじけていては、ここまでしてくれたジジとメイトに恩返しなんて出来やしない!頑張らなければと拳を握りしめ


「ラゴ、また明日」


「ああ、気を付けて」


ラゴに手を振り寮へ、その様子をジッとセレスが見ていたが気付かなかった。セレスの様子をシンクが腕を組み見ていた。


「…どう言う事だ…?」


ボソリと呟いた。

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