表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

適性検査

ドアをノックする音にハッと我に返り、小さな声で


「…はい?」


かチャリとドアが開き、顔を覗かせたのは、この寮を管理している女性だ、確か名前をミーアと言っていた。ミーアは不機嫌そうに


「嫌だ、まだ居たの?早く行きなさいよ!じゃないと私の管理不足疑われるじゃないのよ」


言うなりバタンとドアを閉めた、慌てて着替え準備をし寮を出て学校へ行こうとすると、ミーアが聞こえるように


「ああ、面倒臭い!今までここを使うような貧乏な人が居なくて良かったのに!しばらくは居るなんて!たまったもんじゃないわ!」


背中に罵声を聞きながら、どうやらここでも私は蔑みの対象だ、そんなのは最初から分かっていた事だ自分が望まれていない事ぐらい…


「すいません」


後ろでは、まだ何か言っているけど聞こえない聞きたく無い、私だってこんな所になんて来たくは無かった…でもジジとメイトが言うから…私はあの人達の元で恩返しが出来ればそれで良かったのに、でも二人が適性検査が今度行われるから行きなさいと言われ今に至っている、思わずため息が出た。ジジとメイトにこんなに良くして貰っていつのだから多少の面倒は我慢しないと…。そうしてついに適性検査の日がやって来た。ジジとメイトに送り出され渋々案内された所に行くと同世代ぐらいの子供達が大勢固まっていた、こんなに人が居たんだなと男も女もいた皆緊張した様子で待って居た、どうやらこの子等はこの適性検査を待ち望んでいたようで、一様に嬉しそうだ。


「お前どんな力持ってるんだ?」


「おれは…」


とそれぞれが自分の力について喋っている、私もそこに行くと、ちょうど試験官らしい人がやって来て、そこにいる人達の名前と年齢やらを記入している。私も聞かれ答えると試験官は頷き、「よし、これで最後だな」と他の試験官に言った。そして私達を大きな建物の前に並べていると、一人の男がやって来た、その男は今までの試験官とは雰囲気が違った。明らかに立場のある人間だ、男は私達を見渡し


「皆さん、私はここの責任を任されているデリアと言います。今日皆さんには適性検査を受けていただきます、もし適性があった場合は検査が終わった後に、別室にて説明させていただきます、そして適性が無いと分かった時点でお帰りになって貰います、宜しいですね?それでは始めたいと思いますが、何か質問がある方はいますか?無い様でしたらこのまま始めさせて貰います」


その言葉に、試験官達が大声で


「えーこれより試験を始めます、名前を呼ばれたら一人ずつ部屋に入ってください」


建物にはドアが4つあり、受ける人は名前を呼ばれ入って行く、しばらくすると中から悲鳴やら大きな爆発音がする、並んでいる人達から


「今の何?中で何が起こってるんだよ!」


「いや…怖い!」


所々で不安げな声が上がっていた、私は皆が言う様な感情が分から無いその様子を見ていると、前の列の人がだんだん少なくなってきた、その恐怖に耐えきれ無くなった人が走って逃げてしまった、それを試験官達が見逃す訳も無く捕まり強制的に中に入れられてしまった、そして案の定中から悲鳴が聞こえる、そうして遂に私の番が来た。こんな事は早く終らせて、さっさと帰ろうとドアを開け中に入った。一歩中に入ると真っ暗で何も見えない、取り合えず奥に進むと声が聞こえた。


「名前を」


「…ロッカ」


「分かりました。それではロッカ今から君の力を見せて下さい」


「私にはそんな力はありません、だからもう帰っても良いですか?」


「ふむ、成る程。でもそれを信じる事は出来ません。それではパターンCでいきます、ロッカ今から君に攻撃を加えます、君はそれを、かわすなり避けて下さい良いですね?」


「……分かりました」


「あとこの攻撃は当たると気を失う事があります、くれぐれも気を付けて下さい…それでは始めます」


外で聴こえていた爆発音はそれだったのかと納得した、この暗闇の中いくら目を凝らしても一行に何も見えない。次の瞬間凄い衝撃音がした。どうやら今のは、私に衝撃の威力を教える為なのだろう…次は当てて来ると身構えていると「ドン」と脇を抜けた、その衝撃でよろけてしまった。バクバクと心臓が凄い音を立てている、汗も吹き出して今まで生きて来た中で一番の恐怖があった、決して顔には出ないが手も震えて止まらない。もう次はきっと無い…そう思った瞬間背中にモロに当ってしまった、衝撃で息が出来ない。


「がハッ!ゴホッゴホッ…ハァハァ!」


立ち上がれない、あまりの恐怖に体を丸めて痛みに耐えていた。頭によぎったには、このままでは死んでまうんじゃ…!嫌だ!こんな所で死ぬなんて、脳裏にジジとメイトの顔がよぎった、二人にまだ何も恩返しをしていない!そんなのはダメ、必死に体を引きずるように前に前に…一体どこから攻撃が来るの?必死に目を凝らし、そうしているとようやく目が慣れてきた、壁に無数の穴が開いてあった、これがそうなのかと、次の瞬間小さな音がした……どうやら攻撃が来る時に穴から音が聞こえるようだ、すると後ろから小さが音がすると、痛む体を横に転がし避ける事が出来た。やった!これで上手くいけば逃げれる!と思った瞬間、四方から攻撃が放たれた。足に腕に次々に無数の攻撃が当たった、そして体が吹き飛ばされ床に叩きつけられたのが最後の記憶だった、薄れゆく意識の中で声が聞こえた。


『大丈夫だよ』


誰?ジジ?それともメイト?それが最後の記憶だ。どうやら気を失ったようだ。


一人の男が暗い部屋でモニターを見ている、男はロッカがいる部屋を見ながら、ポツリと


「適性無しか」


手元の書類に目をやり、部屋の外で待機している試験官に倒れたロッカを医務室に頼もうと、モニターを見ると、倒れたはずの六花が立っている、ガタリと椅子から立ち得体のしれない寒気が全身を走った、普通の適性の無い人間が、あれだけの攻撃を受けて…立ってなどいられる筈がない、


「何で、立っている…」


恐る恐るボタンに手を伸ばし押すと、今まで見ていたロッカの動きでは無い俊敏さで避けた。ゴクリと唾を飲み込み、さっきの様に四方から攻撃をすると、それも全て避けてしまう、ロッカは体を揺らしながらでも何故か顔は下を向いたままだ、恐怖でボタンを押していると、ロッカがユックリ顔を上げた。まるで最初からモニターの場所を知っているかのように…今まで誰にも気付かれる事は無かったのに、ジッとモニターを見ているとロッカと目があった。思わず後ずさってしまい、しりもちをついて必至に目の前のボタンを連打した、何度も何度も…もう起きて来ないようにと…

デリアは他の試験官から、隣の部屋から異常な警報音がすると連絡があり、複数引き連れて向かった。ドアをこじ開け中に入ると、酷い警報音がしているのに試験官はそれに気がついていない、それでころか必死にボタンを押している、その目は焦点が合っていなかった、


「何している!奴を止めろ!」


試験官達が男を掴み引き剥がしたが、それでも男は必死にボタンを押そうとしている、試験官の一人がモニターを確認にして


「大変です!試験室の記録に…人が出た記録がありません…まだ中にいるようなんですがデリア様…」


「何だと!大丈夫なのか!」


「分かりせまん、部屋の状況が…せめて煙が晴れれば分かるんですが…ですが、これほど攻撃を受けた人が…生きているとは、到底思いません…これが実践者ならしも…」


デリアは、カッとさっきからボタンを押していた男の胸ぐらをつかみ殴り


「お前は一体何をやった!殺す気か!」


「落ち着いて下さいデリア様!」


殴られた男は、笑いながら


「アハハハハハ。悪魔だ…あれは」


ブツブツと意味が分からない事を言ってる、


「オイ、こいつを連れて行け!」


そう言うと、他の試験官達に男は引き連られて行った。あと残っていた者達に


「今居る者で、部屋に居る者を救助しろ!」


「ハイ」と試験官達が部屋に向かった、もうダメかもしれないがと思いながら、しばらくすると通信が入った


「どんな様子だ?」


「それが…外からの救助は少しかかりそうです…」


「どうしてだ?」


「どうやら外から開くはずの扉のセンサーが中から壊されいるようで…」


デリアは、机に拳を下ろし激高した


「失態だ、適性検査始まって以来の失態だ!」


モニターを見ていた試験官が焦った様子でデリアに


「デリア様!これを見て下さい!人が…」


試験官の声が震えている、デリアはモニターを見て愕然とした、部屋の煙が晴れてようやく部屋の中が見えた。人が立っていた、そいつは何故か下を向き様子がおかしい


「どうゆう事だ…これは…」


デリアの言葉に、一同首を振り


「分かりません…こんな事が…」


皆モニターから目が離せずいた、部屋の中で立って居た人物が崩れるように倒れた、丁度良く外から救助の人が入って来て、倒れている人物に駆け寄った、通信が入り


「デリア様!見つけました!意識はありませんが怪我とかは、見受けられません。このまま搬送します、良ろしいですね?」


今見たものに、狼狽えながらも


「あ、ああよろしく頼む」


あれは一体何だったのか…皆一様に今見た物が信じられ無かった。


目が覚めると、知らない場所に居た。体を起こすと、ズキズキと体の至る所が痛い…何で?と思っていると、思い出した…そうだ、確か適性検査で気を失ったんだっけ、試験はあの様子だと落ちたな良かったと、そうしてふと


「皆あれを、避けているのか凄いな…」


言うなり、誰かが吹き出した、ビックリした部屋の中に人が居たんだなと、何処かで見た顔だ、確か


「やあ、体は大丈夫かな?」


そうだ、試験の始めに挨拶した人だ、確かデリアとか言ってた、デリアは真剣な顔で頭を下げ


「申し訳無かった。」


意味が分からず、キョトンとしているとデリアはボソリと独り言を


「普通だな…」


何が普通なのだとうと思っていたが、早く帰りたかったせいもあり、そこで止めた


「あの、もう大丈夫なんで、私これで失礼します」


挨拶もソコソコで帰ろうと、ベットから降りようとすると、デリアは


「おっと、待ってくれ」


一体何かと、まだ何かあったのかと


「もう試験落ちましたし、ここに居る意味が無いので帰りたいんですが?」


その言葉にデリアは


「イヤ、君には適性が見られたので合格だ。」


「え!でも」


いくら考えても、合格したと到底思えない…どうゆう事とデリアを見たが、デリアは淡々と


「君には、これから学校に通ってもらう、これは決定事項だ拒否は許されない。この事を胸に止めて聞きなさい」


今後の事全てを決められて、色々な書類を持たされ家に着くと、ジジとメイトが心配そうに外で待っていた、合格したと言うと二人はビックリしていたが、とても喜んでくれた、それはそれで良かったが問題があった、学校とやらは都会で、こんな田舎だと通うのは無理と、学校の寮へとなった。ジジは仕方無いと言っていたが、メイトは嫌がった私が離れるのを嫌がった、私はそれが嬉しかった。自分を必要としてくれている…もうそれだけでいいかと学校へ入ったが、ここでも両親と同じ扱いにジジとメイトが懐かしい。

とぼとぼと学校へ行く道すがら、色々考えていせいもあり道に迷ってしまった…この学校はやたら広い、寮も学校の敷地にあるから、そのうち歩いていれば着くだろうと、するとそれらしい建物がありはしたが…


「何これ?」


何故なんだろう、上に行く階段やら下に行く通路があり、そのまま真っ直ぐの道もある…こんなに必要なんだろうか?どうする…見渡しても人は居ない。すると水音する、何処から?音に導かれるように下に行く通路に、歩いて行くと部屋があった。こんな所に水音?とドアを開けると、大きな噴水があった。大きいだけは無く、キレイな彫刻が施された立派なものだ、ジジの屋敷にも噴水はあったがこれ程じゃない。フラフラと近付き手で触れようとした時、噴水の反対側に人が居たる…思わず後ずさると反対側の人がユックリと姿を見せた、そこに居たのはキレイな男の人だった、身なりも良く自分なんかが会えるような人では無いと直感で分かった。でも何故か男と目が合った瞬間、懐かしいと思った。何故そんな事を思ったのか分からず男を見ていると、急に目の奥が傷み出した、一体何がと噴水で自分を確認しようと覗き込んでも見えない。替わりにポタポタと水滴が止めどなく落ちている、もしかして自分の目から落ちてる?手を顔を触ると濡れていた、


「何、これ?」


止まらない?自分は何処かおかしくなってしまったのか…すると急に頭の中に言葉が「悲しい」と、自分の中に今まで無かった感情があった。何でこんな思いをするの!…思わず


「誰か!」


どうしたらいいのか…とパニックを起こしてしまった…すると目の前に膝を付き心配そうに


「……もう苦しむな、私達が居る」


その声にゾクっと震えた。まるで水のようだ…冷たいが優しい。顔を上げると、無表情なのに優しいと感じた。すると急に胸がドキドキと鳴る、さっきから自分は一体どうしてしまったのか、思わず後ずさると、男は少し笑ったように見えた。最初の雰囲気よりは穏やかに見える、この人と何処かで会っている?そんな気がするのに分からない何処で?グルグルと考えていると、男は何も言わず先に行ってしまう、そう言ば自分が迷子だったのを思い出し慌てて呼びとめた。


「あの、すいません新入生の教室を教えて貰えますか?」


聞くと、一瞬考えてまた先に行ってしまう、やっぱりかと、良い人かと思ったが…ダメだったか、諦めていると先に行って筈の男が振り返って、私を見ている、首をかしげて近付くとまたさっさと先に進む、試しに止まってみると、男も止まる…もしかして、これは案内してくれているのだろうか…?恐る恐る男の後ろに着くともう止まらずに、ある教室に入った。そこには大勢の人が居た新入生だと気付きビックリした、あの男はどうやら自分と同じ新入生だったテッキリ上級生かと思ってたのに…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ