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僕のトラウマと私の黒歴史  作者: 中結い
6/13

私の黒歴史編6

 放課後。


 帰りの電車に揺られつつ、僕は大きなあくびをしていた。片道一時間の道のりは長い。


「近江さん、こんな遠い学校に通っていらしたんですね。ご自宅の近くにも学校があったじゃないですか。ほら、なんか葉っぱのマークの……」


「ああ、紫草のマークの? 額田女子ね。あそこ伝統校とか言ってなんか堅苦しいから、僕にはこっちの方が合ってるんだよ」


「なるほど。確かに小町女子は校風が緩いですよね」


 そう言ってスカートを引っ張る。


「私は、制服が好きでここに来たんです。この近辺では、ここが一番」


 確かに淡い水色のセーラー服は、彼女の白い肌によくなじんでいるように見えた。


「……でも、まさか近江さんがいるとは思わなくて、びっくりしました」


 それはこっちの台詞だ。


「いやいや、佐々さんこそ。こんな時期に転入してくるなんて、びっくりしたよ」


 通常、転入試験が行われるのは春休み・夏休み・冬休みの三回であり、したがって転入生は一・二・三学期の初めに入ってくることになる。五月の中頃なんて中途半端な時期に入ってくる転入生など、例外中の例外としか思えない。


「本当は春休みに試験を受けていたんです。ですが……一学期初日には、とても……」


 そのまま彼女は黙ってしまった。


 言いたくないのだろう。いや、言いたくても言えないのかもしれない。

 言うべきじゃなかったな……くそ。


 僕は自分で踏んだ地雷の処理は自分で行うべく、話題をぐいと明後日の方向に向けた。


「そういえば、そろそろうちの学校でも体育祭があるんだ。二年生は中心だとか言われて結構種目が多いけど……女子高なのに組体操まであるから、嫌になるよ」


「近江さんは小柄ですし、てっぺんとかになってしまいそうです」


「……うん」


 事実てっぺんである。


 怖いんだよ、組体操。


 一回落ちたし。


 その様子を見て、彼女はクスクス笑う。


「組体操の練習は、もう始まっているんですか?」


「うん。そうだけど」


「そうですか。……では、私は入れそうにないですね」


「そうだね……他はともかく、そこだけは見学かも」


「……そうですか」


 そして少し思案しているようだったが、やがて彼女は嬉々として、思いついたように言い放った。


「では近江さんが落ちたときは、私が受けて差し上げます」


 できるか。



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