表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕のトラウマと私の黒歴史  作者: 中結い
3/13

私の黒歴史編3

 僕の家は本来金貸しである。それがざくざくと財を蓄え地主化していったのが始まりなのだが、それがいつのことなのかはさっぱり分からない。


 地主の傍ら今もしっかり金貸しを営み、情け容赦ない夜叉の如き取り立てで周囲を震撼させるとともにひどく毛嫌いされている。


 実際、過去にはいくつかの脅迫状が届けられており、親戚一同は一笑した後にどうやってか送り主を突き止め何らかの何かを施したらしいが、それは僕の知るところではない。


 ちなみに、そのときに付いた羅切の近江家というとんでもない汚名は、今も消えずにいる。


 嫌悪とともに畏怖の目さえも向けられる――そんな存在が、本来我が近江本家のはずであった。


 だが、今この宴においての彼らに、そんなクールさはとても見受けられない。


「おかえりぃ♪ 彼方ちゃあん……お、誰ぇ? その子」


「何? 女の子拾ってきちゃったのお? 彼方ちゃんも隅に置けないなぁ」


 彼女にタオルを貸し出していたら、いつの間にか玄関にまでやって来ていた叔父さん達が絡んできた。


 出来上がってるなあ……まったく、いつまで飲む気なんだよ。


「違うよ! ったくもう、ほらお酒とか買って来たから、どうぞ」


 そう言ってワイワイしている間に、さっさと離れて自室に向かう。


「あれー? 彼方ちゃんどこ行くのお?」


「飲まないのー?」


「飲めないっ!!」


 居間から廊下を通りそのまま渡り廊下へと出て離れへと渡る。何気なく庭を見ると、あまりの雨量に池が氾濫している。翌朝になって鯉が乗り上げていたりしないだろうかと心配しつつも廊下を折れて隅っこの部屋へと入った。


「今薬箱出しますから、その辺に座っててください」


 そう言って座布団を差し出す。

 薬箱はよく使うから、わざわざ出すまでもなくタンスの上にあった。


 脱脂綿に消毒液を染みさせ、顔の血を拭って絆創膏を貼る。痣はどうしたらいいか分からなかったので、とりあえず軟膏を塗るだけにとどめておく。よく見ると傷は顔だけではなかったので、そこも消毒したり軟膏を塗ったりとしているうちに結構な時間が経ってしまった。


 くしゅん、と彼女がくしゃみをする。


 そういえば濡れた服のままだったな。


「僕外にいるので、その服着替えたらどうですか? 着替えは……持ってますよね?」


 ちらっと白い旅行鞄に目をやる。雰囲気的に家出か追い出されたかだろうから、あの鞄の中身は衣類だろうと踏んでいた。


「はい。お気づかいありがとうございます」


 そうして頭を下げたのを目に収めてから、僕は扉を閉め暗い廊下に立って一人ぼんやりした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ