表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕のトラウマと私の黒歴史  作者: 中結い
2/13

私の黒歴史編2

 酔客のためのつまみやら酒やらを買い込んでコンビニを出ると、雨はまだ降っていた。      


 しかもこういう時に限ってコンビニの傘は残らず売り切れており、一本もないという甚だ役に立たない状態にあった。


 さっきより雨脚が強まっているようにも見えるが、ここは覚悟を決めてずぶ濡れになってやろうじゃないか。


 そう心を決めてフードをかぶり、小走りで家に向かおうとしたところに、ずい、と傘が差し出された。見ると、さっき僕が貸した青い蛇の目である。


「あの、これ……お気持ちだけで結構ですから」


 そう言って上げた顔は僕と同じくらいと見えて、可愛くはあるが妙に傷だらけである。下を見れば、白い旅行鞄が置かれていた。


 なるほど、そういうことか。


「良かったら、家に来ませんか? 傷の手当とか、した方が良いでしょう」


 バケツをひっくり返したような雨は、留まるところを知らず止む気配もない。いくら少し大きめの傘を持ってきたとはいっても、二人で入れば肩も濡れる。くっつこうにも知らない人だし、元々広めのパーソナルスペースが邪魔をしてそう近づくことが出来ない。


 しかしなんといってもこの沈黙が一番嫌な訳で、僕は今日初めて会った人に対して、この道に関するどうでもいい怪談を語るのである。


「この道って、色々な化け物が出ることで有名なんですよ。河童とか、べとべとさんとかたんころりんとか」


「それはまた、ずいぶんと雑多ですね」


「まあ、嫌がらせのデマですから。僕の家は職業上、あんまり好かれるようなものではないので」


 そう言うと、彼女はびくっと身体を震わせて動揺したように僕を見た。


 何かまずいことを言っただろうか。


「どうしました?」


「いえ……今あの、僕って……もしかして、男性の方ですか? すみません、そうは見えなかったもので」


 なんだ、そういうことか。


「ああ、違います。見ての通り女ですよ。自分でも変なだとは思いますけど、癖になっちゃって」


「なんだ。いえ、気にしなくていいと思います」


 彼女はふう、と息を吐いた。


 男の娘疑惑を掛けられたようだ。


 そこまでかなあ……。


 うーん、ちょっとへこむ。


「でも、そんな嫌がらせをされるようなお家って……何をされているのか、聞いてもいいですか?」


 ああ、と僕は溜め息を吐き、そして少々迷って聞き心地の良い方だけを口にした。


「地主です」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ