私の黒歴史編12
私は小さい頃から、色々な格闘技をやっていたせいもあって喧嘩が得意でした。積極的にやることはありませんでしたが、仕掛けられれば必ずやり返しましたし、負けたことは一度もありませんでした。
周りに人はそんな私を、怖いと言って避けるようになりました。
そんなときに私に声を掛けた人物がいました。
それが、あのグループのリーダーでした。
それはまあ、田舎のチンピラ集団みたいなもので大したことはしていなかったのですが、喧嘩が強いというだけで重宝されて、あっという間にナンバー2になりました。取り巻きみたいなのもたくさんできて、ちやほやされて、なんだか、こんなのも悪くないなってそのときは思っていました。
ですが、ふと気が付けば私の周りには友達が誰一人いないんです。考えてみれば、生まれてからずっと覚えている範囲で、友だちらしき人を作ったことがないことに気が付きました。
私の周り人にいるのは、いつも敵か取り巻きか上司かしかいなかったんです。
それを、私は寂しく思いました。だって私の周りにいる人たちは、私の喧嘩の強さしか見ていないことになるんですから。
でも、一人ぼっちよりはずっとましだと思うことにして、変わらず喧嘩ばかりしていました。毎日がとてもつまらなくて、仕方がありませんでした。
そんなある日、所属していたグループがある犯罪組織と合併する話が持ち上がりました。上は承諾し、話はどんどん進んでいきます。
私は急に怖くなってしまいました。だって、相手は本格的な犯罪組織です。いままでのただのチンピラとはわけが違うんです。
私はリーダーに辞めさせてくれと申し出ました。ですがなかなか承諾してもらえず、最終的には縛り上げられて、メンバー全員にボコボコにリンチされました。
そのまま数日間監禁されて、もうだめだって思ったときにリーダーが顔を出して言いました。
「よく耐えられたものだ。許してやる。だが、二度とこの近辺に顔を出すんじゃねえぞ」
そうしてなんとか命拾いをしたのですが、その後も残党に追いかけられて、荷物を持って逃げざるを得なくなりました。逃げているうちに夜も遅くなってバスもとっくに終わっていて、雨が降り出したのに傘もなく、途方に暮れていました。
私はそのとき、いっそ死んでしまおうかと思っていました。残党から逃げるのにももう疲れたし、両親からは呆れられるし、どうせ何も持っていないのなら死んでも同じじゃないかってそう思っていました。
でも、そんなときに何故か恐々と私に声を掛けてきた人がいたんです。
それが近江さんでした。
近江さんは初めて会ったどこの誰かも知らない、しかもずぶ濡れでボコボコの私にとても親切にしてくださいました。怪我の手当だけではなく、まさか泊めてもらえるだなんて思ってもいませんでしたが。
私はこんな人と友達になれたらどんなにいいかと夢見ました。
だから転入先の高校で再会できたとき、一瞬幻視かと思いました。ですが、そうではなかった。
「近江さんと、友達になれてよかった」
私はそう言って、彼女を振り返った。
それ以上の感情の存在をじっと押し隠して。