私の黒歴史編10
「おや、こないだ拾ってきた子じゃないか。同じ学校だったんだね……もしかして彼方ちゃん、偶然じゃなかったの?」
どこに集まっているのかを聞きだして、やっと親戚たちの集まりに合流できたところ、叔父さんが開口一番にとんでもないことを言い放った。
きちんとお礼を言いたいという礼儀正しい佐々さんとは相反して、実に無礼な叔父さんである。
「叔父さん! 開口一番セクハラしないでよ。今日は逃げ場がないんだから」
「セクハラじゃないもん。コミュニケーションだもん」
「だーもう、セクハラをコミュニケーションと呼ぶな」
そんな僕と叔父さんの無意味な掛け合いを無視して、彼女は向こうの方でしっかり挨拶をしていた。
「先日は大変お世話になりまして、佐々綾乃と申します。彼方さんとは同じクラスになりまして、親しくさせて頂いております」
「あらあ、随分礼儀正しいわねえ。ほら、かなちゃん。見習いなさいな」
「なっ……」
「いやいや彼方ちゃん、外面だけはいいものねえ。さっきだって後輩には愛想よく手を振ってたけど、私たちが振ってもガン無視だもの」
「近江先輩カッコいい、なんて言われてたわよ? モテモテねえ」
「そういえば小さい頃なんか……」
「ちょっ……あんま好き勝手に言わないでよ! 親戚だけじゃないんだから」
「あらあら、ごめんなさいねえ」
「彼方ちゃんもお年頃なのよねえ」
くっ……むかつく。そんなに飲んでなさそうなのに、どんだけテンションが高いんだ。
「ごめん、なんか叔父さんとおばさんたちが……」
「いいえ、私は平気です。……それで、小さい頃の近江さんがどうしたんですか?」
「あら、聞きたいの? あれはまだ幼稚園の頃、二人の女の子がかなちゃんに……」
「ちょっと! だめだめだめだめ!! こら、聞くな! 話すな!」
こんな調子で親戚たちと佐々さんに弄られまくって、昼休みが終わった頃には既に僕の体力は底をついていた。
全然休めなかった。
「疲れた……なんか声が、もう……」
「すみません、近江さんの反応が面白くて……つい」
ついじゃねえよ、まったく……。
「でも、近江さんのお家って皆さん仲が良くて、近江さんも何だかんだでものすごく大事にされてて、明るくて……本当に良いご家庭ですね」
「そう? そう言ってもらえるとありがたいけど、ただのお祭り好きっていうか、なんて言うか……あれ?」
視界の隅に、見覚えのある顔が映った。高校にはいるはずのない、小学二年生くらいの女の子。
妹の友達だ。
嫌な予感が頭をよぎる。
「さくらちゃん! どうしたの!?」
僕がそう声を掛けると、彼女は真剣に張りつめていた顔を緩ませて、泣きながら走ってきた。
「遥ちゃんのお姉ちゃん! 遥ちゃんが、遥ちゃんが……!!」
「遥!? 遥がどうしたの?」
彼女は涙で顔をボロボロにして、しゃくり上げながら言った。
「遥ちゃんが…………知らない人に連れてかれちゃった……」