ハッカ味はゴミ
アージョは少女を一人残し、立ち去って行く。
「おい!待てと言っているだろう!」
しゃると名乗るその少女はアージョを引きとめるが、アージョは無視して街の中へと歩を進める。
ブルジョワシティはアージョとしては初めての光景だった。
外壁は真っ白。まるで豆腐-tofu-。石造りのその家々は西洋の一国であるかのような雰囲気である。
「とりあえず、どうしようか。まず、宿をとらないと」
「それなら、しゃるの分もとってほしい!」
「うおおおい!!??」
アージョは当然倒れ込む。無理もない、突如自分の肩に先程の少女が乗っているのだから。
少女は肩から抜け、華麗に地に着地する。
「なんだ、どうしたんだ?お主、宿に泊まるんだろう」
「いや、違ェよ!ど、どうして肩に乗ってんだお前!」
「手と足で乗ったに決まってるじゃん!ばかかおまえ」
「そんなこと分かってるわ!そうじゃなくて手段をだな…」
「しゅだん?なんだそれは?それより、宿はとらないのか?」
(…駄目だ、こんなガキのペースにハマっていては…最強剣士としての面目丸潰れではないか)
アージョは片手で顔を覆い、気を取り直し、また町の探索を始める。
しゃるはアージョを見上げながら、頻りに声をかける。
「ところで、此処は何処なんだ?そろそろしゃるも知りたい!」
「…」
「あっ、あんな所にサメがいるぞ!サメの形をした雲だ!」
「…おい、お譲ちゃん。これやるからどっかいけ」
アージョはしゃるに飴(ハッカ味)を渡す。
「なんだこれ?」
(こいつ飴もしらねぇのかよ…)
近頃のゆとりの情弱ぶりに呆れたアージョは、やはりこのガキは放っておこうということで無視して先に進むことにした。
しゃるは白くて丸い形をした物体(飴)を不思議そうに眺め、そして口の中に入れた。
「クソまずい!!!!」
アージョは宿を探す為に、町を探索する。
と、暫く進むとそこには武器屋と名のつく看板が掲げてあった。
「武器か…」
アージョは考える。自分は今、武器を三つ持っている。勿論、全て刀だ。
そして思った。
最強の剣士は、刀だけにあらず…。そう、斬れるものなら何でもいいんじゃね?ということである。
刀も勿論いいものだが、その他の武器に触れる事によって何かが開花するのかもしれない…。
そんな期待を胸に、武器屋の扉を開いたアージョであった。
カランコロン
「いらっしゃいませ~…あれ?この辺じゃ見かけない顔ですね」
そこには金髪のあの少女…。そう、ツッキ・ユービ氏である。
武器の女神とも呼ばれる彼女には、武器について語らせたならば一生かかっても全てを聞く事が出来ないレベル。
そんな彼女は今、一人の侍を目の当たりにしている。
(こりゃ吃驚した。ねぇちゃんが武器屋をやってるとは…)
「何か、お探しですか?」
「ん、あぁいや…フラリと入ったものでな」
とりあえず今の所買う気は無いといった意思を見せるアージョ。ツッキ姉ちゃんもそうですかと言うと奥の方へと行ってしまった。
アージョは辺りを見回す。剣やらハンマーやら、メジャーな武器はあるのだが刀は見えなかった。しかし今回は刀が目当てではない。
「剣や斧などは、どうだろうか…。しかし使った事が無いからな…構えとか、どうすんだろ」
「これはどうだ?」
しゃるが右手を前に突き出し、左手を後ろに回す。
「なんだその構えは、これだからガキは…って…いやまたお前かよ!!!飴やったから帰れよ!」
「鮫拳<シャーク流>鮫肌パンチ!」
ジョリジョリジョリジョリジョリジョリ!!
「グハアアアアアッ!!」
アージョは壁に激突する。
「鮫肌パンチとは、こぶしを鮫肌のよーにみたて、たいしょうをこするように拳を突きだし、ひょーひをけずり取りダメージをあたえる技…」
しゃるシャークの拳からはウルトラマリンブルーのオーラが懇々と湧き出ていた。
(ガキの癖になんという威力だ…!!チッ、それならば俺も―)
アージョが刀を取り出そうとするが―
「店内で暴れるのはやめて下さい!」
ツッキ・ユービがそれを阻止する。
アージョは慌てて刀を戻す。
「お客さん達、戦う為にこの店に来たんですか?」
「あ?い、いや…武器を買うためにな…。さァて何にしようかなァ!わくわく」
「お客さん、武器合成とかしないんですか?」
「…武器合成?何それ」
「武器合成っていうのは文字通り武器を合成しより強い武器を製造する事です。お客さんの刀の種類―魚刀―が3つ…同じ種類の武器なら合成可能…。要するにお客さんの武器3つでより強い一つの武器が合成できるということです」
「なんだそれ!!しゃるもやってよ!!武器合成!」
しゃるが鮫のぬいぐるみをカウンターに出す。
「武器じゃねえじゃん」
(全くこれだからガキは




