EVOLUTIOИ
キィン!!
静寂の中響き渡る剣撃音。舞い散る火花。
アウスのタクティカルブレードによる一撃を間一髪の所でシャイニングカイザーが受け止めた。
(攻撃が先程よりも重い・・・!それにアウスさんのブーストアーマーの見た目・・・アリエスの手によって出力が上昇した結果と言った所でしょうか・・・)
アウスとつばぜり合うシャイニングカイザーは状況を分析する。
後方には爆発攻撃を受け片膝を付き息を切らすエルリークとアージョ。その更に後ろには大ダメージを受け、へたばっているダーク・ウルフ。
現在、シャイニングカイザー達が戦っている相手はダーク・ウルフと旧知の仲である傭兵のアウスだ。
アウスは光の連邦軍から依頼を受け、ブーストアーマーと呼ばれる強化外骨格を身に着け、シャイニングカイザー達と敵対していた。
ダーク・ウルフの尽力により和解に至ったものの、最後の十二幹部であるアリエスの介入により意識を奪われ操られてしまった。
光と闇のオーラを用いるブーストアーマーによって戦闘能力が著しく上昇していたアウスであったがアリエスに操られたことによりさらに強化された。
そんなブーストアーマーの正体は装備者の生命力を消費し、装備者の戦闘能力を超強化する危険な代物であった。
故に、今のアウスはブーストアーマーを運用する為の電池のような状態であり、その命が助かる可能性は非常に低かった・・・。
ドッ!!
刹那、アウスの体より衝撃波が放たれた。
それを受けたシャイニングカイザーは後方へ吹き飛ばされたものの、空中で受け身を取り華麗に着地した。
「くっ・・・!」
『シャイニングカイザー・・・。次の相手は貴方ですか。いずれは排除する予定だったので好都合です』
ヴォッ!!
感情を感じないアリエスの声がブーストアーマーの右腕に装着されているモジュールより発せられる。
そしてアリエスがそう言い終わるとアウスが纏う光と闇のオーラはこれまで以上に激しさを増した、
「シャイン・・・!ワイも闘う・・・グハッ!?」
休んでなどいられない状況だ。故にエルリークも共に闘う為に立ち上がる。
だがエルリークの身体は闘うのを拒否するかのように膝を付いた。
「クソが・・・ダメージを受け過ぎたか・・・?」
エルリークは先程受けた爆発のダメージが思ったよりも堪えていた。
だが待って欲しい。エルリークは爆発を受ける直前、「ドラゴン拳ドラゴニック・エル・スケイル」を身体の前面に発動し、ダメージを軽減したはずでは?
アウスの斬撃を受け止めたあの驚異的な防御力を魅せたドラゴン拳ドラゴニック・エル・スケイルなのになぜ・・・?
(バカねアンタ!あのワザは物理攻撃に対し有効だけど爆発みたいな攻撃にはあんまり効力を発揮しないわ!!)
「えぇ!?そうなん・・・?」
エルリークの脳内に赤龍、アポロデュオ(♀)の声が響く。
そう・・・ドラゴン拳ドラゴニック・エル・スケイルは龍の硬質な鱗をその身に宿す技・・・。
故に対物ダメージに対しては無力化と言っていいレベルで効果抜群だが爆発やエネルギー系やオーラダメージなどには効果は今一つなのだ。
「知らんかった・・・そんなの・・・」
バタリ・・・
そう呟くとエルリークはうつぶせする様に倒れた。
「お、おい!オッサン!!」
アージョは戦闘不能と化したハゲのオッサンに声をかける。
息はあるようだがこいつはしばらくは使い物にならんだろう。
「アージョさん。エルリークさんをお願いします」
そのやり取りを横目で見ていたシャイニングカイザーはその様に指示を出した。
「えぇ!?でもお前さん!一人で戦うつもりかい!?」
「・・・どの道、その状態では満足に戦えないでしょう。今は回復に集中してください」
「く・・・わかった・・・」
勘の良いガキのシャイニングカイザーは見抜いていた。アージョの身体に残る爆発のダメージを。
でもちょっと待てよ!アージョは爆発を受ける直前、風林火山の山に当たる「精神のオーラ」をその身に纏い、防御態勢を取ったはずだろ!?
驚異的な精神力を持って攻撃を軽減する山曽仕込みのあの精神のオーラを纏っていたのになぜ・・・!?
(さすがにオーラだけでは無理があったか・・・。せめて盾を出せていれば・・・。ついてねぇ・・・)
アージョはそう反省する。
そう。精神のオーラはあくまでも防御力を上昇させ、中断耐性(中)を付与する効能があるが攻撃を防ぐものではない。
強力な攻撃に関してはちゃんとダメージを食らうし当然ノックバックもする。
攻撃を防ぐとなると精神のオーラによる技、精神の盾<岩盤石柱>などで防ぐ必要があったのだ。
(だがそれを見抜くとはシャイニングカイザー、タダもんじゃねーな・・・タダもんじゃねーよ・・・)
そんなこんなでアージョはエルリークを引きずり後退。コレといった爪痕を残すことなく戦線を退いた。
『随分とナメられたものです。まさか、あなた一人でフェーズ3状態のブーストアーマーを相手するおつもりで?』
「・・・っ」
ス・・・
シャイニングカイザーは何も言わず構える。
そして光のオーラをジワリと放出し、右手の人差し指に嵌っているバースト・リングにオーラが集まっていく。
『覚醒-バースト-ですか。まぁ貴方にはそれしかありませんからね。ですが、あなたは第三覚醒-サード・バースト-までしか扱えないのでは?その程度ではこのブーストアーマーを止める事など到底不可能でしょう』
上機嫌に冷笑するアリエス。シャイニングカイザーの覚醒-バースト-ではブーストアーマーを破れない自信があった。
それは此れまでの戦いで得た情報を緻密に計算し、そのデータをブーストアーマーに反映しているからだ。
そして今やブーストアーマーの出力は限界値を超え大幅にパワーアップしている。そんな奴どうやって倒したらええんや・・・。
「シャイン・・・!」
前の話で負傷していたダーク・ウルフも心配そうに呟くしかなかった。
「・・・フフ・・・フハハハハハ・・・!!!」
「!?」
一同は耳を疑った。
そう、無理もない。この窮地の中、シャイニングカイザーは唐突に笑いだしたのだから。そう、無理もない・・・。
『・・・錯乱しましたか』
「コホン!失礼・・・。こんな状態でそこまで焦っていない自分に驚いてしまっただけです」
シャイニングカイザーは咳払いし、言う。
しかし今の行動はいつもの冷静なイケメンのシャイニングカイザーらしからぬ行動だ。一体どうしたってんだ・・・?
「たしかに以前までの私ならこの状況を観て諦めの一手を打っていたかもしれません。ですが不思議な事に今の私は負ける気がしないんですよね」
『興味深い。その発言が本物かどうか・・・観せてもらうとしましょう』
「そんな余裕に構えていて良いのですか?」
ズドバッ!!!!!!
その一言と同時にシャイニングカイザーの身体から光のオーラがあふれ出る。
圧倒的な光のオーラ・・・兄であるインフェルノカイザーにも匹敵するやもしれない・・・!
そんなシャイニングカイザーだがここに来て心境の変化があった。
兄であるインフェルノカイザーと共に光の世界の最高指導者であるアンドロメダを打破し、ダーク・ウルフやエルリークと言ったご友人と交流した事でシャイニングカイザーは今まで感じた事が無い熱いものをその身に感じていた。
そう。それは友情だ。友情はいいぞ。例えるならばそれは黄色いバラの花。花言葉は友情。
それ迄のシャイニングカイザーは基本的に単独行動をしていた為友達など皆無。職場での俺のように。
真面目で冗談が通じないが故に避けられていたという事もあるが意図的に他人を避けていたという事が大きな理由であった。
自身の素性を知れば腫物のように扱われるだろう。そう確信していたシャイニングカイザーは孤独を受け入れ、一人で戦う道を歩んでいた。
だがしかし、インフェルノカイザー達の分け隔て無い友情パワーが荒んだシャイニングカイザーの心にスーっと染み渡る。
そして今、目の前で戦友が窮地に立たされている。
そんな状況を熱血に目覚めたシャイニングカイザーが黙って見ているはずがねぇよなぁ!?
「そう・・・この想いこそが私に足りなかった最後のピース・・・!それを理解った今であれば・・・!!」
ンゴッ!!!
シャイニングカイザーを覆うように濃厚な光のオーラが集中して行く。
後方に引いたアージョやダーク・ウルフもその光景に圧倒されていた。
「完全覚醒-パーフェクトバースト-・・・!!」
ッドォン!!!




