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闇空  作者: 闇の使徒インフェルノカイザー
第十六章 ~開幕せし聖戦-ラグナロク-、破壊と創造の鎮魂歌-セレナーデ-~
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契約と代償

「完全に見えたぜ・・・!」


ダーク・ウルフは黒狼の攻撃を完璧に見切った上で最低限の動きで回避していた。


「ヤツの噛みつきに対し数歩横に移動して紙一重で回避するとはな。攻撃を読み切っていなければ到底成しえない芸当だ」


一連の流れを見ていた獣王も驚いた様子で言う。

そしてその渾身の攻撃を外した黒狼ことダークウルフは一瞬理解が遅れていた。


<っ・・・!チィ!!じゃあこれでも食らいやがれ!!!!>


黒狼は口元に闇をチャージ。

闇エネルギーを放出するブレス攻撃の予備動作だ。


「ウスノロ・・・」


ドッガ!


<あガっ!?>


その刹那、黒狼の下顎に衝撃が走る。

いつの間にかダーク・ウルフが黒狼の足元に潜り込み、顎へ向けヤミノマを放っていたのだ。

まるで黒狼の次の攻撃を読んでいたかのような一撃。これを不意に食らった黒狼の顔面は思わず宙を見上げていた。


ギュボォオー!!


そしてゲロのように虚空へと放たれる闇ブレス。

無論そこにダーク・ウルフはいない。


<クソが!!!調子に乗るなよ!?>


「ヤミノミクス!」


ドロォン!


<!?>


ヤミノミクス・・・それは経済成長を促すことを目標とした闇のオーラにより沼を作り出し、対象の動きを阻害する技。

だが裏腹に物価は高騰し、デフレは止まらず、ガソリン代は日々上がり続ける。若者は闇バイトに手を染め、移民は各地で大暴れする。

そんな時代を生きるダーク・ウルフはヤミノミクスを黒狼の足元へ発動し、黒狼の動きを封じたのだ。


「その沼はお前の動きを阻害し、力を奪う!これで風の力も出せねぇだろ!さぁて・・・次で仕留めるぜ・・・!」


ゴゥ!


ダーク・ウルフはそう言うと闇のオーラを右腕に集める。

やがてオーラは右手に集まっていく。そしてオーラは闇色の刃となり禍々しく迸る・・・。


「暗黒式対獣刀・・・ヤミノバ!!」


ズバッシュ!


それは一瞬であった。

ダーク・ウルフの右手より生成された闇のオーラによる刃は黒狼の左目の傷痕を切り裂いた。

暗黒式対獣刀・ヤミノバ・・・。

それは暗黒式対獣砲・ヤミノマの亜種でありダーク・ウルフが今考え付いた新たなる剣だ。

ヤミノマのようにオーラを圧縮させ全放出するのではなく圧縮させたオーラをちょっとだけ放出し、留める事により高出力な刃を生成。

それにより斬撃を繰り出す近距離特化の闇技だ。ヤミノマのような派手さは無いものの破壊力は勝るとも劣らない。

しかし本来、圧縮させたオーラの整形は尋常じゃないレベルで難しい。ブキヤの旧キットを合わせ目消してヒケ処理してスジボリして全塗装する並に。

だが器用なダーク・ウルフはそれを可能とした。今やオーラの扱い方だけで観ればインフェルノカイザーより数段上だろう。


<ガッ・・・アア・・・!>


そんな物をまともに食らった黒狼は思わずダウン。

傷への集中攻撃。まさに会心の一撃と言った所か。超会心だ(会心ダメージ倍率1.4倍)


「今だ!奴を封じろ!!」


と、いきなり後方から声が上がる。獣王の声だ。


「え!?どうやれば・・・」


「君の左目の魔眼を使うのだ!魔力を左目に集中させ、こう・・・いい感じに封印してAボタンを連打するのだ!!」


獣王はあやふやな指示を出す。ちなみに連打しても捕獲率は変わらないとされているぞ。


「エ、エト・・・ハァ!」


ヒョン!


Aボタン押しっぱ派のダーク・ウルフは言われるがままに自身の左目に魔力を集中させる。

すると左目が眩しいレベルで翠色の光を放ち、黒狼を包み込む。


<ぐ・・・!ガァ・・・・!!!ふざけ・・・んな!!>


だがそれに抗う黒狼ダークウルフ。

再度闇のオーラを増幅させ、抵抗する。


ガッ!


<ア・・・!?>


そんな黒狼の左目に突き刺さる一本のダガー。

それはダーク・ウルフが装備している二本のダガーの内の一本であった。

ダーク・ウルフはそれを瞬時に投げ、暴れる黒狼を黙らせた。


<クソ・・・が・・・>


シュワァ・・・


そう言い残すと黒狼は翠色の光に包まれ、ダーク・ウルフの左目に吸い込まれるように消滅した。



「グッ・・・!これでいいのか・・・?」


緊張が解けたダーク・ウルフは思わず片膝を付く。

そんなダーク・ウルフの元に獣王が拍手しながら歩みよってきた。


「上出来だ。ダーク・ウルフ君。流石は私が見こんだ戦士だ」


「じゅ、獣王さん・・・!」


獣王の賛辞の言葉に安堵するダーク・ウルフ。

そう、ダーク・ウルフの勝ちだ。


(まさか本当にやってのけるとはな。面白い小僧だ。これで貴様はあのバカ狼をゲットした事により奴と契約したも同然となった)


今まで黙っていた獣王の召喚獣ガオウも脳内へテレパシーを送る。


「え、じゃあアイツ出して戦わせたりできるってコトですか?」


「理論上はな。まぁ奴がそれに応じるかは分からんがな。ともあれ、半ば強制的に奴と契約した事により君の中にビーストパワーが宿った。訓練を積めばビーストオーラを扱えるようになるだろう」


「や、やったぜ!獣王さん!事が済んだら俺に修行付けてくださいよ!」


「いや、それは無理だ」


テンション高めなダーク・ウルフの提案を却下する獣王。

ダーク・ウルフはまさか断られることはないだろうと思っていた為動揺する。


「えぇ!?この流れで却下するんスか!?」


(落ち着け小僧。どうしようもない理由ワケがあるのだ)


獣王に食い下がるダーク・ウルフをなだめる様にガオウは割り込んだ。


「・・・この精神空間に私が介入する条件、それは私の命が尽きる事が絶対条件なのだ」


「え・・・?それって・・・」


「左様。私はもう、死んでいる」


獣神拳使いは静かに言う。


「ど、どういう事ですか!?」


「言葉通りだ。おそらくアスケラとの戦いで私の本体は命を落としたのだろう。だがそのおかげで君の中に流したビーストオーラからこの場所に現れる事が出来た。生前の私の最後っ屁って奴だな」


(お前が狼と戦っている最中、”現実世界あちら”側で爆発が起こった。ビースト拳は命を奪う事が出来ない。だから獣王は機械を爆発させあの弓使い諸共自爆したのだろう・・・)


「そ、そんな・・・!嘘だそんな事・・・っ!」


ダーク・ウルフは力なく項垂れる。

そう、無理もない。慕っていた者が実は既に死んでいると聞かされたのだ。その悲しみは海より深いだろう。そう、無理もない・・・。


「案ずるな少年。君は強い。自分の信じた道を進んでいけばいい」


「・・・」


「さて、そろそろ尺も限界だ。ガオウ、後は頼む」


(ああ・・・。さらばだ友よ・・・)


キィィイン・・・


文字数が2500字を超えた事を憂いた獣王はガオウに合図を送る。

するとダーク・ウルフの体が金色に包まれる。お別れと言った所だろう。


「そうだ、ダーク・ウルフ君。全てが終わったら我が故郷へ足を運んでみてくれ。きっと君の助けになるだろう・・・」


獣王は別れ際にそう言うとダーク・ウルフの右肩にそっと手を置く。

項垂れるダーク・ウルフは力無く頷いた。

そうこうしてる間にダーク・ウルフの視界はボヤけ、何も見えなくなってしまった。



「っ・・・!?」


そして目を開けると見知らぬ天井が見えた。

白地に黒色のグジグジした模様のあるジャスコとかでよくみるタイプの天井が見える。


「・・・なんだったんだ・・・?夢か?」


そう呟きながらダーク・ウルフは身体を起こす。

先程まで起こっていた事が嘘かの様に感じる。

だがそれは紛れもなく現実だという事をダーク・ウルフはすぐさま理解する。


「グルル・・・」


「うお!?コイツは確か獣王さんの・・・!そうか。精神空間じゃないから意思疎通はできねぇんだったか」


ダーク・ウルフを見守るかのように傍らにいた金色の獅子にビビりつつも落ち着きを取り戻す。

金獅子ことガオウはダーク・ウルフの無事を見届けると金色の粒子となり消えていった。


「あ・・・。この部屋でずっと視ててくれたんだな」


リネン室にて一人残されたダーク・ウルフは冷静に状況を整理する。

同時に理解した。獣王がこの世から消え去ったという事を・・・。


「・・・やっぱつれぇわ」


<そりゃつれぇっしょw>


「ッ!?」


突如聞こえた声に仰天して飛び上がるダーク・ウルフ。

だが次の瞬間、自身の左目から何かが飛び出した!


ポンッ!


<ったく、いつまで辛気くせぇ顔してんだァ?とっとと切り替えらんねぇのかァ~??>


「え、えぇ・・・?」


そこに居たのは先程まで戦っていた黒狼ことダークウルフであった。

だがそのサイズは随分と違っていた。20㎝ほどのぬいぐるみ並みに小さいのだ。


「ど、どういう事だってばよ・・・」


<シャキっとしろよ?曲がりなりにもテメェは俺と契約したんだからなァ。宿主がこんなんじゃオレ様の格が落ちるんだよ!>


「・・・良く分かんねぇけど元気づけようとしてくれてんのか。やっぱお前イイ奴だよな」


<ッフッッザケンナ!!!!!ぶっ頃すぞカスコラ!!!!!1>


ダーク・ウルフは穏やかに笑った。

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