疾風の如く
「こりゃさっさと登っちまったほうがよさそうだな」
止血をしたアージョは崖を高速で登っていた。
右手は背中にある刀の柄を握り、いつでも戦えるようにしていた。
「しゃるは・・・大丈夫だろう」
あのしゃるが鳥ごときにやられるはずがない、アージョはそう確信していた。
「なんなのだ!?お前は!邪魔なのだー!!!」
無論、その確信は間違いではなかった。
しゃるは上空から強襲してきたプランダーバードの爪を、なんとすれ違い様に手刀でへし折ったのだ。
「ガアアアアアアア!!!!」
流石の怪鳥といえどもこれには堪えたようで、苦痛の鳴き声である。
自分では敵わないと判断するやいなや、プランダーバードはしゃるから逃げるように上空へと飛んでいった。
「待つのだー!!!!」
しかししゃるもそれを追うように今までの倍のスピードで崖を登り始めた。
「ん、下から何か来るぞ・・・!」
アージョが背中の刀を抜き、下からくる何者かに備える。
その正体はしゃるに爪を折られたプランダーバードであった。
「ガアアアアア!!!」
「さては、アイツやりやがったな?」
アージョが苦笑いをし刀を構える。
そしてタイミングを見計らい、なんと飛んでくるプランダーバードにしがみついた。
「ガァッ!ガァッ!」
「静かにしろっ!このっ・・・!」
アージョはプランダーバードを刀で突き刺そうとした。
しかし─
ガキンッ!
甲高い金属音が鳴り響き、刀は弾かれてしまった。
そしてプランダーバードは激昂しアージョを振り落とす。
「うわっとっと!」
アージョは纏っていた風を操作し落下を防ぐ。
プランダーバードも同時に空中に制止、アージョと睨み合いをする。
「こいつ・・・羽が鉄でできてるみてーだな・・・」
プランダーバードの羽は鉄でできていて、生半可な刃物等は一切効かない。
爪はそれ以上の硬さを誇るはずだが、それを手刀でへし折ってしまうしゃるはやはり未知数の力を持っているといえる。
「どうする・・・刃が通じないんじゃ手立てがねーぞ・・・」
悩むアージョ。このままでは攻撃が通らず、怪鳥に叩き落とされてしまうだろう。
「ガアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「うおっ!」
プランダーバードはすかさずアージョに対して攻撃をしかける。
大きく羽ばたいたプランダーバードの身体から鉄でできた羽が繰り出され、アージョへと襲いかかる。
「ならばっ!」
そして鉄の羽がアージョを切り裂こうとする瞬間、ガガガガン!っと金属同士がぶつかったような音が辺りに響き渡った。
「『精神の盾』!」
アージョは山曽から教えてもらった山の波動を使い、岩でできた『精神の盾』を作り出し、攻撃を防いだのだ。
「伊達に修行はしてねェよ!だが・・・」
そう、防いだはいいものの、アージョにはプランダーバードに通じる攻撃手段がない。
その時、アージョの腕が赤く光り輝いた。
「こ、これは・・・さっきの風を纏ったときと同じ感覚・・・!」
アージョは確信した。この湧き上がる力、これは『火の波動』であると。
そして『火の波動』が己に力を貸してくれていると!
「待たせて悪かったな、鳥公。これでやっとテメェに通じる攻撃をできそうだぜ!」
アージョは両手で背中の二本の刀を握り、構える。
そして間髪を入れず刀を抜き、斬撃を繰り出した。
「『破壊の刃』!!!」
それは一瞬だった。
アージョの斬撃を十字を描き、炎を纏い、プランダーバードを切り裂いた。
そしてアージョが刀を鞘に収めた瞬間。
カッ!っと眩い閃光が辺りを覆い尽くし、プランダーバードは一瞬で燃え尽き、灰燼と化した。
「これが、火曽さんに教えてもらった破壊力・・・!」
アージョは自身の成長を噛み締めた。
親しい人たちが皆殺しにされるのをただ見ることしかできなかったあの頃の自分では、今回戦ったプランダーバードには勝てなかっただろう。
しかし、今の自分は違う。人を守ることができる力を持っている、と。
「さて、あともう少しだ・・・!」
プランダーバードとの戦いで気付かなかったが、崖の上は目前だった。
そして─
「おっらあああ!!!」
元気よく崖の上に飛び出したアージョ。
「風曽さん!やりましたよ!」
「コングラッチュレーション!アージョ君!!!」
頂上で待っていた風曽が笑顔で拍手をする、スタンディングオベーション。
「プランダーバードとの戦い、見事だったYO!君ならやり遂げると思っていたZO!」
「山曽さん、火曽さん、風曽さんのおかげっすよ!」
アージョが照れくさそうに手を頭の後ろにまわす。
「君はこれで『精神の盾』、『破壊の刃』、そして『瞬発の翼』を体得したことになるNEEE!」
「じゃあ俺が飛ぶことができたのは・・・」
「あ、SO!アージョ君が風の波動を操れるようになったってことSA!」
「・・っ・よっしゃあああ!!!!」
アージョは喜んだ。
「待つのだあああああ!!!」
「え?」
アージョの後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
もしかしてと思い、二人が下を覗くと・・・、
「忘れてもらっては困るなのだあああああ!!!」
なんとしゃるが崖を走って登ってきている。
「マ、マジかよ・・・」
「す、凄いNE~・・・」
二人はあまりの光景に圧倒され、小学生並の感想しか言えなかった。
そして三人が崖の頂上に揃った。
「さて、アージョ君。君はもしかしてこれで修行が終わりとか思ってないYONE?」
「えっ、違うんですか!」
「当然SA!まだ君の風の波動は弱ーイ!そんなんじゃまだまだだYO!」
「じゃあ、やらせて下さい!次の修行ってやつを!」
「任せなSAI!YEAH!」
そう言った瞬間、風曽の姿が一瞬で遠くへ移った。
「なっ!?」
「これからやる修行は【鬼ごっこ】SA!僕を捕まえられればそこで修行がTHE END!じゃあ、START!!!」
修行が始まったと同時に風曽の姿が視界から完全に消える。
「(鬼ごっことは言っていたもののあの瞬発力とあの速度・・・、もしかしたら相当厳しい修行になるかもしれねぇ!)」
「やってやるぜ!いくぞしゃる!」
「鬼ごっこは好きなのだ!任せろなのだー!」
二人は意気揚々と風曽を追って走りだした。




