風なりぬ
「くっ…どうすればいいんだ?あのバカサメガキのようにゴリ押しで登っていく事は出来ねえし…。かといって普通に登るのはどう考えても無謀だ…やはりこの修行は無理って事なのかよ…?」
アージョは何とかしてこの断崖絶壁を登ろうと考えるが、やはりこれといった案は浮かばない。
その時、悩んでいるアージョに、遠くから声が聞こえた。
『若者よ……風を感じよ……風を感じよ……』
「ん!?なんだこの声は!??!?」
アージョは突如聞こえてきた聞き覚えのある声に戸惑う。
(この声風曽さんだー!!!)
『我が名は風神…風使いの神なり。我が声に耳を傾けよ…』
(自分の事風神っていってる…!!)
何か恥ずかしさを感じつつ、アージョは風神(もとい風曽)の声に言われた通りに耳を傾けた。
『風の本質…。それは即ち【流れ】…。流れを感じ、風になり…。風の法則に則れ…』
「風になる…?って言っても…どういう事だ?」
『風の気持ちになるのだ…』
「しかし…俺人間だし…風の気持ちとか分からないしなぁ…」
『だから…風の事考えれば分かるじゃん…。ほら…今来てるじゃん…崖のとこよくみな…』
「いや分からない……全然分からない……」
『だーっ!!もう!!風の流れよく見ろっていってんの!!ダアホ!!もうしらん!!』
風神はキレて、それを境に風神の声は途絶えてしまった。
「(怒らせちゃった…)風の流れをよく見る…」
アージョは言われた通りに、風の流れを感じた。
自分の後ろから前に吹きつける風…。
「風の流れを感じるぞ…。俺の背中を押している…。そうか…。風に身を任せれば…」
アージョは意識を集中し、風と一体化する事を試みた。
(今までの修行を思い出すんだ…山曽さん、火曽さんとの修行…。その修行で得たこの集中力…!!)
はるか彼方からこの岩肌に吹き付ける風となる。アージョは完全に風となりぬだった。
すると、どうだろう…。
フワッ…
アージョの身体はふわりと浮いてしまったのだ。
「うおおおお!?!」
アージョが驚愕する。すると、集中力が途切れてしまったのか、アージョの身体はまた地面へと叩きつけられてしまった。
「やべえ…俺もとうとうインド人…。これで登る事が出来る!!やってやるぜ!!」
アージョは神経を集中させ、この崖を登る…。いや、飛んでいくことにした。
「ん~~っアージョ君やるねぇ…。だが、ここの風はそう甘くないヨ?」
風曽は遠くでニタニタ笑っていた。




