蝕み
母親の元へと向かうダークウルフ、しかし心の中では、不安がよぎっていた・・・
「失礼します」
母親が普段過ごしている病室に挨拶をし入室するダークウルフ
「君は・・・確か息子のダークウルフ君だったね」
母親の傍らに立っていたのは医者だった
「母の容態はどうなんでしょうか」
ダークウルフが単刀直入に訊く
「実は・・・あれから一回も目を覚ましていないんだ・・・」
「そんな・・・」
ダークウルフの不安は的中していた。もしかしたらまだよくなっていないのではないかという不安が。
「最初は植物系の神経毒かと思ったんだがどうやら違うらしい。薬草は軒並み効果がなく、魔術師に頼んで解毒の魔法を使用してもらったがそれも効果がなかった」
「そして魔術師に調べてもらった結果、この毒はどうやら蠍のものらしい」
「蠍・・・ですか?」
「ああ、しかしどうやらただの蠍の毒ではないらしい、何やら強力な魔法が使用されているみたいなんだ」
「それじゃ・・・母はどうなるんですか!?」
「このままでは・・・もってあと一週間といったところだろう・・・」
「そんな・・・!」
ダークウルフが取り乱す
「なんとかならないんですか!?」
「おそらく蠍の毒にかかっている魔法を解くことが出来れば、ただの蠍の毒になり解毒も容易になるだろう」
「ただ問題はこの魔法は簡単には解除できないということだ」
「それじゃどうすればいいんですか!」
「蠍の毒に魔法をかけた術者を始末すれば、あるいは・・・」
その言葉を聞いた瞬間、ダークウルフの目つきが変わった
「術者を仕留めればいいんですね?」
「あ、ああ・・・」
「わかりました」
ダークウルフはそう言うと翻し、出口へと歩き出した
「だ、だがあまり時間は残されていないよ。こちらも出来るだけ時間は稼ぐけど・・・」
「はい、くれぐれもよろしくお願いします」
ダークウルフは静かにそう言うと軽く礼をし、病室から出て行った
「(待っていてくれよ、母さん・・・)」
ダークウルフは静かに怒り、閉ざされていた左目を開き、その"目"を露にした
「皆、すまない。俺に力を貸してくれないか」
カイザー達の元に戻ったウルフはそう言った
そのウルフの姿を見たカイザー達は驚いた
「お前・・・」
「一人、殺したいやつがいるんだ」
ダークウルフは神妙な顔つきで話した。
「おいおい穏やかじゃねぇな。まずは何があったウルフよォ・・・」
エルリークがそう言うとダークウルフはインフェルノカイザー達に母の容体と毒の詳細を話した。
そしてその毒を連邦の誰かが操っていると思われる事も。
「・・・なるほどな、そういうことならすぐにでもここを出よう」
事情を聞いたインフェルノカイザーはそう提案する
「だがカイザー、お前は皇帝の言う通り軍の指揮をとるんだろう?だとしたらここに残らなければならないんじゃないか?」
エルリークはインフェルノカイザーの提案に対してそう返した
インフェルノカイザーは顎に手をあて少し考えた後、溜息をついた
「・・・そうだな、俺はここに残らなければならない、残念だがウルフの力にはなれない」
「仕方ないさ、カイザー。お前はお前のやるべきことを頑張ればいい」
「と、なると力を貸せるのは俺だけか」
エルリークが肩を鳴らす
「俺も部下に誰か力を貸してくれる奴がいないか訊いてみるぜ」
「すまないな。エルリーク、そしてカイザー」
ダークウルフは礼を言った
「・・・ということで誰か力になってくれる者はいないだろうか?」
インフェルノカイザーはバシリアのところに訪れていた
「そうですね・・・部下に訊いてみます。私もお力になりたいのですが空挺部隊隊長として会議に出なければならないので・・・申し訳ないです」
「気にするなよ、逆にバシリアがいてくれて助かるよ」
「光栄でございます。では、行ってまいります」
部下の元へ行くバシリアの後ろ姿を見送るインフェルノカイザー
「一応皇帝にも事情を説明しておくか・・・」
インフェルノカイザーはそう言うと皇帝の元へ歩き出した
「そうか・・・おそらくそのような強力な魔法を使う者となると、相当高位の魔術師であろう。
連邦の中枢を担っている者と考えてもおかしくはない。我々もできるだけの手助けをさせてもらおう」
「ありがとうございます」
皇帝はそう言うと部下を呼び、支度を整えさせるよう命令した
「ダーク・ウルフは我々の大事な仲間だ、その母上が死の間際だとしたら、それを助けない理由はない。
インフェルノカイザーよ、お主とてダーク・ウルフを助けられないのは相当苦しいだろう。だが、どうか今だけは、我々連邦の為に動いてほしい」
「それについてはもうダーク・ウルフと話がついております故、心配はありません。決心は着いております」
「そうか・・・すまないな」
「いえ」
準備は着々と進んでいた




