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すれちがい2


お久しぶりです。

やはりリアルとの折り合いが難しく更新は遅くなってしまいます。


漸く新学期開始しました。



ぴんぽーん


 連続して鳴るその音に目が覚めた。もしやと思い目を開けると、時間は予定していたよりも15分も先に進んでいる。朝から誰だろうと思いながらも、俺はのそのそと顔を洗って扉を開けた。


「残熾さん、寝坊なんてどうしたんですか」

「ごめんね譲」

「……制服に着替えて来てください。朝は購買で済ませましょう。買ってきますから、急いでくださいね残熾さん」

「うん」


 パタリと扉が閉まったのを背後に聞いて、壁の服掛けにかけておいた制服を手に取る。初めて着るそれは、酷く似合わないような気がした。

 昨日用意した鞄を開けてもう一度荷物の確認をする。書類ばかりの鞄に、面倒になって確認を止めた。忘れていたって取りに来たらいい話しだと思った。


ぴんぽーん


 扉を開けて譲を迎え入れる。時計を見ると、約20分の時間があった。食堂で注文してたら間に合わない時間だ。


「焼きそばパンでもいいですか?」

「焼きそばパン? …食べる」

「どうぞ。あ、お茶も買いましたから鞄に入れておいてくださいね」

「ん」


 初めて食べる焼きそばパンは、パンのもさもさと麺のもちもち感が合わさっていて、美味しかった。


「鞄確認しましたか?」

「ん、でもやめた」

「どうしてですか」

「昨日用意したし……忘れても近いから」

「……見ても良いですか?」

「うん」


 でもやめた。と言った時に譲の眉間にシワが出来たのを見てチラリと父さんやお客様を思い出した。鞄を開けて持ち物の確認をしてくれている譲を見ながら、いつも譲は僕が寝た後こうしてたのかなあ……なんてことを思う。


 ああ、だけど、昨日俺は先生にあの暖かいようなくすぐったいような不思議な気持ちについて教えて欲しいと思っていたのにな。譲が怖くなった理由がわからなくって、そればかり聞いてしまった。先生は大丈夫だよとたくさん話してくれたり宥めてくれたけれど、今もどこか居心地が悪いような気がしている。




「……残熾さん?」

「もう要らない」

「もうですか?」

「半分しか食べてない。もったいないですよ残熾さん」

「じゃあ譲にあげる」

「……はぁ」


 ため息をついて譲は鞄を閉めた後、俺の手から焼きそばパンを取ってガブガブと数口で全部食べてしまった。


 昨日の食堂で気付いてしまってから、どこか俺は変なのだ。先生が大丈夫だよっていつもみたいに言ってくれたのに。先生の「大丈夫」でも嫌な気持ちは消えなかった。そんなことは今まで、無かったのに。


「そろそろ行きましょうか」

「うん」

「入学式頑張ってくださいね」

「頑張るものなの?」

「いえ……真面目に先生のお話聞いてくださいね」

「うん」


 鞄を持って譲と二人で部屋を出る。鍵は勝手に締まるので、ガチャリという音を背後に俺達は学校へ向かった。

 学校の門を入ってすぐにあったクラス分けを貼った看板を見ようとすると、頭が沢山あって全然見えなかった。


「譲、見えない」

「あ……残熾さんはA組みたいですよ」

「ありがとう」

「どういたしまして」


 譲はその後教室まで送ってくれた。名札の色が違う譲を見て、周りの生徒がざわついていたのを見ながら、譲に手を振り教室へ入ると黒板に机の並びが張られていた。






 何かおかしいと思いながらも手を振る残熾さんに手を振り返し、自身の教室へ階段を駆け上る。残熾さんがうまく自己紹介出来るかとか、馴染めるだろうかとか、らしくもなく心配していた。


 昨日の夜から体調も悪いようだし、朝もあまり食べていなかった事からもしかしたら残熾さんなりに緊張状態にあるのかもしれない。

 今日1日の予定が一年生と同じ様になればいいけど。迎えに行くのを想定してそう思った。


 これから先の学校生活、彼に教えることは山のようにあるだろう。それが少し楽しみでもあった。





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