表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

新しくなった


新しい登場人物。

タグやあらすじの変態さんではありません。


浅見譲(ゆずる)


詳しい設定はおいおい。

閲覧ありがとうございます。


 


 今日から俺の寮生活が始まる。そして早速問題が一つ。……晩御飯が来ない。

 毎日六時に部屋の前に来ていたからドアを開けてみたけど、ご飯がなかった。まあ、そりゃあそうだ。もう此処は家じゃないんだから。


 そう気付いてから早10分。いやいや、ご飯ってみんなどうしてるの? 賄いさんいないの? 俺の中ではご飯は気付いたら置いてあるものだったんだけど…。


「どーしよー」


 ぼんやりと携帯を握り締めながら学校のパンフレットを捲る。ぺらぺらぺら……ん? 


「……食堂」


 食堂と言うからにはご飯を食べるのだろう。けれど食堂ってどうやって使うんだろう? 詳しくは説明会にて。って、説明会なんてあったんだ……俺は一週間前にご飯と一緒に置いてあった書類で初めてこの学校に入ることを知ったから、説明会なんて行ってないんだけれど。


ぐぅ


 腹の虫が間抜けに鳴いた。ぎゅうぎゅうと携帯を握り締めてしゃがみ込む。電話をかけてしまいたい。でもまだお仕事してるだろうからかけられない。


「こまったなあ」


 そういえば俺お昼も食べてない。朝ご飯を食べて、出発して。ずっと片付けてたから食べ損ねてた。別に夜ご飯だって我慢出来なくはないんだけど……これからの事を考えるとなんとかせざるを得ないよね。人間食べなきゃあ死にますし。


ピンポーン


 そんな風にフローリングにダラダラしていた俺に訪問者が現れた。ペタペタと裸足で玄関へと歩く。


「はあーい」


 慣れない洋風の扉に一瞬戸惑ってから、カチャリと鍵を回し。取っ手を掴んで。


ガション


 ……間違えた。扉は横じゃなく手前に引くんだった。


「ごめんなさい……」


 カチャリと開いたその向こうには。



 見たことのない人間が立っていた。





 ×


 浅見本家はクズだ。――父は酒に酔うとよくそう零した。

 父は本家の次男坊だった。兄に全てを持って行かれ、婿養子となるしか自由への道を閉ざされた人生を歩んだ。しかしその自由もほんの僅かなものだったそうだ。


 昔の俺は新年など、本家に呼び出されるイベント事が大嫌いだった。何故なら優しい父が優しくなくなるからだ。父は本家に関わるとあからさまに荒れて、更に俺と姉さんに厳しく作法を言いつけた。


 本家なんて嫌いだった。父さんが嫌うから、それで十分な理由だった。なのに、姉さんはある日次男坊の世話役になると言った。あの哀れな次男坊の世話役に。


 何故かは知らない。だけど、姉さんは本家に住み込み、次男坊の世話を始めた。朝部屋の前に朝ご飯と必要物を置いて、次男坊が学校へ行くと部屋を掃除して学校へ行った。晩御飯を部屋の前へ置き、置かれた洗濯物などを運ぶ。

 干渉が許可されないと、姉さんは手紙に何度も書いた。


 そんな姉さんも大学へ行く事になり世話役を辞めた。最後まであの子に関われなかったと、姉さんは悲しそうに言った。

 俺は世話役を継いだ。別に姉さんの為でも無ければ次男坊の為でもない。普通の家庭よりも多い”お小遣い”が、世話役には出た。


 本家の広い部屋に住めて、美味いもんが食えて、金が入る。それだけだった。嫌いな本家に住むのはたまに我に返るように苦痛だったけど、それも本当に僅かで。


 俺は次男坊なんかに興味なんて全くなかった。……本家がそうであったように。


 では何故今俺は……目を軽く見開いて見上げてくるコイツの前に居るのだろう。


 ちらりと、原因が脳裏をかすった。


「俺の名前は浅見譲(ゆずる)。あんたの……えと、飯運び」

「……ご飯運び?」

「おう」


 話しかけることも姿を見せる事も俺達姉弟は許されなかった。けれど、ずっと、見ていた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ