実は実はの内緒話
主人公
浅見斬熾
中学一年生
艶々の黒い髪の毛はちょっと癖っ毛
無表情無関心のせいで友達が居ない
そんな子の話です。
俺の家は代々栄えた芸術家の家系だ。今時古い長男が跡継ぎとして大事にされるような、そんな家。
その家の名前は浅見。そして、その浅見家の次男坊が……俺だった。次男坊である俺は全く家に関心を持たれない中育った。
兄の名前は要であり、簡易に見えてこの名をつけるのには大層時間をかけたそうだ。そして俺の名前は斬熾。名前こそカッコイいけれど、従兄弟が言うに斬熾は残子なのだそうだ。
残りものなのだそうだ。兄が母の腹に要らぬと捨て置いたものが、俺なのだそうだ。父に聞いた事はないし、聞く勇気はない。けれど、兄の一歳の誕生日を祝う盛大な酒の席で、一時間で決めたというのは……浅見の家では有名な話だった。
まあ、そんな事は置いておいて。俺は食事を両親や兄ととったことがほぼ、ない。新年の宴会など以外では、会うことすら殆ど無かった。
それを新任だったらしい六年生の時の先生は気にしてくれた。けれどそれが通常だった。食事は部屋に運ばれてきて、逆に俺の方が偉いんじゃないかと先生には言われた。
両親には抱きしめられる事は愚か撫でられた事も無かった。赤ん坊の時は同じく長男ではない一族の者が俺の世話をしたらしい。
それを聞いた先生の言葉は「あっ浅見がなんぼのもんじゃいこらー!」だった。俺の普段動かない表情筋が少し動いた位に面白かった。
ああ、うん。実はカウンセリングされてしまうくらい俺には表情がないみたいで、性格も平坦なものらしい。赤ん坊の時とか小さい頃に愛情が足りなかったせいだと先生は怒っていた。
今までの先生は家庭訪問をしなかった。それは学校にしないと家から言われていたからだ。けれど先生は家に電話をしてくれた。話し合うべきだと言ってくれた。
例えその答えが「無駄な時間は使いたくない」といったものであっても、俺は母さんが俺の存在があったからこそ放ったその言葉が嬉しかった。
嬉しくて泣いた。先生は悲しいから泣いたと勘違いしていたみたいだけど、母さんが俺の為に言葉を発した事が嬉しかった。
だから先生にもそう言った。嬉しいと伝えたかった。
「…なぁ斬熾、お前本当に幸せなのか?」
「衣食住に困った事はないです。三食とってるしお小遣いは他の子以上ある。なのに、そんな事聞かないでよ先生」
「……う、ん」
何故だかいつも、先生は俺を見て悲しそうにしていた。
13.0701