Lotus6 これも恋の始まり?
まだ出会ったばかりなのに、私はこんなにも貴方の言動一つ一つに惹かれている。この気持ちが“恋心”なのかはわからないのに、それでも私は貴方と槻岡さんの関係が気になってしまう。ねぇ、セフレってどういう事?
セフレ……セックスフレンドの略称。恋人では無く、ただセックスをするだけの関係。
私が知っている限りでは、セフレとはそういう意味なのですが……それが何て? 槻岡さんと彼がそうだって言うの? 確か槻岡さんには彼氏がいたよね? 何とかクンっていう……
「と言っても、夏海が今の彼と付き合う前で終わったけどね」
なんだ……そうだよね。彼氏がいるからそんな事は続ける訳にはいかないよね。それにしても、あの槻岡さんが……と意外な事に驚いたのは事実だけれど。人間見た目で判断してはいけないなぁ。
「それじゃあ、今はただの幼馴染みって訳なんだ」
「そうだけど、いやに夏海にこだわるね? どうして?」
また嫌な質問してくる彼に言葉が詰まってしまった。貴方の事が気になっているからですなんて言える訳ないし……。それにこの気持ちも別に恋とまだ決まった訳じゃないし?
「別に、ただ何となく気になっただけ」
「そっ? ならいいけど」
そっけなくそう言うと彼はそのまま席を立ってジャケットを手に取った。
―もう、帰るの?―
そんな事も言えないまま私はまだ座っていると、私の方に来た彼は手を差し出して笑顔になると
「遊びに行こうか?」
そんな彼の誘いを断る理由なんてある訳が無い。私は迷う事無く彼の手に自分の手を乗せた。
ガコーンッ
「やった〜! またストライク!」
彼に連れられてやって来たのはボーリング場。遊びに行こうとは言ったものの、特に場所を考えていなかった私達はたまたま近くにあったここに来た訳だったけれど、いざゲームを始めるとこうして盛り上がってしまった。
「凄い〜! ホント上手いね!!」
真っ黒な彼のスコアを見て何でも出来るのかと感心してしまった。その下にある自分のスコアは一緒に並べられるのが恥ずかしくなるくらいのもので、出来れば他人には見られたくなかった。
そして自分の番になりボールを手にすると、彼が立ち上がってアドバイスをくれる。その時に近付いた彼に少し緊張しながらも投げた私のボールは全てのピンを倒していき、やっとスコアにストライクのマークが表示された。
「やった〜!!」
思わず彼とハイタッチしたけれど、その時は本当に嬉しくて自然と出来た事だったからドキドキ感とかは全くなかった。彼もまた親指を上げて喜んでくれる。
「やっと笑顔になったね」
「えっ!?」
まだ興奮も止まない内の彼の言葉に私はこれまで彼が気遣ってくれた事に気付いた。渉や槻岡さんと会った後に再会した時には涙を流していた私に、しつこく理由を聞くことも無くただ傍にいて何気ない私の質問にも答えてくれてこうしてボーリングもして……自然と私に笑顔を出させてくれる。それもわざとらしいやり方じゃなく、本当に自然なやり方で。
こんな事、女性に慣れている人間にしか出来ない事だけれどそれでも私は嬉しかった。だって、確かに彼と再び出会ってからついさっきまで私は自分が涙を流していた事を忘れる事ができたから。
「ありがとう」
自然と零れたお礼の言葉に“何が〜?”と答える彼は再び投球準備にかかっていた。そして彼が投げたボールはもちろん勢い良くピンを倒しストライク。
その時彼がピンを倒したのと同じくらいの音が、自分の中でも何かがはじけた感じと一緒に鳴った気がした。もう人を愛する事は無い……今までそう思っていた私。けれど、この時今まで忘れていた感情が確かに湧き上がっていた。
“恋心”
そんな気持ちを抱きながら、私は笑顔を見せる彼に視線を向けていたんだ。
琉依がこのシリーズの主役みたいですね……。どこ行っても必ず中心にはいるから。それくらい、メンバーにとっては影響力のある人物と言う訳です。