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Lotus2 失くしてしまった感情

 知ってる? オトコって例え彼女や奥さんがいても、すぐに別の女に乗り換えられるモノなんだよ。知ってた? オンナって例え親友の彼氏でも、自分が好きになってしまったら簡単に親友から奪ってしまえるものなんだよ。



 “俺、萩原さんの事好きなんだけど……”


 いつだったっけ? あのオトコがそんな台詞を私に言ってきたのは。もう馬鹿馬鹿しくて覚えてもいないわ。けれど、その時の私はそんな彼の事が大好きだったからつい返事しちゃったのよ。

 “私も好きです”

 ……なんて、時を戻せるならその時の私に言ってやりたいわ。


 “あなたは騙されているんですよ〜”ってね。


 それからしばらくは大好きな彼と甘い時間を過ごす事が出来て、幸せの絶頂にいたのだけれどそんなものは長くは続かなかったのよね。それとも、私があの日あそこに行かなければまだ甘い時間は続いていたのかしら?

 ある日、誕生日だった彼を驚かせたくて内緒で彼のアパートに行った時、玄関に置かれていたのは見知らぬ女物の靴。それでも何も疑わず入っていった私の目に映ったものは、私じゃない女を抱いている彼の姿。しかも、最悪な事に抱かれていた女は私が親友と思っていた人物だった。


 “だって、蓮子ヤらせてくれねぇじゃん!”

 “ごめんね〜。バレないと思ってつい……”


 謝罪どころか開き直っている彼らに怒りなんて感じなかった。そんな感情を抱く事も愚かだと思った私は、何も言わずその場から去って行った。その日から私は人を愛する事を忘れてしまった。愛なんかいらない、セックスをしたい時はそこらにいる相手で遊べばいい。例え相手に彼女や奥さんがいても、男たちは簡単に裏切ってしまうものだから。


 〜♪


 嫌な事を思い出していると、机に置いていた携帯からメールの受信音が聴こえてきた。ディスプレイには“渉”の一文字。今朝の文句を今になって言うつもり? と、渋々メールを確認した。


 “今夜、暇?

  暇だろ? 自宅に帰ってからS町の「NRN」という店に来なさい!

  俺の友達を紹介してやる〜!!”


 ……いらない。別に渉の友達なんか紹介されても仲良くなるつもりはないし……って、誰が暇よ! 返事も送らないまま携帯を机の上に置いたが、それからずっとわざわざ紹介したがる程の渉の“友達”に興味を抱き始めていた。



 「まぁ、見るくらいならいいわよね」

 夕方、そう独り言を呟く私の前には渉が教えてくれた“N・R・N”という文字が書かれた店があった。わざと遅れて来たから、既にその友達とやらは来ているだろうし。とりあえず一度深呼吸をすると、扉をゆっくりと開けた。

 「いらっしゃい」

 恐る恐る中へ入った私を出迎えたのは、マスターらしいお兄さんの優しい一言だった。そんな彼に一度軽く頭を下げてその場で渉の姿を探すと、私に気付いた渉がこちらに向けて手を振ってきた。

 「蓮子〜! こっちこっち!」

 そんな渉の方へ足を進めると、そこには一人の女の子がいて彼女もまた私の方を見ていた。私に笑顔を見せる彼女は同性の私から見ても美人で、惜しげもなく見せるその笑顔から性格も良さそうな感じの子だった。

 「蓮子、彼女が昼間メールで送った友達の槻岡夏海。同じ高校の違う学科の子だけど、意気投合して友達になったんだ!」

 「彼女じゃなくて?」

 とっさに出た私の言葉に一瞬だけ沈黙が出来ると、渉は豪快に笑ってバンバンと肩を叩いてきた。

 「そんな訳ねぇだろ! それにこいつには彼氏がいるぞ!」

 豪快に話す渉の横で私達のやり取りを見てクスクスと笑う彼女。でも、雰囲気的には恋人同士と思ってもおかしくないけど……。

 「初めまして、槻岡夏海です。幼馴染みの蓮子さんの事は渉からいつも聞いています」

 「一体、何の話をしているのやら……。こちらこそ初めまして、萩原蓮子です。よろしくね」

 彼女の一言に一瞬だけ渉の方を睨むと、再び彼女の方へ視線を戻して自己紹介をした。第一印象ではいい子だと思うし、渉が紹介したいと思ってもおかしくはないよね。

 「あっ、それともう一人いるんだよ。でも、そいつちょっと遅れていてさ〜」

 時計を見ながら渉がブツブツ文句を言っていた時だった。


 「わりぃ……」


 ―――――!


 ズカズカと近付いてきた人物の顔を見上げた時、ほんの一時だけ周りの騒音が一切聞こえなくなっていた。遅れてきた人物に文句を言う渉と槻岡さんの声や、それに対してただニコニコ笑ってごまかす彼の返事。他の利用客の声など一切……

 「で、この子がさっき話していた子?」

 隣りに座ってきた彼はじーっと私の顔を眺めていた。赤茶色の髪にモデル並みの長身で薄い茶色の瞳を持つ彼に、私はただ必死に顔が赤くならないよう堪えていた。

 「ん? どうしたのかな?」

 笑顔で見る彼に、私は一瞬で心を奪われていた。人を愛さないと誓っていたのに……それでも私の心は確かに彼に惹かれていたのだった。



 作品を読んで下さり、ありがとうございます!!

 蓮子のオトコ遊びは過去に起こった事をきっかけに始まってしまった物でした。信じていた彼と友人に裏切られた事によって、愛情を忘れて(失くして)しまったという意外な過去を背負ってます。今回、そんな彼女の前に現れた“彼”がこれから彼女にどのような影響を与えるか、楽しみにして頂けると嬉しいです。

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