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Lotus27 本当の友情と一抹の不安



 あれからどれくらいの時間が過ぎたのか、いつの間にか嵐は止んでいて空も少しずつ明るくなっていた。その間、私はずっとベッドの上で琉依に頭を撫でられていた。


 「元はと言えば、俺の発言が悪かったんだよね……」

 「えっ?」


 突然話し出した琉依の言葉に、私は今までの事を思い返していた。私が夏海の事を憎むようになった事、それは琉依と夏海が昔はセフレ関係だったと琉依が偽った事からだった。それでも私が勝手に憎み始めた事なのだから、別に琉依が気にする事では無いのに。

 「俺があんな事言わなければ、蓮子は夏海を憎む事無く今でも仲良くしていたかも知れないね」

 それは違うよ、琉依。私はあなたの事好きだから、あんな事聞かなくてもいずれは琉依と一番親しい夏海に対して憎しみを感じていたかもしれない。琉依の事が好きだからこそ、湧き上がる嫉妬なのだから。

 「それは違うから、だから気にしないで?」

 そう言って琉依の方を見ると、納得してはいないけれどそれをごまかすような笑みを見せていた。

 「ねぇ、琉依」

 「ん?」

 隣りでタバコを吸いながら、琉依は私の呼びかけに応える。

 「私……今度こそ夏海と友達になれるかな?」

 今さら私がこんな事を言えた義理ではないけれど、それでも私は自分の事を大好きと言ってくれた夏海とちゃんと向き合って本当の友達になりたい。これが、私が夏海と琉依に出来る最大の罪滅ぼしなのだから。

 「夏海と、友達になってくれるの?」

 驚いているのか、琉依はタバコを持ったまま私を見ていた。もしかして、二人とは縁を切ると思っていたのかしら? そうされるのは私の方なんだけどな……。

 琉依の問いにコクンと頷くと、琉依は持っていたタバコを灰皿に置いて私の手を握ると

 「ありがとう」

 私の知っている優しい笑みを見せて応えてくれた。これで、いいんだ……。今は、これでいい。私の気持ちは、またちゃんと伝え直そう。結果は分かっているけれど、それでもちゃんと伝えよう。

 それまでは、このままで……


 ―――あっ!


 「蓮子?」

 さっきまで見せていた穏やかな表情から一変して固まる私を、琉依はどうしたのかと眺めてきた。穏やかな気持ちに浸っていて、大切な事を忘れていた。

 “夏海、賢一クンに捨てられちゃう!”

 喉まで出かかっていた言葉を、私はそのまま出すのを躊躇った。意地悪からでは無い、あの日見た光景が浮気の現場だったとしても、もしかしたらその日限りの事かも知れないという思いもあったから。もしそうだとしたら、何も波風を立てるような事は言わなくてもいいと思った。

 「どうした? 何かあったのか?」

 私の表情から何かを感じ取ったのか、鋭い質問を投げかけてくる琉依に私は平然を装って

 「何でも無い! 大丈夫だから」

 作った笑顔で答える私の事、それ以上疑って来ないようにと私は琉依に願った。最悪の事態だけは避けたい、そうじゃないと……みんな傷付く結果になる。




 「って、ああああぁぁぁぁぁっ!!」


 「ん……んん?何……?」

 突然鳴り響いた叫び声で、私は閉じていた目を擦りながら開いた。ボーっとしながら起き上がると、開いていたドアの傍に立っていたのはこちらを見て大きく口を開いたままの……

 「渉!?」

 渉は思わずその場でくらっと倒れそうになっていたが、後から来た伊織によって体を支えられていた。

 「な〜にぃ? 立ちくらみかしら? 蓮子は居たの……って、あらぁっ!!」

 渉を立たせてこちらを見た伊織も、思わず声を荒げていた。一体、何があるっていうのよ……って、これか? 渉と伊織が絶叫した原因、それは一つのベッドで私と琉依が一緒に寝ていたから。しかも、私の姿はガウンが少し肌蹴ていて、琉依に至っては……上半身が裸だった。

 何も知らない渉たちがこんな現場を見たら、まず考える事は一つしかないわよね。


 「れ、蓮子……おま」

 「違う! 違う、違う、違う〜!! 断じてそんな事は致しておりません!」

 渉が言いかけた言葉を最後まで言わせるかと、私の絶叫で阻止した。伊織は呆れたような顔でずっとこちらを見ている。琉依はまだ、夢の中……。

 あれからいつの間にか眠ってしまったのか、私は自分の部屋に戻る事無くこうして琉依の隣りで眠ってしまった訳だけど、まさか渉たちが迎えに来るとは思いもしなかったなぁ。

 「違うの! 本当に、これは色々と理由が……」

 「つれないな〜、蓮子は。昨日、あんなにも愛し合ったのに……」

 立ち尽くしている渉と伊織に説明しようとした私を遮ったのは、いつの間にか起きた琉依のとんでもない発言だった。琉依は何も言わせまいと、私の口を手で塞いでいる。

 「言われなくても、この状況を見たら分かるわよ」

 伊織、違う〜! ナニもしていません! 本当にただ寝ていただけです! “寝た”と言っても関係を持ったと言う意味では無くて、ただの睡眠の方です!

 琉依の手を解いて、ガウンの乱れを整えるとベッドから降りてとりあえず自分の部屋に行こうとしたその時だった。


 「蓮子!」


 伊織の横に現れたのは、眩しいくらいの笑顔を見せる夏海だった。夏海の顔を見た途端、私は昨夜の事が脳裏に浮かんだ。

 “夏海は蓮子の事が大好きなんだ……”

 琉依の言葉を鮮明に思い出している私の前に夏海はやって来ると、そのままきつく抱き締めてきた。

 「な、夏海?」

 「良かった〜、蓮子が無事で!」

 私を抱き締める夏海の手は何だか震えていて、本当に心配してくれていたんだと痛感した。それから私を放すと、今度はどこにも怪我はないかと探し回っている。あんな身勝手な行動をした私を、夏海を始め誰も責めはしなかった。

 「よし! 怪我はなし……って、蓮子?」

 夏海が言いかけた時に、思わず私は夏海を抱き締めていた。今まで自分がやって来た事が全て馬鹿なことだったと、今さらながら気がついた私はただこうする事しか出来なかった。急に抱き締めてきた私に、夏海はただキョトンとして名前を呼んでばかりいる。


 「ゴメンね、ゴメンなさい……」


 繰り返しそう謝る私を、夏海はただ“大丈夫”と背中を軽く叩いてくれた。この謝罪の本当の意味を知る事も無く、ただずっと優しく包んでくれた。

 今度こそ、私はちゃんと夏海の友人になれるかな? 賢一クンとの事など、心から夏海を支えられるような存在になれるかな。自分を許してくれた琉依の為にも、私はちゃんと夏海と向き合って行こう……。





 ――そう思った矢先だったのに、それから数ヶ月して恐れていた事は実現した……


 「私振られたんだよ、賢一に」

 「えっ……?」




 やっとドロドロから抜け出して、第一弾の最初まで設定を持ってくることが出来ました! 次回から遅れましたが尚弥も登場します。

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