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Lotus23 永遠の時の中で……



 早朝六時……全員眠たい目を擦りながら、やって来た船に乗ってダイビングが出来る島へと移動中。


 梓と夏海は仲良く海を眺めていて、伊織は美容に気遣ってか少し眠っていた。渉はコーヒーを飲んで眠気を覚ましていて、私はというと……

 「着いたら起こして〜」

 と琉依の膝枕になって、身動きが取れないでいた。琉依もまた朝に弱いのか、船に乗った途端に眠りだした。そんな琉依の寝顔を見ていると、私は本当に彼の事が好きなんだなと実感してしまうよ。こんなにも、貴方の事が愛しく思うから……こんなにも、貴方の事を独り占めしたくなるから。

 琉依の髪の毛に触れると、何だか抑えきれない感情が湧き上がってくる。こんなにも近くに居るのに、それでも遠くに感じてしまうのは私の事を“女”として見てくれていないと分かっているから?

 琉依……、そろそろ私の事を見て?



 「さ〜て、着いたぞ〜!」

 しばらくして船が着いた場所は、別荘があった島よりも少し小さくそれでも立派なペンションがある島だった。ここにもペンションがあるなら、最初からここに来たらいいのにと思ったけれど、どうやらここは琉依の御両親がゲストを迎える時にのみ使っているものらしい。

 「ホント……謎だらけだわ」

 琉依って。お父様は世界的に有名な人物だと伊織から聞いた事があるけれど、知り合って二年が経っても私は彼のご両親と会った事が無かった。さっきまで眠っていた琉依と伊織は、早速準備していた荷物を持ってビーチまで歩いて行っていた。そして、ビーチの傍にある場所で私達は着替え始める。

 「梓〜、着替えるの手伝おうか?」

 「だっ、大丈夫です!」

 梓に逃げられた琉依は、すぐに伊織によって殴られていた。ホント、相変わらず馬鹿しているんだから。そして、私も着替えるために部屋の中へ入ると、既に夏海が着替えを済ませていてメールを送っているのが見えた。こんな時にでも律儀に彼へメールを送るのね。周りの事が見えなくなっているくらい、本当に彼の事が好きなんだ。


 「ヒャッホー!」

 着替えを済ませて梓とビーチに出てきた私が見たものは、ジェットスキーで水上を走り回る琉依の姿だった。慣れた運転で軽快に走る琉依の表情は、まるで子供のようにはしゃいでいて活き活きしていた。

 「はぁ〜、凄いわね。琉依ったら、ジェットスキーまで乗れちゃうの?」

 「うん。アイツ、高校生の時に免許取ってたぞ」

 そりゃ、こんなプライベートビーチを所有しているくらいだからマリンスポーツもそれなりには出来るでしょうけど……


 「それにしても、琉依には出来ない事って無い訳?」

 ビーチに戻ってきた琉依に開口一番で尋ねる。そんな質問に、琉依は少し考えると

 「俺が出来ない事? それは禁欲だけだ〜!」

 「この、年中発情期ヤロウ〜!」

 偉そうに堂々と言う琉依の発言後すぐに、伊織からの一発がお見舞いされる。出来ない事が禁欲だけって……何考えているんだか。誰も居ないとは言え、それでも大きな声で叫んだ琉依の恥ずかしい一言に梓は顔を真っ赤にさせていた。そんな梓の頭を撫でる伊織は、しっかりと梓を琉依から隔離させていた。

 「んじゃあ、今からダイビングするけど、この中でダイビング初心者っていたっけ?」

 琉依の問いかけに私はう〜んっと考えながら一応手を挙げる。

 「蓮子、初めてだった?」

 「ううん、でもあまりやってないから、少し不安かも」

 その時の渉の顔のみが変化していたのが横目で分かった。そう、少しどころではなく私は結構ダイビングの経験はあった。琉依ほどでは無いけれど、私もそれなりにマリンスポーツは好きだから昔から海にはよく行っていてダイビングは必ずしていた。

 幼馴染みでもある渉は当然、それを知っているわけだからさっきみたいな表情になってしまう訳。もちろんそれが、私の企みという事くらいも渉にはお見通しなのだろうけれど。

 「それじゃあ、蓮子は俺と潜りましょうか。あとはみんな各自で潜ってね」

 そう言うと、琉依は全員に魚にやる餌が入った小袋を手渡していく。そして、それぞれタンクや重しなどを付けていく。私はというと、慣れてはいるけれどわざとらしく一緒にボートに乗っているインストラクターに装備してもらった。

 「ホントに、オマエって奴は。ライセンスしっかり持っているくせに」

 極細声で呟く渉を無視して、私は琉依に続いて潜った。潜ったすぐ先には、琉依がいて私の手を取ってさらに潜り始める。深く潜った海中には、たくさんの魚が自分たちの存在など関係なくすぐ傍を泳いでいく。綺麗な色をした魚たちに見とれていると、琉依が持っていた小袋を差し出してきてそこから餌を取ってあげるようにサインしてきた。

 言われたとおりに、小袋から餌でもあるソーセージを細かく潰しながら目の前を泳いでいる魚群に向けると、こちらに関心が無かった魚たちが次から次へとこちらへやってきて餌を食べていた。魚の口が自分の指までも食べてしまいそうな感覚に、くすぐったくて思わず琉依と笑顔を見せあう。琉依もまた餌をあげていたが、無くなったのか小袋を逆さにして“無い”という事を示している。それなのに、まだ近付いてくる魚たちに琉依は子供のように触れ合っていた。


 周りには誰もいない、私と琉依だけのこの水中。もう少しだけでもいいから、この時が長く続いて欲しいと思った。この笑顔の絶えない琉依を、もう少しだけ独り占めさせて……



 禁欲以外なら何でも出来る琉依でした(汗) ジェットスキーやダイビングは山口も大好きで、沖縄に行くと必ずしています! 餌をあげる時、魚に指ごと食べられそうになる時のあの感触は未だに慣れません。

 次回から少しずつ嵐がやって来そうな内容になりますので、楽しみにして頂けると嬉しいです!

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