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Lotus20 チャンスは突然に……



 二回生になって、私達は将来についてももっと真剣に考えるようになり勉強に真剣に取り組んでいた。私の夢でもある介護士の勉強はそうそう半端な気持ちでは出来る事ではなく、他の生徒たちに追い抜かれないよう必死になって学んでいた。


 「でも、萩原くんはトップなんだからそんなにも必死にならなくても大丈夫だと私は思うけどなぁ……」

 「だめですよ〜! そんな余裕を見せていたら、すぐにでも自分は追い抜かされていつの間にか下に落ちてしまうから」

 いくらトップの成績でも微塵の余裕なんか見せられなかった。今の自分に満足しないで、もう限界という所まで努力を惜しまず頑張らないと……。

 ふと、弘光教授から目を逸らして外を見た時だった。私の目に留まったのは、夏海と賢一クンが手を繋いで歩いている姿だった。幸せそうな笑顔を見せる横で、賢一クンもまた夏海に笑顔を向けている。

 ねぇ、その笑顔はもう夏海一人だけの物じゃないって知ってる? あのバレンタインデーの数日前に見た、賢一クンが他の女性と仲良く歩く姿……あれから何の変化も無く二人の間はまだ繋がったままだけれど、それでも確実に近付いては来ている。


 夏海が捨てられる瞬間が……


 それにしても意外だったのは、賢一クンがとても慎重な所だった。普通ならすぐにでもボロが出て、そこから全てが明らかになって別れてしまうのに、彼の場合はとても気をつけているのかなかなか夏海の前ではいい彼氏を演じている。賢一クンが慎重なのか、それとも夏海がただの鈍感なのかは分からないけれど。

 でも、一つだけ不安な事がある。夏海がもし本当に賢一クンに捨てられた時、琉依はどうなるの? 自分の想い人が傷付いて、けれど一人になったのだから夏海に思いを打ち明けるの? その時はもう完全に私が入る隙も無いくらい、きっと夏海に夢中になってしまうんだね。

 夏海が早く捨てられてしまえばいいけれど、それと同時に自分もまた琉依がさらに遠くなってしまうのも怖かった。憎い夏海と同様に私もまた傷付いてしまう。

 傷付かないようにするには……どうしたらいい?


 「なんて、勝手だなぁ」

 「何が?」


 つい口にした呟きに、弘光教授が反応していた。しまった、あの二人を見てから弘光教授の存在忘れてしまっていた。とりあえず適当に流すと、教授はとりあえず納得したような返事をして先に喫茶店を後にした。

 一人残った私は、再び自分の事について考えていた。自分はこれからどうしたいのか、琉依と出会った高校三年の時から自分は琉依に少しでも近付いているのかとか。琉依への気持ちよりも、今の私は夏海が不幸になるという事ばかり考えていないだろうか。そんな事が脳裏に浮かんでは、ちゃんとした結論など出せずに再び悩みとして膨れあがっていく。

 夏海の事よりも、自分の気持ちを琉依に伝えないと……そうじゃないと、何も進みはしない。想いを伝えた事によって、どちらの方へ行くかは分からないけれどそれでも今の私がするべき事は、好きな人に想いをちゃんと伝える事。

 「いた〜っ! こんな所に居たのね!」

 自分の決意を固めたその時、伊織が飛んできて向かいの席に座った。結構探し回っていたのか、かなり荒い息遣いをしている。

 「て言うか、携帯で連絡したら済む事じゃない」

 「それに出なかったのはオマエだろ!!」

 少し冷たく言った私の言葉に、間髪入れず伊織はキレているのか♂モードで答えた。そんな伊織の前で、私は携帯を確認すると確かに着信六件とメール三件の表示が出ていた。

 「すんません……」

 「まったく、仕方の無い子ね! いいわ、それよりも実はね夏休みにみんなで海に行くわよ!」

 はっ!?

 「何ですって?」

 突然の伊織の発言はまったく意味のわからない物で、返事もその一言しか出なかった。そんな私に伊織は続ける。

 「琉依の提案なんだけど、夏休みの数日間を利用して宇佐美家が所有する島にある別荘で過ごさないかって事になったの!」

 琉依の別荘で? みんなで海に? いろいろ言われたけれど、それでも一応頷くだけ頷いた。何かついさっき決まった事なので、それでメンバーそれぞれの都合とか聞いて回っているらしい。ちなみに、私が最後……

 「梓も渉も夏海も大丈夫だから、あとは蓮子なんだけどどうかしら?」

 どうも何も行くに決まっているじゃない! 滅多に無いチャンスがやってきて、それをみすみす見逃す訳にはいかない。さっき決意した告白にはもってこいのチャンスだわ!

 「もちろん行くわよ!」

 「良かったわ! それじゃあ、全員参加という事で話を進めていくわね〜」

 そう言って立ち上がると、伊織はそのまま走り去って行った。これからまた琉依と相談でもするのか、また忙しそうに行ってしまう。そんな伊織を見送った私は、急な進展に何だか胸がドキドキしていた。

 いつ伝えようかと思っていたのに、琉依の方からそのチャンスを与えてくれた。夏休みなんてすぐそこだから、もう迷っている場合じゃない。そう思うと、再び鼓動が早くなっていた。


 けれど、私はまだ琉依の事をちゃんと分かってはいなかった。

 自分が思っている以上に、宇佐美琉依という人物は何枚も上にいるという事を……




 高校三年生から始まって、やっと大学二年生まで設定を持ってくることが出来ました。ここで物語は急激に進展していきます。ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます!


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