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Lotus19 憎しみ、嫉妬そして優越感


 こんなにも貴方の事が愛しくて仕方が無いのに、どうして素直になれないのだろう。

 “あの事”があったから、私の中ではまだ恋をする事に恐れている自分が居るのかもしれない……




  その日の夕方、夏海の提案で私と梓と三人でチョコを買いに行く事になり私達はたくさんのチョコ専門店が連ねるフロアでそれぞれチョコを選んでいた。夏海は彼氏の賢一クンに、梓は伊織のために。そして、私は……琉依のために。


 「いやぁ、買った買った!」

 チョコとそして一緒に渡すプレゼントの入った袋を提げながら私達は喫茶店へと入って、暖かいコーヒーを飲みながら話し始めた。本当ならあまり荷物にならないはずなのに、こんなにも多いのは彼らにあげるチョコよりも自分たちが食べるチョコの方がたくさんあるからだった。

 「選んでいたら何だか私達も食べたくなっちゃうよね!」

 梓はそう言うと、一番のお気に入りのチョコが入った袋を大切そうに持っていた。


 「それにしても意外だったのは、蓮子に好きな人がいたってことかな〜」

 夏海の言葉に私は思わずピクッと眉をあげて反応してしまった。そんな私の前では梓もまた頷いてこちらを見ている。

 「そりゃ、私にもいるわよ」

 「てか、あれだけ色んなオトコがいたらどれが本命か分からないって」

 鋭い夏海の言葉は私の胸をチクッと刺してくる。何気ない夏海のこの一言は私にとってはとても気分の悪いものにしか思えなかった。自分はちゃんと彼がいるから、それで私よりも優位な立場にいるってわけ? たくさんのオトコと関係をもって中途半端な付き合い方をしている私を馬鹿にしているの? それなら、アンタは……何?



 彼氏がいるのに、幼馴染みのオトコとまだセフレ関係が続いているアンタは……何?



 この事を彼氏はもちろん、隣りで笑顔で座っている梓も知らないんでしょ? 私にはばれたけど、それでも他の人に言えないのは自分を汚したくないから? 自分は綺麗なままでいて、私の事はそうやって見下せるのね。結局はアンタも同じじゃない!!

 「で、誰なの? その相手って」

 興味深々に聞いてくるアンタは、もしその相手が自分のセフレだって知ったらどうするのでしょうね? 中途半端に繋げている琉依を解放してくれるの? それとも、琉依を束縛してしまう? いくら“友人”でも、大事なオトコは取られたくない?

 「夏海達の……知らない人よ」

 抑えきれないくらいわき上がる気持ちを何とか閉じ込めて、私は偽りの言葉を二人に返した。夏海の事は憎いけれど、琉依への気持ちは偽りの無いものだからこんな大切な想いを吐き出すように言いたくは無かった。自分は傷つけても、この気持ちだけは本当に大切にしたかった。夏海には絶対に……悟られてはいけない。

 「まぁ、アンタ達はいいバレンタインデーを過ごしなさいよ!」

 そう言って二人の肩を叩くと、梓は顔を赤らめて屈託の無い笑みを見せる。夏海は親指を立てて、“もちろん!”と答える。そんな夏海に対しても私はちゃんと笑顔を見せていただろうか?


 「あっ、やだ髪が乱れてる!」

 鏡を見ていた夏海はポーチを持って立ち上がると急いで化粧室へと走っていった。

 「私もちょっと手を洗ってくるね」

 夏海に続いて梓も化粧室へと行ったので、一人になった私は二人の姿が見えなくなったのを確認すると


 バンッ!


 勢い良くテーブルを叩き付けた。溜まっていたストレスから起こした事で、いつもなら我慢していたのにやっぱり一人になるとそれもすぐに爆発してしまう。周りの視線など気にする事も無く私はまだ小さく拳をぶつけていた。

 ふと、外の通りを見るとさっきまでは晴れていたのに雪が降っていて、道行く人が空を見上げて笑っていた。そんな光景を見回していた時だった。


 ――――!!


 私の視界に映ったのは、仲良く腕を組んでぴったりくっついて歩いているどこにでもいるような恋人同士だった。けれど、私の視線を釘付けにさせたのはそれがただの恋人同士ではなく、相手の男が……


 「賢一くんだ〜」


 ふと漏らした自分の声は驚きも混じってはいたけれど、それよりも喜びの方が勝った声だった。あの二人を見る限り、友人とか身内とかそんな関係では無い。あれは明らかに恋人同士そのものの雰囲気だった。じゃあ、何? もしかして、夏海は……


 ステラレル……?


 自然と零れる笑みを止める事無く私はあの二人を眺めていた。ほら、やっぱり彼もオトコだから違う女の元へ行ってしまうのよ。一途な愛なんてそうある訳ではない、大抵はどちらかが裏切って捨ててしまうものなんだから。

 その枠に彼もまたそうであったという事に、私は心から喜んでいた。他の女に走るオトコは嫌悪感を抱いていたけれど、彼に対してはまた別の感情を抱いていた。決して正気とは思えない、狂喜という感情。


 私はずっと描いていたものがやっと見られるかもしれないという思いに心を躍らせていた。それはもうすぐに見ることが出来る。


 愛していたオトコに突然裏切られてしまうという、夏海の絶望に満ちた顔を……


 ねぇ、その時は私が慰めてあげるね? アンタよりも優位な立場から、アンタを慰めてあげる。




 こんにちは、山口です。20話まで更新する事が出来ました! このような嫉妬にまみれたドロドロ作品を読んで下さり、本当にありがとうございます!

 今回といい、何だか蓮子編では夏海が完全に悪者になっているような気がしてなりません。あの子はただの鈍感娘なのです。決して悪気がある訳では無いのですが、それが余計にタチが悪いのかも知れないですね……。

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